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魔法科高校の劣等生の魔法でISキャラ+etcをおちょくる話

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第二百六十一話

「臥煙」

「なんだいユートピア」

直江津高校のグラウンド。

暦さんを待っている間に、今までやりたくても出来なかった事の許可を取る。

「報酬代わりに一つ許可が欲しい」

「許可?」

「ああ、次元の外側からから怪異の素を呼び出す許可だ」

「却下。と言って止まる君ではないな。後で詳しく聞かせてもらおう。話はそれからだ」

「はいはい」

暫く待っていると、暦さんとエピソードが校門から入ってきた。

臥煙が手招きして、暦さんの頬を撫でる。

コタンジェントのマーキングを外したのだろう。

準備は出来たようだ。

「それで準備完了?ペアリングはどうしたのでござる?阿良々木殿」

死屍累生死郎が暦さんに問いかける。

死屍累生死郎は全力の暦さんと戦いたいのだろうか。

その真意はわからない。

暦さんも黙したままだ。

「ルールを説明するよ」

臥煙が二人に呼びかける。

「忍野」

臥煙を呼び止め、量子展開したサイコEカーボンのブレードを放り投げる。

「こっちの方が霊力を通す。刃は潰してある。
それに。二人ともこの形の方が馴染むだろう?」

刃渡り2メートル前後、柄のない剥き出しの茎。

ココロワタリ・ウツスナリ。

「残酷だな。君は」

臥煙はココロワタリをグラウンドに突き刺すと、大量の気を流し込んだ。

これはある種の保険だ。

ココロワタリでは人は斬れないが怪異は切れる。

刃を潰してあるので物質的な物は斬れないが、肉を持たざるものは切り裂ける。

刀という形がもたらす情報はそれほどに強い。

更に今回は受け手の怪異の認識もそれを強めるだろう。

まぁ、本物の心渡が来たら全部無駄だが。

だからこれはプランB。

原作どおり行かなかった時の為の保険。

「霊気を通した。お互いに有効なスタンガンみたいなものだと思ってくれ」

臥煙が手を離すと、ある程度輝きは落ち着いたが、それでも白く淡く光っている。

「まずはきみ達にはこの刀を挟んで背中合わせに立ってもらう。そして私のカウントに合わせてそこから十歩前方に向かって歩く」

ビーチフラッグのような、ガンマンの決闘のようなそれ。

「十歩目を最後にバトル開始だ。この刀に駆け寄って相手に一太刀浴びせた方の勝ち」

side out














「織斑流剣術初伝雷閃斬!」

羽川翼と苛虎の間に箒が割り込む。

片手剣単発垂直切り下ろし、バーチカル。

空高くから落ちながら位置エネルギーを加算して放たれた一撃。

苛虎を切る事もなく、空振りしたそれが地面に深々と傷をつける。

交差した路地の中心から、一直線に伸びる斬撃の後。

「翼さん! 下がっていろ!」

黄金の髪と尾を靡かせながら、翼の前に庇うように立つ。

「お前…。ユートピアの…」

庇われた羽川翼は身体中を火傷し、服もボロボロの状態であった。

そして頭部は白く染まり、ピンとたった猫耳。

「なるほど。今はそちらというわけか。おい猫」

「にゃんだ?」

「アレ。倒すのは不味いんだろう?」

「それがご主人様の意志にゃんだ」

「わかった。善処しよう。だがその前にだ」

箒が刀の切先を羽川翼に向けた。

翼が何かを言う前に。

「再生!」

使い魔稲荷を通し、翼のエイドスを参照。

「くっ...」

再生を発動する。

その圧縮された激痛に顔を顰め、多少たじろぐ。

「貴方の傷だけは治した。それで多少は動けよう」

とはいえ、肉体が治っても精神は治せない。

特に今の羽川翼は怪異にその全権を委ねている。

十全には動けない。

箒が羽川翼を背に、宵闇を構える。

「虎。お前が翼さんの何かであることに感謝しろ。
でなければ貴様は今頃真っ二つだ」

「狐風情がほざきおる」

「尻尾が一本しかない虎が大きく出るではないか」

苛虎が姿勢を下げる。

それに合わせ、箒は刀の腹に左手を添えて防御姿勢を取る。

踏み込んだ苛虎が全身のバネを使い箒に突っ込む。

箒諸共後ろの翼を殺す突撃。

「ファランクス!」

それに対して箒が取った行動は障壁の展開。

刀を起点に直径2メートルの多重逐次展開魔法障壁。

それは見事に苛虎の一撃を受け止めた。

「悪いな虎。私はただの時間稼ぎ、ヒーローが来るまでの前座だ。
それまではヒロインを守らせて貰うぞ。
もっとも。その前にお前がへばるかもしれないがな」

起点にしていた刀を傾けると同時、苛虎を受け流す。

そしてがら空きの苛虎の腹に蹴りを見舞う。

脚甲に包まれた足が深々とめり込む。

数メートル吹き飛ばされ、数度地面を転がる。

肉を持つ生物であれば今の一撃で確実に蹴り殺されていたであろう。

気功を纏った一撃はその威力を十二分にこの世ならざる者たる苛虎につたえていた。

「狐風情が…!」

苛虎が起き上がる。

箒と翼を同時に仕留めるという考えを捨て、先ずは箒を始末せんと苛虎が構える。

四肢で地面を踏みしめ、大きく口を開けた。

喉の奥から光が漏れる。

「ええい。面倒な!」

箒が刀を苛虎に向け、その切先からファランクスを展開。

ただしその形は筒を割ったような形だった。

箒の機動力なら避けるだけで十分であり、亜音速で動ける箒を苛虎の焔が捉える事は不可能であっただろう。

しかし現在箒の背後には疲弊した羽川翼がおり、更には住宅密集地である。

避けられず、迂闊に受け流す事もできない。

苛虎の口から焔があふれる。

学習塾跡を”跡形もなく”焼き尽くした焔だ。

煌々と燃え盛る火焔。

拡散せず一直線に伸びるそれが湾曲した障壁に受け止められ、上空へと逃げる。

しかし障壁と焔の界面がおかしい事に箒が気づく。

障壁が爛れ、融けていく。

一枚、二枚と融けていく。

「厄介な。長くは持たんか」

今はまだ逐次展開する速度の方が勝っているが、いつか拮抗しかねない。

「どういう事だ狐」

「お前の主人はよほど世界を呪っていたようだな。
世界の全てを、あらゆる縁と絆を焼き尽くしてしまおうという意志の具現化。
それがあの虎なのさ」

障壁すら’焼き尽くす’嫉妬の焔。

もたらす結果は倶利伽羅と同じ、情報体の焼却。

(さてどうしたものか。私ではコキュートスは使えない。フリーズフレイムで対抗できるだろうか)

それを行うにしろ行わないにしろ、苛虎の火焔を止める必要がある。

そして今一番相応しい魔法は。

「ドライミーティア!」

苛虎の真上に魔法陣が展開する。

空気中の二酸化炭素が凍結、真夏の気温を運動エネルギーに転化し降り注ぐ。

鋭い礫を受けて、苛虎が怯み焔が止まる。

「シンクロキャスト!」

『りょうかい!』

箒の放った命令で、稲荷と箒の魔法演算領域が深く同調する。

「フリーズフレイム!」

箒の魔法が空間を制圧する。

熱量を一定に保ち、ありとあらゆる燃焼を妨害する概念拡張術式。

「さて。仕切り直しと行こうか」















side in


暦さんと死屍累生死郎の決闘はまだ始まっていない。

原作であのタイミングで間に合ったなら苛虎の動きはもっと遅かったか、決闘が早く済んだのだろう。

バタフライエフェクトかなぁ。

当の暦さんは準備運動中。

一応暦さんにフィッティングしたシューズを渡しておいた。

箒の縮地にも耐えられる一品だ。

一方死屍累生死郎は精神統一でもしてるんだろうか。

突っ立ったままだ。

箒と羽川翼は苛虎と戦っているが、まぁ大丈夫だろう。

箒はあれでも神使の末端だ。

それに加え俺の吸血鬼性を内包している。

負ける要素が無い。

「いいのかい?彼女が戦ってるんだろう?」

「ん? 箒なら負けんだろ」

などと話していると、暦さんが大声を上げた。

駿河にまくし立てるように質問している。

ようやく恋人の危機を知ったらしい。

いや、まだ焼け出されたとしか知らないようだ。

「おやおや、あっちはあっちで佳境のようだね。どうする?こよみん?」

「がえ…伊豆湖さん。何か知ってるんですか?そもそも羽川を…いやそれよりどうするって何を」

「私はなんでも知っている。だから虎だよ。君を学習塾跡で、皮肉にも救った虎だけども、煉獄の焔をつかさどるその大虎と、彼女は向き合う覚悟をしたらしい」

羽川翼の覚悟。

自分の昏い部分と向き合う覚悟だ。

それが出来る人がどれだけいるだろうか?

そして臥煙が暦さんに問うた。

どうする?と。

「君が決闘してくれない方が私としては助かるんだ。君に死なれたら困るからね。ユートピアがいる今君が死ぬ可能性は限りなく低いけど0じゃない。私は初代怪異殺しと交渉してるから私からルールを破るわけにはいかない。だから君がルールを破ってくれると助かるんだ」

「安心しなよ。翼さんの所には箒向かわせたからさ。
箒が時間稼いでるうちに、さっさと恋敵をぶっ殺しな。
いくら箒でも時間稼ぎには限界があるだろう。時間はないぞ我が甥よ」

そう伝えると、臥煙は俺に余計なことを言うなといった視線を向けた。1

「選ぶんだね、こよみん」

それを齢18の子供に聞くのは残酷だろう。

「無為な決闘のためにここに残るか、恋人を助けるために走り出すか。
制限時間は五分、も要らないか。忍ちゃんなんてここに来てさえもいないんだし、君にとって翼ちゃんは恋人で」

そこで暦さんが俺に視線を向けた。

「どうせ君はここから動かないし、何も教えてはくれないんだろう?」

「んー? よくわかってるじゃん」

すると暦さんは俺にすっごい恨みの視線を向けてきた。

おお、怖い怖い。

「神原。頼めるか」

「ん。阿良々木先輩の家に行けばいいんだな?」

暦さんは駿河に携帯電話を渡した。

「ああ、それを好きに使っていい。火憐に言って家に入れてもらってくれ。もう羽川は居ないと思うが、何か手掛かりがあるかもしれない。直ぐに追いつくから、先に調べておいてほしい」

委細承知、と短い返事の後駿河が走り出した。

おお、速い速い。

「正気かい? 考えられないよ。君は本当に目の前の事しか見えないのかい?」

臥煙が心から呆れたように、失望したように暦さんをなじる。

その中には暦さんがリタイアした方が好都合だからという気持ちもあっただろうが、本当に大人として暦さんの行動を責める気持ちも見受けられた。

臥煙伊豆湖という女はまぁそこそこ優しいやつではあるのだろう。

それがわかっているから。暦さんは臥煙の言葉を受け止めている。

「そうかもしれない」

だがそれでも彼は誓ったのだ。

例え自分の立場を、友人を、家族を、恋人を失ったとしても

「だけど僕は羽川を信じている。心の底から信じている」

あの日あの時助けた、たった一人の吸血鬼を。

「阿良々木暦という男が、恋人や友人よりも、時に幼女を優先する男だと、わかってくれると信じている」

守り、殺し、共に生きると。 
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