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慎重な対応

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第四章

「慎重な対応をですか」
「検討するだ」
「それじゃあもう」
「まずい、このままだとな」
「そうですよね」
「大変なことになる」 
 河野の言葉も深刻なものだった。
「本当にな」
「そうですよね」
「だから私も今は何とかだ」
「重役の人達にですか」
「毎日言っているが」
「動いてくれないですか」
「問題を全く理解していない」
 そうだというのだ。
「どういう訳かわからないが」
「事情を理解していないとしか思えないですね」
 池上も深刻な顔で言った。
「もう」
「そうだな、このままだとな」
「マスコミが報道して」
「ネットでもな」
「もっと事態が知られて」
「取り返しのつかないことになる」
「そうなりますね」
 河野にその顔で言った。
「このままですと」
「今すぐに手を打たないとな」
「はい、組合もどう言うか」
「組合も不安だろうな」 
 企業の労働組合もというのだ。
「そうだろうな」
「絶対にそうかと」
「会社が潰れると彼等も困るからな」
「そうですね」
「すぐに動いてもらわないとな」
 経営陣つまり重役達にとだ、河野は言った。そうして彼は実際に重役にこれまで以上に言ったが彼等は。
 全く動かなかった、やはり慎重に対応を検討すると言うばかりで。
 遂にマスコミが報道しだしネットでは炎上した、会社に抗議の電話が鳴り響きかつ取引も断られる様になった。
 契約者からは契約解除が相次ぎ株価も暴落した、この状況を受けても。
 重役達は慎重に対応を検討するだった、それで河野は池上と奥保に言った。
「もうこの会社は駄目だ」
「手遅れですか」
「倒産しますか」
「そうなる、多くの人はまだ大丈夫と言っているが」
 それでもだというのだ。
「もうだ」
「倒産する」
「それが決定的ですか」
「今なら間に合う」
 河野は二人に言った。
「逃げるべきだ」
「逃げる?」
「逃げるっていいますと」
「退社することだ」
 こう二人に答えた。
「今のうちにな」
「退社ですか」
「すぐに次の就職先を探すことだ」
 河野は奥保に答えた。
「そうすべきだ」
「今のうちにですか」
「もうこの会社は手遅れだ」
「上が何の対応も取らないからですね」
「大変な不祥事ということが世間に知られて」
 そうしてというのだ。 
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