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星河の覇皇

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第七十七部第四章 二度目の引き分けその三十七

「そこにもう一つ加わるのだ」
「言葉が」
「そうなりますか」
「ここでさらに」
「そうだ、アッラーからの愛はだ」 
 それはというと。
「何よりも勝る」
「一人の愛情よりも」
「人間のそれよりも」
「さらにですね」
「アッラーは絶対のものだ」
 この世に絶対のものはないという、だがイスラムでは唯一絶対のものがある。それがアッラーであるのだ。
「そのアッラーの愛情があれば」
「その時はですね」
「最早ですね」
「憎悪は恐れることはない」
「人のそれなぞ」
「人の憎悪は愛情に勝てずだ」
 そしてというのだ。
「人は絶対でないからな」
「それで、ですね」
「必然的にそうなりますね」
「アッラーの愛があれば」
「最早人の憎悪なぞ」
「何ともない、若し私がアッラーの愛を失えば」
 その時はというと。
「おそらく今にでもだ」
「倒れる」
「そうなるというのですね」
「そうなる、人は急に死ぬ時もある」
 今の瞬間まで元気があった者がだ、それこそその瞬間まで野球で外野の守備についていた者が急に心臓が止まって倒れて死ぬこともあるのだ。
「それは私も同じでだ」
「急にですか」
「亡くなられる」
「そのこともありますか」
「そうだ、そうなるからだ」
 だからだというのだ。
「私もだ」
「それで、ですね」
「閣下もですね」
「若しアッラーの愛を失えば」
「今にでも」
「そうなる筈だ、暗殺なぞだ」
 それこそというのだ。
「その時はいとも簡単にだ、幾ら厳重な警護の中にいてもな」
「死にますか」
「暗殺される」
「そうなりますか」
「そうしたものだろう、だが警護は置く」
 それは絶対だというのだ。
「そしてだ」
「そのうえで、ですね」
「身辺を護られ」
「そうして」
「この戦争に勝ちサハラを統一してだ」
 それからのこともだ、シャイターンは話した。彼にとっては統一は目標ではあっても最高にして最後の目標ではないのだ。
「サハラを統治してだ」
「豊かにされ」
「素晴らしい国にされますね」
「そうだ」
 その考えだというのだ。
「そうしていく、だからな」
「ここで、ですね」
「警護を緩められることなく」
「用心に用心を重ね」
「そうしていかれますね」
「そうしていく、しかし独裁者はな」
 スターリンを思い出してだ、シャイターンはこうも言った。
「スターリンだけでなくヒトラーや他の独裁者もだが」
「はい、どうしたのでしょうか」
「暗殺のことでしょうか」
「それを恐れてのことでしょうか」
「いや、暗殺のことではない」
 その話ではないとだ、シャイターンは断った。 
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