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歪んだ世界の中で

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第十三話 希望の親その五

「そんな気遣いとかええんやで」
「そう言ってくれるけれどね」
「ええから。ほなサイダーやな」
「四本やな」
 おばちゃんも言ってきた。おばちゃんはもう千春に気付いていた。
「その娘もおるさかい」
「千春にも出してくれるの?」
「希望の好きな人やろ」
「うん、そうだよ」
 その通りだとだ。千春は笑顔でおばちゃんに答えた。
「千春希望のこと大好きだよ」
「そうやねんな。希望にもやっとそういう人ができてんな」
「姉ちゃん、そやったらな」
「サイダー四本や」
 まただ。ぽぽちゃんとおばちゃんは話した。姉妹だけあって息が合っている。
 そしてそのうえでだ。サイダーの数を決めて希望と千春を席に座らせて造花は一先ずどけてだ。それから希望の話を聞くのだった。
 希望はサイダーをコップに入れてだ。それから言うのだった。
「あのさ。僕ね」
「どないしたんや?」
「また家で何かあったんか?」
「その家から出ようって思ってるんだ」
 すぐに、しかも単刀直入に言う希望だった。
「あの家からね」
「そやったらな」
 希望の言葉を聞いてだ。すぐにだった。
 おばちゃんは優しい声でだ。こう彼に言ってきたのだった。
「うちに来やへんか?」
「えっ?」
「だから。あの家やなくてうちに住へんか?」
「そやな。それがええわ」
 ぽぽちゃんもだ。笑顔で希望に言ってきた。希望とおばちゃん、千春とぽぽちゃんが向かい合う形になって四人で話しているその中でだ。
「今丁度二階の部屋空いてるしな」
「それがええんちゃうか?」
「えっ、けれど」
「そのことを言いに来たんやろ?」
 おばちゃんは優しい声で希望に言ってきた。
「そうなんやろ?」
「それはその」
「そやったらええで」
 おばちゃんは察していたのだ。既にだ。
 それでだ。こう言ったのである。
「何時でも来てええんやで」
「いいの?」
 自分から言ってだ。何とか許してもらおうと思っていた矢先にだ。そう言われてだ。
 希望は呆気に取られてだ。そのうえでこう二人の大叔母に言ったのだった。
「本当に」
「あの家はあかんで」
 ぽぽちゃんが笑って言ってきた。
「あそこにいたらあかんで」
「駄目なんだ」
「あんたのお父さんとお母さんはあかんで」
 ぽぽちゃんが見てもそうだというのだ。
「そやからな。あの家にいたらな」
「ぽぽちゃんもそう思ってるんだ」
「うちもやで」
 そしてだ。おばちゃんも言ってきたのだった。
「あの家だけはあかんで」
「そうなんだ」
「何時言うかって思ってたんや」
 おばちゃんはまた希望に言ってきた。
「あの家だけはあかんさかい」
「あんたのお父さんは昔からそうやったんや」
 ぽぽちゃんは残念な顔になりだ。希望にまた話してきた。
「ああしてな。自分のことばっかりでな」
「難儀な子やったんや」
 おばちゃんもぽぽちゃんと同じ顔になっていた。
「まあ。この話はそれ位にしてや」
「うちに来るんやったらええで」
 それはだ。何時でもいいというのだ。 
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