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イベリス

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第九話 部活も入ってその十五

「どうしてもね」
「僕は未完の作品が一番嫌だね」
 部長も自分の好みを話した。
「やっぱり作品は終わらないとね」
「駄目ですか」
「未完のまま放置か」 
 若しくはとだ、部長は咲にさらに話した。
「作者さんに何かあって」
「それで、ですね」
「未完で終わるのはね」  
 それはというのだ。
「凄く嫌だよ」
「そうした作品もありますね、異国迷路のクロワーゼは残念ですね」
 咲は未完と聞いてこの作品を思い出した。
「絵も奇麗で異色の作品で」
「僕その作品はよく知らないけれど面白いんだ」
「はい、ですが」
 面白かったがとだ、咲は残念そうに話した。
「作者さんがお亡くなりになって」
「それでだったんだ」
「アニメ化もされたのに」
「未完なんだね」
「終わって欲しかったです」
 心からこの言葉を出した。
「本当に」
「そうだね。作品は終わってこそね」
「いいですね」
「作者さんも作品を生み出したら」
 そうしたならというのだ。
「絶対にね」
「終わらせないといけないですね」
「そうだよ」
 部長は強い声で語った。
「そうしないと創作者としてね」
「駄目ですよね」
「書いて中断また書いて中断とか」
「それネット小説でよくありますね」
「あるよね」
「困りますよね」
「作品ははじめることと終わらせることが一番難しい」
 部長はここでこの言葉を出した。
「そう言われるけれどね」
「それは事実ですね」
「うん、まずはじめて」
「そして終わらせる」
「言葉で言うと一言だよ」
 それに過ぎないというのだ。
「所詮というかね」
「それで終わりですね」
「けれど実際にやるとなると」
「難しいですね」
「そうだよ、けれどはじめたからにはね」
「終わらせないと駄目ですね」
「そうだよ。さもないと作品も可哀想だから」
 部長は少し悲しみを込めた声で述べた、そこには作品に対する愛情とそして終わらない悲しみがあった。
「だからね」
「それで、ですね」
「はじめたら終わらせる」
「どういった創作でも」
「そうしないと駄目だよ」
 絶対に、そうした言葉だった。
「本当にね」
「それが大事ですね」
「作品はね。漫画もだよ」
「終わってこそですね」
「いいんだよ。まあ打ち切りもあるよ」
 部長はこの言葉は苦笑いで話した。
「どうしてもね」
「商業だとそれも常ですね」
「けれど打ち切りでもね」
 その作品を愛している読者には残念だがというのだ。
「それでもだよ」
「終わるといいですね」
「終わらないよりはずっといいよ」
 例えそれが打ち切りでもというのだ。
「まだね」
「そうですね、打ち切りよりも未完はよくないですね」
「本当にそう思うよ。じゃあこれからも」
 部長は咲にまた笑顔になって話した。
「この部でね」
「漫画を読んで」
「そしてね」
「そのうえで、ですね」
「こうして楽しくお喋りもね」
「していけばいいですか」
「そうしていこう」
 部長は咲に笑顔のまま話した、そしてだった。
 咲は部長のその笑顔を見て明日もまた部活に行こうと思った、まだ仮入部だがいい部活だとも思った。


第九話   完


                2021・4・1 
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