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英雄伝説~灰の騎士の成り上がり~

作者:sorano
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第130話

~海都地下水路~



「随分懐かしい声が私達を呼んでいると思ったら、貴女でしたか~。」

「うふふ、お久しぶりですわエウシュリー様。」

「もう、私の名前は”エウシュリーちゃん”だって何度言えばわかるんですか~?」

桃色の髪の天使族のメイド―――エウシュリーちゃんはシャロンの言葉を聞くと困った表情をし

「ブラックエウシュリー様とアナスタシア様もお元気そうで何よりですわ♪」

「ズルズル…………私の名前も……モグモグ……いい加減覚えて。私の名前は”ブラックエウシュリーちゃん”。」

「えへへ~……お久しぶりです、シャロンさん~。」

黒い翼の天使―――ブラックエウシュリーちゃんは片手に持つ謎の入れ物に入っている麺らしきものを食べながら指摘し、バケツを持った蝙蝠のような翼を背に持つメイド―――アナスタシアは無邪気な微笑みを浮かべ

「エウクレイア様―――いえ、エウクレイアさんも壮健そうで何よりですわ。」

「…………………………」

金色の翼を持つ天使のメイド――――エウクレイアさんは無言でありながら、口元をわずかに笑みに変えてシャロンを見つめた。



「ハァァァァァ~~~~ッ!?なんなんだそのイミフな天使連中は……!?」

「て、天使のメイド……?」

「油断しちゃダメよ!そいつら全員、見かけとは裏腹にとんでもない霊力(マナ)を秘めているわ!――――――それこそ、中にはユリーシャ達よりも”格上”の天使もいるわよ!?」

「何なのだ、奴等は…………」

「フッ、4人ともそれぞれジャンルは違えど、みんな可愛いじゃないか!こんなに可愛いかつリアル天使なメイドさん達の事を今まで私達にも黙っていたなんて、さすがはシャロンさんだね♪」

「フフ……シャロン殿の凄さには慣れたつもりだったが、さすがにこれは度肝を抜かれたな……」

「フフッ、相変わらずだな。」

一方エウシュリーちゃん達の登場にアッシュは驚きの声を上げ、エマは戸惑い、セリーヌは警告し、ユーシスは呆れた表情をし、アンゼリカは興味ありげな表情をし、ラウラとガイウスは苦笑し

「ふふ、ご紹介いたしますわ、お嬢様。こちらの方々が私の”同志”にして”友人”達ですわ。」

「な、なななななな、なんなのそのメイド達は~~~!?」」

シャロンに微笑まれたアリサは混乱した様子で声を上げた。



「って、こら――――ッ!私達の事を忘れて、呑気に再会を喜んでいるんじゃありませんの――――ッ!!」

「まさかシャロンさんが4人もの異種族――――――天使族と契約していたなんて、完全に想定外でしたね……」

するとその時謎のメイド達の登場に呆けていたデュバリィが我に返ってアリサ達を睨んで声を上げ、エリゼは警戒した様子でシャロンが呼んだ謎のメイド達を見つめた。

「うふふ、ご心配なさらずとも忘れてはおりませんわ。―――それでは皆様、皆様はあちらの天使のお相手をして頂いてもよろしいでしょうか?」

「ふふ、お任せ下さい♪――――――あら?貴方は確かバルディエルさん?セリカ様に仕えている貴方がどうして他の方に……」

シャロンにバルディエルの相手を頼まれたエウシュリーちゃんはバルディエルを見つめて何かに気づくと首を傾げたが

「ズルズル……それは”別次元の世界の話”だから、その世界ではないこの世界の今目の前にいるバルディエルは違うわよ、エウシュリーちゃん。モグモグ……」

「あ、そうでした~。――――――それでは久しぶりに”お掃除”をさせて頂きますね♪」

ブラックエウシュリーちゃんにある事を指摘されるとすぐに納得した表情を浮かべて自身の得物である箒を構え、エウシュリーちゃんに続くようにブラックエウシュリーちゃんは薬缶、アナスタシアはバケツ、エウクレイアさんは木刀とそれぞれの得物を構えた。



「えっと……もしかして武器って、それ?」

「箒に薬缶、バケツ、それに木刀って………どう考えても”実戦”では武器にならないものじゃない………」

「あの中で唯一ギリギリ武器になりそうなのは木刀くらいですよねぇ?」

「おいコラ……ふざけるんなら、時と場所を考えろや。」

エウシュリーちゃん達がそれぞれ構えたおよそ武器とは思えない武器を目にしたエリオットは困惑の表情で疑問を口にし、シェラザードは疲れた表情で呟き、アネラスは苦笑し、アガットは厳しい表情でエウシュリーちゃん達に指摘した。

「フフ、ふざけてなんかいませんよ。これが私達メイド天使の”お掃除道具”なのですから♪――――――えいっ!」

「甘い!」

アガットの言葉に答えたエウシュリーちゃんは箒でバルディエルに襲い掛かり、バルディエルはエウシュリーちゃんの攻撃に対して自身の得物である槍で迎撃した。



「オオオオオォォォォォ……ッ!」

「ハッ!それっ!まだまだですよっ!!」

次々と繰り出すバルディエルの槍の連撃に対し、エウシュリーちゃんは箒を巧みに扱ってバルディエルが繰り出す連撃をさばき

「えーい!!」

バルディエルの攻撃をさばいた後一旦後ろに下がって異次元から取り出した鍋を投擲するメイド戦技――――――ファーネ・リーゲンをバルディエルに放ち

「フン!!」

バルディエルは投擲された鍋を槍を振るって真っ二つに割って無効化した。

「行きますよ~!レイ=ルーン~!!」

「雷よ―――――旋風爆雷閃!!」

その時バケツを光らせて魔術を発動したアナスタシアが放った純粋属性を凝縮したレーザー攻撃に対してバルディエルは高威力の稲妻を放って相殺したが

「降り注げ、カップラーメンの相棒――――――ブイヨワール!!」

「ぬ!?――――――グウッ!?」

薬缶を光らせて魔術を発動したブラックエウシュリーちゃんの魔術によってバルディエルの頭上から突如無数の熱湯が入った薬缶が落下し、それらを受けたバルディエルはダメージを受けると共に怯んだ。

「ふふ、見ないでくださいね?――――――それっ!!」

「うおおおおおお……っ!?」

バルディエルが怯むとエウシュリーちゃんはスカートを翻した。すると何とエウシュリーちゃんのガーターベルトからバルディエル目掛けて激しい魔導砲撃が行われ、それをまともに受けたバルディエルは思わず声を上げた。

「…………!」

「グハッ!?」

そこにエウクレイアさんが木刀で竜を打ち倒した者のみが使用できる凄まじい威力の斬撃――――――竜殺しの剛剣をバルディエルに叩き込んでバルディエルを吹っ飛ばした!



「………………………………」

「ほえ~!シャロンが呼んだ天使のメイド達、滅茶苦茶強いじゃん!」

「ああ……箒を武器とする天使の箒さばきはまさしく達人(マスター)クラスと言っても過言ではない動きの上、木刀を武器とする天使は父や子爵閣下とも互角……いや、それ以上の使い手だな。」

「というかどうしてあの天使の方達はあんなに強いのに”メイド”なんでしょうね……?」

「ハッハッハッ、それは違うよ、セドリック。メイドの人達が強いのはむしろ”当然”なのさ♪その証拠にセリカさんの”メイド”のエクリアさん達もそうだが、エリゼ君やシャロンさんもみんな”メイド”でありながら、とてつもない使い手なのだからね♪」

「つーか、色々とおかしいだろ!?木刀で強烈な一撃を叩き込む事はまだわかるが、スカート翻したら無数の砲撃が放たれるとか、突然薬缶が頭上から降り注ぐとか冗談抜きであのメイドの恰好をした天使達は何なんだよ……」

「しかも今、さり気なく異空間収納魔術も使っていたわよ。まあ、何で鍋を取り出して、しかもそれを敵に向かって投げるとか完全に理解不能だけど……」

バルディエルを圧している様子のエウシュリーちゃん達を見たサラは驚きのあまり口をパクパクさせ、ミリアムは目を丸くして声を上げ、ミュラーは感心した様子で呟き、困惑の表情で呟いたセドリックの疑問にオリヴァルト皇子は呑気に笑いながら答え、クロウは疲れた表情で声を上げ、セリーヌはジト目でエウシュリーちゃんを見つめた。

「クク……雑兵共を蹂躙するだけのつまらん戦いになると聞かされていたが、まさか我が雷光の力を存分に振るえる相手が出てくるとはな……!」

一方バルディエルは不敵な笑みを浮かべた後エウシュリーちゃん達との本格的な戦闘を始めた。



「まさかシャロンさんが呼んだ4人の天使達が”魔神”とも互角に渡り合える程の使い手だったなんて……」

「ぐぬぬぬぬぬ……っ!――――――こうなったら、私達だけでできるだけ多くの人数を抑えますわよ!”紅き翼”にとっては”鉄機隊”の”筆頭”たる私と”剣聖”である貴女を抑える為には相当な戦力を充てる必要があるのですからね……!」

バルディエルとエウシュリーちゃん達の戦いの様子を目にしたエリゼが信じられない表情を浮かべている中悔しそうな表情で唸り声を上げたデュバリィがエリゼに声をかけたその時

「いや――――――貴女達の相手は僕達だ……!」

アリサ達の背後から少年の声が聞こえた後パトリック率いるトールズ義勇隊がその場に駆け付けた!

「パトリック君……!それに義勇隊のみんなも……!」

「ナイスタイミングよ!」

パトリック達の登場にトワとサラは明るい表情を浮かべた。



「予定よりも少々遅れてしまい、申し訳ございません。――――――状況はまだ把握していませんが……どうやらそちらのお二人が会長達の行く手を阻んでいるようですから、私達の内の何人かが残って足止めをしますので、会長達は先に行ってください……!」

「うん!ここはお願いするね……!」

アリサと同じ部活仲間の貴族生徒――――――フェリスの言葉にトワが力強く頷いたその時

「こ、今度は一体どんな連中が”紅き(あなたたち)”の援軍に現れると思ったら……”実戦”も知らない俄仕込みの武術を修めていた程度で”騎士団”を名乗っていたトールズの学生達ですか。――――――ルシエルからトールズの学生や教官達による援軍の可能性も教えられていたとはいえ、まさか本当に”戦力”として活用するとは……余りにも浅はかな生徒達ですわね。」

「やれやれ、パトリック君達の援軍すらも想定されていたとは、さすが”本職”だねぇ。」

「それよりもあたし達の教え子達のどこが”浅はか”なのよ!?」

「それに先輩達もそうだが、パトリック達の実力を”俄仕込み”と言った侮辱、取り消してもらおう……!」

困惑の表情でパトリック達を見回したデュバリィは呆れた表情を浮かべ、デュバリィの話を聞いたアンゼリカが苦笑している中、サラとラウラは厳しい表情でデュバリィを睨んだ。



「フン、私は事実を言ったまでですわ。Ⅶ(あなたたち)と違って”実戦”すらも経験していない学生達が数を揃えた所で、所詮は学術機関が教える俄仕込みの武術の使い手が集まっただけの事。そのようなⅦ(あなたたち)より更に未熟な連中が”現代の鉄騎隊”の”筆頭”たる私と”剣聖”へと至ったエリゼの足止めをする等、余りにも浅はかな考えですわ。」

「あら……―――――だったら、その”実戦も知らない俄仕込みの腕前”の私達の未熟さを、ぜひ”本物の騎士”――――――それも”槍の聖女”自身に”現代の鉄騎隊”の”筆頭”を任されている貴女に教えてもらおうじゃない。――――――トールズのフェンシング部の実力、”現代の鉄騎隊”に見せつけてあげるわよ、ロギンス君、アラン君……!」

デュバリィの指摘に対してトールズのフェンシング部の部長にして”2年最強”と恐れられている女子貴族生徒――――――フリーデルは自分の部活仲間にして副部長の2年男子平民生徒――――――ロギンスと後輩の1年男子平民生徒――――――アランに声をかけ

「おおっ!相手にとって不足はねぇぜっ!!」

「はいっ!……って、フェンシング部の実力を見せるんだったら、俺達と同じフェンシング部のパトリックは一緒じゃなくていいんですか?」

フリーデルの呼びかけにロギンスと共に力強く答えたアランはある事に気づくとフリーデルに訊ねた。



「ふふっ、パトリック君はちょうどリベンジしたい相手が目の前にいるからいいのよ。――――――行くわよっ!!」

アランの疑問に対してエリゼに視線を向けながら答えたフリーデルは号令をかけてロギンスとアランと共にデュバリィに向かって先制攻撃を仕掛けた。

「……ッ!?くっ……今の剣捌き……アルゼイドの娘以上……!?”実戦”を経験したこともなく、エリス達のような”本物の戦場に出る覚悟”すらもない学生の中にこんな伏兵がいるとは……!」

フリーデルの先制攻撃を回避したデュバリィは信じられない表情でフリーデルを見つめた。

「確かに俺達にはあんた達のように”生死をかけた本物の実戦”の経験はないが、フェンシング部に所属している以上、俺達も”武の最強”を目指しているし、”覚悟”だってとっくにできてらぁっ!!」

「トールズ魂を舐めるなっ!!」

そこにロギンスとアランが左右からデュバリィに襲いかかったが

「Ⅶ組と違って、”端役”にしかなれない学生風情が調子に乗るんじゃありませんわっ!!」

「うおっ!?」

「うわっ!?」

デュバリィは反撃にクラフト―――――秘技・鳳仙剣で二人にダメージを与えると共に吹き飛ばした後フリーデル達との本格的な戦闘を始めた。



「気遣いありがとうございます、フリーデル部長。僕達はエリゼさんの相手をするぞ、セレスタン!援護を頼む、フェリス、サリファさん!」

「承知しました、坊ちゃま!」

「ええ……!アリサのライバルとして、絶対に負けられませんわ……!」

「相手は”剣聖”なのですから、幾らアリサ様でも厳しすぎる相手だと思われるのですが……―――――仕方ありませんね。」

一方パトリックはフリーデルに対する感謝の言葉を口にした後セレスタンとフェリス、サリファと共にエリゼに向かった。

「4対1とはいえ、以前の模擬戦から更に精進して”剣聖”に到った私相手に”足止め”ができると思ってらっしゃるご様子ですね……――――――随分と私を侮って頂いているようですが……去年の模擬戦の件はもうお忘れなのですか?」

「まさか。シュバルツァー達との模擬戦も含めた僕の帝国貴族として……そして帝国男児としてのプライドまで木端微塵にされたあの時の事は今でも忘れられないよ……あの時の帝国貴族どころか、人としてもあまりにも愚かだった僕は今思い出しても恥ずかしいよ。」

「坊ちゃま……」

エリゼの言葉に対して疲れた表情で答えるパトリックの様子をセレスタンは微笑ましそうに見守っていた。

「そんな愚かな僕が”変わった”事を証明する為……そして今度こそ”真の帝国貴族の気概”を示す為にも……エリゼさん、絶対に貴女を足止めしてトワ会長達の道を切り開かせてもらう……!」

「立派に成長なされた坊ちゃまの望みを叶える為、このセレスタン、全身全霊をもって挑ませて頂きましょう……!」

そしてそれぞれ戦意を高めたパトリックとセレスタンは連携してエリゼに接近戦を仕掛け、フェリスとサリファはそれぞれの得物である導力弓と双銃で後方からパトリック達の援護を始めた。

「……パトリック達の方はお守りの二人がついているから、何とかなりそうだが……フリーデル達の方はちとキツそうだな。」

「フフ、でしたら私達はフリーデルさん達の援護をしましょうか、マカロフ教官。」

フリーデル達とパトリック達、それぞれの戦況を見てある判断をしたマカロフ教官は導力杖を、メアリー教官は導力ライフルをそれぞれ構えてフリーデル達の方に向かって後方からの援護を開始した。



「へっ、どいつもこいつも中々やるじゃねぇか。」

「というか執事さんやメイドさんが”剣聖”であるエリゼちゃん相手にまともにやり合えてるのを目にすると、冗談抜きでメイドさんや執事さんは実は強いんじゃないかという価値観を抱いてしまいますよね……」

「フフ、言われてみればエクリアさん達はともかく、シャロンさんもそうだけどフィリップさんはデュナン公爵の執事でありながら、相当な使い手だから、そんな価値観を抱くのも無理はないと思うわ。」

それぞれにとっての強敵であるデュバリィとエリゼ相手に勇敢に戦っている様子のフリーデル達とパトリック達を見つめたアガットは感心し、アネラスとシェラザードは苦笑しながらセレスタンとサリファを見つめた。

「ハッ……何はともあれ今がチャンスじゃねぇか!」

「うん……!みんな、今の内に一気に駆け抜けて城館に突入するよ!!」

「おおっ!!」

不敵な笑みを浮かべたアッシュの言葉に頷いたトワは号令をかけ、デュバリィ、エリゼ、バルディエルがそれぞれの相手と戦っている間に仲間達と共に駆け抜けて城館の内部へと突入した。



~カイエン公爵城館・右翼~



「よし……城館に出たか。」

「ああ……カイエン公爵家城館。この建物のどこかに皇妃殿下達がいるはずだ。」

城館に突入したマキアスとクロウは周囲を見回して呟き

「フン、シュバルツァー達が攻めていなきゃ、使用人にでも紛れて片っ端から部屋を浚ってみることもできたんだがな。」

「まあ、逆に言えばリィン君達が城館でもそうだが市内でも騒ぎを起こしてくれているお陰でこんなあっさりと城館に潜入できた訳だけどね………恐らく、リィン君達の部隊はこの城館の掌握をしているだろうから、彼らに見つからない内に先に進もう。」

鼻を鳴らして呟いたアッシュの言葉に対して答えたアンゼリカは先に急ぐように促した。その後トワ達は右翼を急行して正面ロビーに出た。



~正面ロビー~



「クスクス、まずは”第一関門”の突破、おめでとうと言うべきかしら?」

トワ達が正面ロビーに出るとレンが小悪魔な笑みを浮かべてトワ達を見つめて声をかけた。

「あ、貴女達は………」

「……”鉄機隊”の”魔弓”と”剛毅”。」

「へっ、プリネ皇女やその使い魔の連中、ツーヤが市街戦に参加しているのにテメェだけ姿が見当たらねぇから、もしかしてと思っていたが、やっぱりこっちにいやがったか。」

「それにレン皇女殿下までいるとは………」

「やれやれ……子爵閣下を無力化する必要があるにも関わらず、”執行者”クラスの元結社のエージェント達にレーヴェ君、更にはレン君まで私達を阻むメンツに充てるなんて、幾ら何でも私達の事を警戒し過ぎだと思うんだけどねぇ、そちらの天使の参謀殿は。」

レン達を目にしたエリオットは不安そうな表情を浮かべ、フィーは警戒の表情で呟き、アガットは不敵な笑みを浮かべてレーヴェを見つめ、ユーシスは真剣な表情でレンを見つめ、オリヴァルト皇子は疲れた表情で溜息を吐いてレン達に指摘した。



「フッ、ルーレでの件がルシエルにとってはよほど衝撃的だったという証だ。」

「まあ、デュバリィの忠告を受けて一切油断や手加減をせずに貴方達とやり合いつつ、更には援軍の存在も警戒していたにも関わらず、”灰色の騎士”達の所に届かせてしまったのだから、彼女の貴女達に対する警戒度が更に上がるのも当然だと思うけどね。」

「フフ、それにしても”魔神”ともまともにやり合える程の天使達の協力を得られる何らかの契約を交わしていた事には我らも心底驚いたぞ、クルーガー。」

レーヴェとエンネアは静かな笑みを浮かべて答え、アイネスは興味ありげな表情でシャロンを見つめて声をかけた。

「え……ど、どうしてシャロンさんが呼んだ天使のメイドの方達の事を……」

「うふふ、それは”これ”のお陰よ♪」

アイネスの口ぶりからその場にいなかったにも関わらずアイネス達がエウシュリーちゃん達の存在を知っている事に気づいたセドリックは戸惑いの表情で疑問を口にすると、レンが指を鳴らして自身の魔力で錬成した小さな鳥の姿をした使い魔を見せた。



「自身の霊力(マナ)で錬成した”使い魔”を通して地下水路での出来事を見ていたのですか……」

「チッ、そういえば”星杯”でのアタシ達の様子を観察していたような話もしていたから、そんな器用な霊力(マナ)の使い方ができる事にも気づいておくべきだったわね。」

レンが見せた使い魔を見て察しがついたエマは不安そうな表情で呟き、セリーヌは舌打ちをして厳しい表情でレンを睨んだ。

「クスクス、ベルフェゴールお姉さんに加えて”神速”のお姉さんが契約した”はぐれ魔神”でもある天使さんまでⅦ組のみんなに充てる事をルシエルお姉さんから聞かされた時は、レンですらも”やりすぎ”だと思っていたけど、結果的にはルシエルお姉さんの判断は正しかったようね。」

「!やっぱり私達の足止めにベルフェゴールまで充てていたんですね……!?」

「テメェらの中にはいないって事は、テメェらの後に控えているようだな、あの痴女は。」

意味ありげな笑みを浮かべて答えたレンの話からベルフェゴールも自分達の足止めに充てられている事に察しがついた仲間達がそれぞれ血相を変えている中、アリサは真剣な表情で声を上げ、アッシュは厳しい表情でレン達を睨んだ。



「うふふ、お察しの通り、ベルフェゴールお姉さんはレン達の次の相手にして、”最後の関門”よ♪――――――ちなみに”最後の関門”に待ち受けているのはベルフェゴールお姉さんとルーレの件以降にリィンお兄さんと契約を交わした新顔の使い魔の人よ♪」

「何ですって!?」

「ルーレの件以降という事は、その新顔の使い魔という人物は間違いなくオレ達も知らない人物なんだろうな……」

「ハア……当たって欲しくない予想が当たってしまったみたいね……」

「フフ、という事はその方はわたくしにとっては”後輩”に当たる方でもあるということですか。」

「シャロン、貴女ねぇ………というか、どうせその新しい使い魔も”性魔術”で契約したんでしょうね~!!」

レンが口にした驚愕の事実を知ったサラは血相を変えて声を上げ、ガイウスは真剣な表情で呟き、シェラザードは疲れた表情で溜息を吐き、苦笑しながら呟いたシャロンの言葉に呆れたアリサは目にも見えるほどの怒気をメラメラと燃やしながらリィンを思い浮かべ、その様子を見たその場にいる全員は冷や汗をかいて表情を引き攣らせた。

「クスクス、ちなみにこれは余談だけど、その新顔の使い魔さんのお陰でリタお姉さんが一時的にセリカお兄さん達の元を離れてレン達に協力してくれるようになったのよ?」

「ええっ!?リタちゃんがリィン君達に!?」

「まさか彼女まで”灰獅子隊”に協力しているとは………彼女がセリカ殿の元を離れてまでリィン達に協力する理由となる人物……一体何者なんだ……?」

更なる驚愕の事実を口にしたレンの話を聞いたリタを知る一部の者達――――――オリヴァルト皇子、アガット、シェラザードが血相を変えている中オリヴァルト皇子達同様リタを知っているアネラスは驚きの表情で声を上げ、ミュラーは真剣な表情で考え込んでいた。



「殿下達はその”リタ”という人物の事をご存じのようですが、その人物は一体何者なのですか……?」

「例の”神殺し”とやらの関係者のようだが………」

「リタ君はかつてはセリカさんの使い魔だった”守護霊”――――――”幽霊”の少女さ。」

「ふええええっ!?って事はその”リタ”って人物は本物のお、おおおおおおお、お化けって事じゃん~~~~~!?」

「ひ、非常識な………」

「フン、そもそも”神殺しという非常識過ぎる存在”と比べればまだ可愛い方だろうが。」

ラウラとクロウの疑問に答えたオリヴァルト皇子の答えを聞いたミリアムは驚いた後表情を青褪めさせて声を上げ、疲れた表情で呟いたマキアスの言葉にユーシスは鼻を鳴らし指摘し

「うふふ、リタお姉さんもそうだけどリィンお兄さんが契約した新顔の使い魔さんもアンゼリカお姉さんやアネラスお姉さんにとっては間違いなくストライクゾーンになる容姿をしている女の子達よ♪」

「へえ?そんな話を聞かされると、会うのが楽しみになってきたじゃないか、そのリタという幽霊の女の子とやらとリィン君が新たに契約した使い魔の女の子も♪」

「うんうん!リタちゃんとは”影の国”以降会っていないし、わたしの事をよく知っているレンちゃんがそこまで断言するくらいなんだから、間違いなく可愛い女の子なんだろうね、リィン君が新たに契約したっていう使い魔の女の子は♪」

「ったく、今はそんなことを気にしていられる場合じゃないでしょうが……」

レンの説明を聞いてそれぞれ興味津々な様子のアンゼリカとアネラスの様子に仲間達と共に冷や汗をかいて脱力したサラは呆れた表情で呟いた。



「さてと。”おしゃべり”はこのくらいにして、そろそろ始めましょうかと言いたい所だけど……まずは”間引き”をしておかないとねぇ?」

そしてレンは意味ありげな笑みを浮かべてアリサ達を見回した後自らに秘める力を解放して後魔人化した姿になった!

「ヒッ……!?」

「こ、この凄まじい気当たりは……!?」

「う、嘘だろう……!?あの髪と目は……!」

「馬鹿な!?”鬼の力”を解放した時のリィンと同じではないか……!?」

「ど、どうして……レン皇女殿下が”鬼の力”を解放した時のリィンと同じ姿に……!?」

「今のレン皇女殿下から感じるこの凄まじい”風”……”鬼の力”を解放した時のリィンから感じた時に似ている……!」

魔人化したレンの姿を見たエリオットは思わず悲鳴を上げ、ラウラやマキアス、ユーシス、アリサは信じられない表情で声を上げ、ガイウスは真剣な表情で声を上げた。



「銀髪に深紅の瞳………もしかして、それが去年のクロスベルで起こった”D∴G教団事件”で、教団の生き残りの幹部であるヨアヒム・ギュンターとの戦いで習得した”魔人化(デモナイズ)”とやらかしら?」

「”魔人化(デモナイズ)”ですって!?」

「し、しかも以前のリィンさんのように自分の意志で”魔人化(デモナイズ)”ができる上正気も保っていられるなんて……」

レンの姿を見て心当たりを思い出したシェラザードの話を聞いたセリーヌは厳しい表情で声を上げ、エマは信じられない表情でレンを見つめた。

「シェラザード、レンのあの変貌に心当たりがあるのか?」

「”D∴G教団事件”終結から2ヶ月後くらいに師匠からレンもクロスベルでの”D∴G教団事件”に関わって、ようやくレンの問題が真の意味で解決できた話を教えてもらってね……その時にティオ達――――――”特務支援課”と共に教団の生き残りの幹部との決戦にレンも参加して、その際にレンが教団の生き残りの幹部が見せたグノーシスによる能力の一部――――――”人の記憶を読み取るという能力”を過去の教団の”儀式”によって得たレンの超人的な能力によって吸収して、その吸収した教団の生き残りの幹部の記憶を利用して魔人化(デモナイズ)までできるようになったという話を教えてもらったわ。」

「な―――――という事は殲滅天使はクロスベルで事件を起こした”教団”の生き残り―――ヨアヒム・ギュンターのように人の記憶を読み取れるって言うの!?」

「ええっ!?そ、それってどういう事なんですか!?」

アガットの疑問に答えたシェラザードの話を聞いて驚きの声を上げたサラの言葉を聞いたセドリックは困惑の表情で疑問を口にした。



「皇太子殿下達もご存じの去年にクロスベルで騒動を起こした”D∴G教団”の生き残りであるヨアヒム・ギュンターは自らが改良を重ねた”教団”の薬物―――”グノーシス”を投与し続けていた事によって、人の記憶を読み取る事ができたとの事でして。その他にも身体能力が爆発的に向上する能力もそうですが、かつてのリィン様や”劫焔”のように魔人化する能力も存在したとの事ですわ。」

「薬物で人の記憶を読み取るなんて、非常識な……」

「ハハ……私達の知らない内にただでさえチートな存在だったのに、そのチートさに更に磨きをかけるなんて、さすがはレン君と言うべきだね……」

「アハハ……まさかレンちゃんが新たに変身バージョンを手に入れていたなんて驚いたよ……うん、その姿はその姿で可愛いね♪」

「あれを”可愛い”と判断するとか、アンタの頭の中はどうなってんだよ……つーか、その姿もそうだが”記憶を読み取れる能力”とやらもあの”パテル=マテル”とやらのように”特異点”を探していた俺達に協力していた頃にも見せなかったテメェの”手札”か。」

シャロンの説明を聞いたマキアスは疲れた表情で呟き、オリヴァルト皇子は苦笑し、苦笑した後呑気な様子で魔人化したレンを”可愛い”と評価したアネラスに呆れたアッシュは表情を引き締めてレンを睨んだ。



「うふふ、大正解♪――――――元”教団”の関係者であったエンネアお姉さんにとっては見慣れている姿かしら?」

「フフ、そうでもないわよ。確かに当時の教団も教団が拉致した子供達に”儀式”として教団が開発していた”グノーシス”も投与して、異形化した子供達もいたけど………クロスベルでヨアヒム・ギュンターを調べていた貴女も知っているように、”その姿”になれたのは”教団”の滅亡後研究を続けて”グノーシス”を完成させたヨアヒム・ギュンターのみよ。」

アッシュの指摘に意味ありげな笑みを浮かべて答えたレンはエンネアに問いかけ、問いかけられたエンネアは苦笑しながら答えた。

「それよりもレン皇女。先程”間引く”と言っていたが、もしかしてその”間引く対象は紅き翼の援軍として現れたトールズの生徒達の事か”?」

「何ですって!?」

「!!いけない!みんな、すぐに散開して――――――」

「うふふ、またまた大正解♪――――――そして散開した所で無意味よ。」

口元に笑みを浮かべたレーヴェのレンの問いかけを聞いた紅き翼の面々がそれぞれ血相を変えている中サラは厳しい表情で声を上げ、トワが仲間達に指示を出したその時レーヴェの疑問に答えたレンはトワ達の目にも止まらぬスピードで次々とトワ達に同行していた”トールズ義勇隊”の生徒達に強襲した!



「ぐあっ!?」

「ぐは……っ!?」

馬術部の部長にして2年男子貴族生徒――――――ランベルトとフェリスの兄である2年貴族男子生徒――――――ヴィンセントは吹っ飛ばされた後壁に叩きつけられ

「あぐっ!?」

「ああっ!?」

「ぐふ……っ!?」

「あ………」

アリサが所属している部活であるラクロス部の部長である2年平民女子生徒――――――エミリーと副部長である2年貴族女子生徒――――――テレジア、ミリアムが所属している部活である調理部の部員の一人である1年貴族女子生徒――――――マルガリータ、そしてフィーが所属しているかつ、トールズを去る前のセレーネも所属していた部活である園芸部の部長である2年貴族女子生徒――――――エーデルはそれぞれその場で崩れ落ちた。

「ランベルト先輩……!?」

「大丈夫かい、ヴィンセント君……!?」

「エミリー先輩!?テレジア先輩!?」

「マルガリータ……!」

「エーデル部長……!」

一瞬でやられた残りのトールズ義勇隊の面々の様子を目にしたユーシス、アンゼリカ、アリサ、ミリアム、フィーはそれぞれ思わず声を上げた。



「ほう。身体能力の面で言えば、火焔魔人と化したあの”劫焔”と並ぶのではないか?」

「さてな……ただ、あの一瞬で全員を”峰打ち”で無力化するような真似は”劫焔”にはできないな。」

「フフ、言われてみれば確かに”劫焔”にそんな器用な真似はできないでしょうね。」

一瞬でトールズ義勇隊の面々を無力化したレンの技量に感心しているアイネスの推測に答えたレーヴェの推測を聞いたエンネアは苦笑した。

「うふふ、所詮は”実戦”を経験した事もないぬるま湯に浸かっていた端役(エキストラ)。トールズは”士官学院”だから、Ⅶ組以外の生徒や教官達を”戦力”として活用して自分達の戦力不足を補う事は理にかなっているけど、”相手が悪すぎたようね?”」

「確かにリィン君を除いた黒獅子の学級(ルーヴェン・クラッセ)の面々の実力を考えればメンフィルの教育方法と比べたら、トールズの教育方法は”ぬるい”かもしれないね………だけど、例え一人一人の持つ”力”は大した事がなくても、それらが集まればやがて大きな”力”となる事は内戦でも――――――そして3年前の”リベールの異変”でも証明してくれている。だから、彼らは私達にとっては心強き”力”だ。」

「ええ……!あたし達の教え子にこんな目に遭わせた事……絶対に後悔させてやるわ!」

魔人化を解いて元の姿に戻って小悪魔な笑みを浮かべて答えたレンの指摘に対してオリヴァルト皇子は真剣な表情で答え、オリヴァルト皇子の言葉に頷いたサラは怒りの表情でレンを睨んだ後オリヴァルト皇子は導力銃を、サラは導力銃と強化ブレードを構え、二人に続くようにトワ達もそれぞれの武装を構えた。

「教え子達を傷つけたレン皇女殿下に怒りを抱くサラ教官の気持ちは理解できますが、”怒り”のあまり”目的”を忘れてはいけませんよ。」

するとその時その場にトマスの声が聞こえた後トマス、ロジーヌ、東方風の武闘着を身に纏った大柄な男性、そして美貌の容姿の娘がトマスの転移術によってその場に現れた――――――!



 
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