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助けられた子熊達

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第一章

                助けられた子熊達
 この時ロシアのヴィゴゼロ湖でニコライ=ゴリシビッチは仲間達と共に仕事である漁に励んでいた。
 この湖は広く魚も多く漁業に向いていた、そして今日も。
「よく獲れるな」
「そうだな」
「今日もな」
「じゃあ今日はこれ位にするか」
「そうするか」
「そうだな、それで帰ってな」
 ゴリシビッチは水筒を出してウォッカを飲みつつ言った。一八六の背で肉付きがいい、青い目で濃い金髪で顔には見事な髭がある。
「一杯やるか」
「もうやってるだろ」
「それは俺達もだけれどな」
「それでも帰ったらだな」
「一杯だな」
「これは身体を温める為に飲んでるんだよ」 
 ゴリシビッチは今飲んだそれについてはこう言った。
「そうだろ」
「だよな、ロシアだからな」
「ロシアだとな」
「仕事中に飲んでよし」
「誰も怒らない」
「そうした国だからな」
「あのスターリンだって許していたんだ」
 仕事中の酒はだ。
「逆に飲むなって言ったらな」
「駄目だからな」
「じゃあいいな」
「酒は」
「仕事中に飲んでもな、それで終わったら飲むぞ」 
 他の国では終わってもではないかと言われるが彼等は笑って話していた、そして。
 帰ろうとするとだった。
 船の傍に二匹の子熊がいた、見れば子熊達は覚えていた。
「泳いでいる途中にこうなったか?」
「おい、これはやばいな」
「湖の真ん中だしな」
「このままじゃこの簾中死ぬぞ」
「溺れ死ぬぞ」
「おい見ろ」
 ゴルシビッチは船が今いる場所の近くにある湖の中にある島を指差した、するとその岸辺にだった。
 大きな熊がいた、彼はその熊を見て仲間達に言った。
「多分子熊達の母親だな」
「熊は親子の情が深いしな」
「だからだな」
「心配でずっと見ているんだな」
「一緒に泳いでいる時に子供達が溺れて」
「自分は目的に着いたけれど」
「心配で見ているんだな」
 仲間達も察した。
「心配で仕方ないんだな」
「母親だしな」
「じゃあここはな」
「何とか助けるか」
「しかしどうして助けるか」
「それが問題だな」
 溺れている子熊達は船の縁に前足をやって必死に掴もうとしている。まさに溺れる者は何とやらだった。
 それで彼等も助けようとしたが。
「駄目だ、縁を掴みきれない」
「水で濡れてて滑るんだな」
「爪もかかりきっていない」
「これじゃあ無理だ」
「どうして助ける」
「どうすればいいんだ」
 ゴルシビッチ達は悩んだ、悩む間にも子熊達は体力を失っていっていた。正直彼等も焦りだした。だが。
 ここでゴルシビッチは船にあった漁網を見て言った。
「これ使うぞ」
「漁網か」
「漁網で子熊達を捕まえてか」
「そして甲板に引き揚げるか」
「そうするぞ」
 こう仲間達に言ってだった。 
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