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イベリス

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第八話 速水の訪問その五

「今度から」
「わかりました」
「漫研は部室に入る時部屋に鍵がかかってないならね」
 それならというのだ。
「三回ノックしてね」
「それから入るんですね」
「ノックしたらどうぞって言うから」
 だからだというのだ。
「その時にね」
「入るんですね」
「うん、今度からそうしてね」
「はい、それじゃあ」
「それでどうしたのかな」 
 男子生徒は咲にあらためて問うてきた。
「漫研に何か用かな」
「入部希望で」  
 それで来たとだ、咲は答えた。
「来ました」
「そうなんだ」
「はい、願書も持ってきました」
「わかったよ、じゃあ願書出してくれるかな」
「書いてきました」
 こう答えてだった、咲はその願書を男子生徒に出した。そのうえで彼に対して問うた。その目をじっと見ていた。
「これでいいですか?」
「うん、確かに受け取ったよ」
「じゃあ私は今から漫研の部員ですか」
「今は仮入部だけれどね」 
 それでもとだ、男子生徒は咲に笑顔で答えた。
「そうだよ」
「そうですか」
「後は先生も来てくれてね」
 そしてというのだ。
「先生が正式に認めてくれるから」
「入部をですね」
「そうしてくれるよ、うちの先生は優しい人だから」
「暴力は振るわれないですか」
「暴力?とんでもないよ」
 男子生徒は暴力については即座に否定して答えた。
「そんなのはね」
「ないですか」
「ないよ」
 絶対にという返事だった。
「うちの部活ではね」
「それは何よりです」
「まあね、今も部活で顧問の先生が暴力振るうとかね」
「ありますね」
「残念だけれどね」 
 男子生徒は咲に曇った顔で答えた。
「あるよ」
「そうですよね」
「けれどうちの学校ではね」
「暴力はないですか」
「ないよ、先生が暴力振るったらクビだし」
「生徒もですね」
「ばれたら無期停は覚悟しないとね」
 そこまでの処罰はというのだ。
「いけないから」
「退学もありますね」
「普通になるだろうね」
「やっぱりそうですか」
「僕の知る限りこの学園で退学した人っていないけれど」
「退学者少ないんですね」
「かなり少ないのは事実だよ」 
 このことは男子生徒も否定しなかった。
「やっぱりね」
「そうですか」
「それに穏やかな校風だしね」
「それはそうですね」 
 咲も実感していることだった、この学園の校風については。
「この学園はそうですね」
「偏差値はそれなりでも色々活動もしていてね」
「それで穏やかな校風で」
「暴力、いじめとか悪質な犯罪もね」
「ないですか」
「だからね」
 それでというのだ。 
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