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天平のタイムマシン

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第三章

 不意に空から何か見えた、それは何かというと。
「馬だな」
「はい、誰か乗っています」 
 役人も供の者もその馬を見て言った。
「官の衣を着ていますが」
「あれはかなり格があるな」
「皇室の方だけが着られる服です」
「それで空を飛ぶ馬にとなると」
 役人は真剣に考える顔で述べた。
「もうな」
「お一人しかおられませんな」
「皇子だ」
 役人は空駆ける馬とそれに乗る人を観て言った、次第に姿が見えてきている。
「間違いない」
「左様ですね、言い伝えではです」
「皇子は馬に乗られて空も飛ばれた」
「そう言われています」
「本朝でそれが出来たのはあの方しかおられぬ」
「それでは」
「皇子がここに来られたならな」
 それならというのだ。
「声をかけさせて頂くぞ」
「わかりました」
 供の者は役人の言葉に頷いた、そうしてだった。
 その馬が来るのを待った、すると。
 馬は次第に降りてきて二人の前に足を下した。そこには緋色の官吏の衣を着た白面で気品のある整った顔立ちの若い方が乗っておられた。
 役人も供の者もその方に畏まって膝をつき言った。
「厩戸皇子様でしょうか」
「間違いありませぬか」
「如何にも」
 その方は微笑んで答えられた。
「そなた達が来たのを察してだ」
「皇子ご自身が来られたのですか」
「そうだ、まずは立つのだ」
 皇子は役人達にそれをしろと話した。
「いいな」
「それからですか」
「あらためて話そう」
「それでは」
 許しが出たのでだ。
 役人も供の者も立った、そしてだった。
 二人が立つと皇子はすぐに二人に話された。
「その石室は時空を超えられるのだ」
「そうなのですか」
「新月の日が変わる時に入るとな」
 そうすればというのだ。
「その者が会いたいと思っている者がいる時代に行けるのだ」
「だからですか」
「そなたはおそらく行基の話を聞いたな」
「はい、それで皇子にお会い出来るのかとです」
 役人は皇子のお言葉に正直に答えた。
「思い」
「そしてだな」
「供の者を連れて中に入りました」
「私もこの方のお話を聞いてです」
 供の者も皇子に話した。
「それで、です」
「室に入ったな」
「そうしました、するとです」
「私と会えたな」
「左様でした」
 こう皇子に答えた。
「まさかと思いましたが」
「ここはそうした場所だ、その望む時代にいられる時は僅かだが」 
 それでもというのだ。
「それが出来る場所だ、私もこの室は何度か使っている」
「皇子もですか」
「そして実は父上にもお会いしている」  
 皇子は役人に笑って話された。
「そうもしたことがある」
「そうなのですか」
「おそらく古の時代に誰かが造らせたものだ」 
 皇子はその室を見つつ話された。 
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