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クラディールに憑依しました

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ちょっと堪えました

 アルゴからの連絡を受けて転移門広場には、アスナ、キリト、シリカ、リズ。
 そして、ヒースクリフ、ゴドフリーが集まっていた。


「血盟騎士団からは私とアスナ君、シリカ君、ゴドフリーが同行しよう。
 他のメンバーは出払っていてね、転移結晶で帰還させる訳にも行かない」
「救出活動って話なんだから、ゴチャゴチャ居ても――――血盟騎士団の団長様なら心配ないか」
「雑談は後ダ、開けるゾ――――コリドー、オープン!」


 空間が開かれ、全員が飛び込んだ。


 ボス部屋の扉はまだ閉じられたままだ。


「準備は終わったカ?」
「あぁ、問題ない、全員転移結晶は持ったな?」
「こちらは終えている」
「何時でも行けるわ――――開けるわよ」


 ボス部屋の扉が開かれると――――そこには一体のボスが玉座に向けて素手を振り下ろしていた。
 取り巻きの姿は見られない、そして侵入したアスナ達に気付いた色違いのコボルド・ロードがターゲットを変えて襲い掛かる。
 振り向いたフロアボスに感じた違和感――――それは武器を持っていなかった事だ。


「アスナっ! スイッチ行くぞ!!」
「了解」


 キリトの掛け声にアスナが応える。
 既にフロアボスのHPゲージは最後の五段目に差し掛かっていた。
 ボスの拳槌をキリトがソードスキルで跳ね上げ、アスナが攻撃する。


「リズ、あの馬鹿に武器を届けロ! シリカは団長の後ろから動くナ、そこより安全な所など無イ」
「了解」
「――――わかりました!」


 リズがフロアボスの横を駆け抜けようとした時、フロアボスのタゲがリズに変わった。
 HPゲージが五段目に突入したせいで行動パターンに変化が起こっていた。


「――――嘘ッ!?」
「どおおおおりゃッ!!」


 ゴドフリーの巨大な両手斧がリズを襲う筈だった拳を跳ね上げた。


「此処は任せて貰おう!!」
「あ、ありがとう」

「もう一度行くぞ! アスナっ!!」
「了解!!」



………………
…………
……


 色違いのコボルド・センチネルは二十一体目を倒した所で出現しなくなった。
 だが、フロアボスのソードスキルの前に全ての剣は折れ、鎧は破壊された、ポーションも少なくなった。


 俺もフロアボスもバトルヒーリングスキルを持ってるもんだから、時間の経過と共にHPは元に戻った。
 此処で俺が注目したのは回復しない所、つまり自動回復スキルの有効範囲外――――ボスの武器だ。
 ボスがソードスキルで武器を振り下ろす度に格闘スキルで武器を横から殴り続けて
 約二時間ほどの奮闘で武器破壊に成功した時は笑みを抑え切れなかった。


 そこからはボスの拳槌にカウンターを合わせ、クリティカルヒットのボーナスでHPを削り続けた。
 ボスのHPが五段目になった時、またセンチネルが沸き始め、格闘スキルで始末したが。
 ――――自動回復でボスのHPは再び四段目に戻っていた…………それの繰り返しだった。


 アスナ達が戻って来たのは、ボスのHPが五段目に差し掛かった時で、完全にセンチネルも沸かなくなっていた。


「ちょっと、あんた大丈夫!? 何で上半身裸なの!?」
「全部ぶっ壊された――――何しに来たんだ?」
「――――馬鹿っ!! あんたに装備を届けに来たのよ!!」


 リズがメニューを開き、大量の剣と鎧を一着渡してきた。


「耐久度がまともな剣を一本だけでも良かったんだぞ?」
「シリカが今にも飛び出しそうだったから――――色々理由付けて武器作るのに付合わせたのよ。
 ご注文どおり、耐久度と重量強化にしてあるから、簡単に折れられるんじゃないわよ?」

「おー、そりゃご苦労さん、ありがたく使わせて貰うよ」
「帰ったらコキ使ってやるから、覚悟しなさい!! シリカにもちゃんと謝るのよ!?」
「了解、ちょっくら行って来る」


 既にフロアボスのHPが残り少なくなっていて、俺が辿り着く前に――――キリトの一撃がトドメを刺した。




「アスナ様――――申し訳ありませんでした」
「――――申し訳ないじゃないでしょッ!?」


 俺は深く頭を下げて謝って、キリトに向けて顔を上げる。


「そちらの方も私の為に申し訳ありません、是非お礼を――――」
「いや、俺は遠慮させて貰うよ、ボスのドロップがコレでね」


 キリトがメニューを操作すると黒のコートが別のデザインに切り替わった…………それでも黒のコートだが。


「コレだけで充分さ、ついでに第十一層の街も開放してくる――――またボス攻略で会おう」


 そう言ってキリトは第十一層へ向かった。


「帰ったら圏内戦闘五回戦ね?」
「………………寝てからで良い? 今日で四徹目なんだわ」

「…………起きたら必ずよ?」
「了解しました、副団長殿――――団長もそちらの方も来て頂いて、申し訳ありませんでした」


 俺は団長とゴドフリーに頭を下げて謝った。


「クラディール、私達よりも先ずは彼女に謝りたまえ」


 団長の後ろからシリカが顔を出した。


「――――大丈夫でしたか?」
「あぁ、何とかね、悪かったな、心配を掛けた」
「もうあんな事しませんか? 約束してくれますか?」

「…………どうだろうな? 次もやるかも知れん」
「そんなのじゃ、許してあげられません」
「そりゃ参ったな…………」

「あたし強くなります。 だから、もうあんな事はしないで下さい!!」
「――――気が向いたらな」
「向かなくても心掛けて下さい!」


「了解――――さて、此処に居る全員に、感謝の気持ちを込めて晩飯を奢ろうか」
「いや、これから我々は第十一層への引越し準備を始めよう。 クラディールも疲れている所悪いが手伝ってくれ」
「はい、わかりました――――晩飯は第十一層に上がってからにしましょう」


 こうして、第十層は今迄で最速の二日でクリアされ、他のプレイヤー達を大いに驚かせる事になった。
 そして俺はアルゴの発行している新聞にデカデカと掲載され。

 『レベルホリック』 『一人でボスを瀕死にした馬鹿』 『血盟騎士団の狂鬼』 などと呼ばれるハメになった。
 ちなみに、レベルホリックとは中毒者や依存症、つまり『レベル上げ中毒者』と言う意味である。

 その後行われた第十一層タフトでの晩餐会は盛大に行われ………………俺が散財した事だけは伝えておこう。 
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