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白き竜の少年

作者:刃牙
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合格‼︎

「ハルマ⁉︎ いつから……」

ハルマが現れた事に驚く2人。特にカナは悔し気な表情を浮かべている。レツに集中するあまり白眼による探索をしておらず、ハルマの接近に気付かなかったようだ。自身の未熟さに腹が立つが、ここで2人を倒せば試験の合格は決まったも同然だと思い直し、戦いに意識を集中させる。

「お前達のおかげで楽に済みそうだ」

「(何だ……⁉︎ この禍々しいチャクラは‼︎)」

ハルマが戦闘態勢に入り、チャクラを練り上げるのをカナの白眼はしっかりと捉えていた。それから分かるだけでも自身の3倍以上のチャクラ。それだけでなく、その奥底からは禍々しく強大なチャクラが見え、まるで生き物のように意思を感じる。

“悲しみ” “恨み” “怒り” “憎しみ”

負の感情が強大な力を持ったかのような禍々しさと攻撃性がそれからは見て取れ、恐怖と嫌悪感がカナの胸中を占める。

「もう勝ったみてぇな言い方しやがって……!」

「今の状態ではオレには勝てない。決してな」

カナはその言葉を否定する事など出来なかった。目の前にいるのは落ちこぼれなどではない。人間の力が及ばない化け物のような力を持っている。しかし、カナもここで終わるつもりはない。

「オレには自分の名を世界中に轟かすって夢があるんだ。ここで終わってたまるか……‼︎」

「お前に負ける気はない……‼︎」

「そう来ると思ったよ」









ハルマとレツ。2人の拳が互いの頬にめり込む。撃ち合いを避ける為、2人は後ろに跳躍し、体勢を整える。まだ様子見の段階とはいえ、レツは意外にもまだ体力は残っているようだ。ここはまず、相手の力を削ぎ落とす必要がある。

「お前とこうやって戦うのは初めてだったよな!ハルマ‼︎」

「忍者学校で何回も組手の相手をさせられていただろ」

「マジでやってるお前とって事だよっ‼︎」

レツが寅の印を結び、口から炎を吐く。それを上に跳躍して躱すハルマだったが、レツはその動きを読んでいたのだろう。既にハルマの真上に移動していた。

「オラァ‼︎」

レツが火を纏った拳を振り下ろす。腕をクロスし、防いだハルマだが、地面に叩きつけられ砂埃が舞う。しかし、砂埃が止むと無傷のハルマがそこにはいた。

「あの日、お前に出くわしてなかったらこうはならなかったのによ」

2人が関わるようになったのは3年前。自身の命を狙ってきた刺客を倒したハルマはその場面をレツに見られてしまった事がきっかけだ。

「だろうな。あの時までのお前はオレとは違って……周りに人がいた」

しかし、それよりも前からハルマはレツの事をよく見ていた。自身と違い、友達に囲まれていた彼を羨ましく思った事もある。それを奪ったのもまた自分だと、あの日のミスがレツから友を奪ってしまったと考えていた。

「あの強さがあれば夢を叶えられると思ったんだ……羨ましかった!ずっとオレは……お前に勝ちたかった‼︎」

「……オレも……お前に負けるつもりはない」

それでも負けるつもりは毛頭なかった。レツには負けたくないのだ。ハルマはパンチを繰り出してきたレツの後ろをとり、そのまま蹴りを繰り出す。

「もう終わりか?レツ」

「終わるのはお前だ」

ハルマの周囲の木々や地面に起爆札の巻かれた無数のクナイが刺さる。投げられてきた方角を見ると木の上に立つカナの姿が確認できた。

「爆」

起爆札が爆発し、周囲が煙に包まれる。カナが白眼で煙の中にいるハルマを確認しようとすると、煙を突き破るようにして獣を模した雷がカナに迫る。

「雷遁・雷獣追牙の術‼︎」

「八卦空掌‼︎」

右の掌底から放たれた衝撃波が獣を霧散させる。カナが安心したようにホッと息を吐く。だが、その瞬間を狙ったかのように間髪入れずに巨大な火球が放たれた。

「火遁・豪火球の術‼︎」

「力で攻める気か……‼︎」

木を焼き尽くし、カナに迫る火球は直撃すると暴発。木から木へと火が燃え広がる。しかし、カナはダメージを受けながらも耐え切り、戦う体勢を整えていた。

「へぇ……あれを耐えるとは……よく鍛えてるな」

「当たり前だ!私は必ず忍にならなきゃいけないんだ!」

「なるのはオレだっての!」

ハルマの前にはレツとカナの2人が立っている。三つ巴の戦いではなく2対1の状況だが、ハルマからは余裕を感じられる。それは2人に勝てる自信があるからなのだろう。実際にまだまだ余力を残すハルマに対して、レツとカナの体力は限界に近付いていた。

「そろそろ終わりにしよう」

「へっ‼︎ 上等だ‼︎」

「火遁変化・火焔鳥!」

レツは寅の印を結び口から火を吐く。それは鳥を象り、ハルマに迫るが、容易く躱される。

「オレの術は追尾型だぁあ‼︎‼︎」

鳥は方向転換し、再びハルマに迫る。それに対し、ハルマは印を結び、左手にチャクラを集中させる。雷が迸り、雷の身体を持つ獣たちが左手から7体生み出された。

「雷遁・雷獣連牙の術」

3体が火焔鳥を食らい、残りの4体はレツとカナに迫る。対応しようにも雷獣は既に眼前に迫っていた。

「遅い」

雷獣が2人と衝突し、閃光が包み込む。2人はうつ伏せに倒れるが、立ち上がってハルマを睨みつける。

「まだ‥‥だ。まだ終わりじゃねー‼︎」

「そうだ。まだ終わりじゃない」

ボロボロの身体。足はふらふらで今にも倒れそうだ。しかし、それでも2人の目力は強く、諦めていない。彼らが立ち上がる理由は夢の為だという事は聞かずとも分かる。だからこそ次の一撃で終わらせる。それがハルマなりの2人への敬意を表する方法だからだ。

「……呆れた奴らだ……」

「んだと……?」

「これで終わりだ」

ハルマの言葉に2人は警戒を高める。だが、そんなものは意味がないとハルマは笑う。両手で十字印を結び、実体のある分身_影分身の術を使って一体の分身を作り出す。

互いに異なる印を結び、術を発動させる。口から放たれたのは龍を模る雷と炎。

「雷遁・雷龍弾の術!」

「火遁・火龍弾の術!」

2体の龍がレツとカナを喰らった。










レツが目を覚ました時。そこは森の中ではなく、白い壁に囲まれた部屋の中だった。ベッドから身を起こせば、壁にもたれかかって書物を読んでいるカナとハルマの姿に気付く。

「起きたか……もうすぐ先生も来るだろう」

カナの一言にレツは顔を俯かせ、シーツを握りしめる。

「……そっか……負けたのか‥‥オレ……」

夢の為に必死にやった。だが、届かなかった。その事実が深く胸を抉る。下忍になりたかった。その思いが涙となって頬を濡らす。

「また出直しだな。私もお前も……」

カナの言葉にレツは目元を乱暴に拭う。また次のチャンスを待って、頑張るしかない。思いを新たにして気持ちを切り替えたレツはハルマの前に立つ。

「すぐに追いついてやるから覚悟してろよ‼︎」

レツからの宣戦布告をハルマは鼻で笑う。何がおかしいのかと憤るレツにハルマは意味深な言葉を告げる。

「いいや。だが……まだ終わりって決まったわけじゃないだろ」

どういう意味なのか分からず、聞き返そうとするレツだが、そこへリンネが部屋の中に入って来る。

「みんなお疲れ様!少しは仲良くなれたかな?」

「さてと。これで今日の演習は終了!早速明日から任務があるから遅れないようにね!」

そう言うとリンネは3人に明日の集合場所と時間、持ち物が書かれたプリントを渡し、踵を返す。

これに驚いたのはレツとカナだった。不合格になり、忍者学校に逆戻りだと思っていた2人は状況についていけていない。

「ちょ、待ってくれよ!巻物を持ってきた奴が合格なんじゃねーの⁉︎」

「うん?私はあくまでも君たちの実力が下忍としてやっていけるのかを測りたかっただけだからね。巻物争奪戦にしたのは君たちがどう動くのかを知りたかったからだし」

レツの問いに彼女はあっけらかんと答える。クスクスと笑い、「合格おめでとう」と彼らに告げる。

「それでは私たちは明日から下忍として任務に従事するという事ですか」

「うん!明日から頑張ろうね!」

「いよっしゃぁああああああ‼︎‼︎ 」

レツの叫びが部屋にこだまする。耳を塞ぎ、文句を言う2人の声もレツの耳には届かない。

「口を閉じろ!耳に響くだろうが!」

「馬鹿丸出しだな」

ギャーギャーと騒ぎ、小競り合いを始める3人をリンネは微笑を浮かべ、優しい目で見つめていた。

「改めて……明日からよろしくね」 
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