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糸引き婆

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第一章

               糸引き婆
 徳島県にはある妖怪が出ていた、その妖怪の名前を糸引き婆という。
 夜道で糸を引いていて若く美しい姿をしているがその美しさに見惚れていると急に白髪の老婆の姿になって驚かせてくる、この妖怪の話を聞いてだ。
 地元の高校生山影義光はこう言った。
「本当にいるのかな」
「昔からいるって言うな」
「この徳島に」
「それじゃあいるだろ」
「糸引き婆も」
「婆さんの妖怪っていうと」
 義光は考える顔で言った、太く短めの眉で素朴な感じの小さな丸い目で唇は厚めだ。長方形の顔で黒い髪の毛を短くしている。背は一七六位で黒の詰襟の制服が似合うしっかりした体格である。その彼が言うのだった。
「砂かけ婆かな」
「ああ、あの妖怪な」
「あの妖怪徳島にも出るんだよな」
「そうだよな」
「それだったらな」
 まさにというのだ。
「糸引き婆って砂かけ婆の親戚かな」
「ああ、そうかもな」
「言われてみれば同じ婆さんの妖怪だしな」
「若しかしてな」
「親戚かもな」
「その辺り気になったな」 
 山影としてはだ。
「どうにも。調べてみたいな」
「調べるってどうするんだ?」
「具体的にどうするんだよ」
「一体な」
「直接聞こうかって思ってるよ」
 山影は友人達に答えた、クラスで何気なく話していたがその中で妖怪の話になってそれで言うのだった。
「妖怪に」
「糸引き婆にか」
「直接会ってか」
「それでか」
「そうしようか、夜に道に出るんだよな」
 山影は友人達にこのことを確認した。
「そうだよな」
「ああ、今話した通りだな」
「夜に道に出て来るんだよな」
「何でも」
「それじゃあな」
 山影は友人達に話した。
「夜にな」
「道に行ってみてか」
「糸引き婆に直接会ってか」
「それで聞いてみるか」
「そうしてみるな」
 こう言ってだった。
 山影は実際に夜に道に出てみることにした、だがここでだ。
 友人の一人が彼に対してどうかという顔でこう言ってきた。
「どの道か知ってるか?」
「妖怪が出る道が」
「ああ、その糸引き婆がな」
「そう言われたら」
 どうかとだ、山影はその友人に答えた。
「何処にでも出るんじゃないかな」
「そんな筈ないだろ」
 友人は山陰にすぐにこう返した。
「流石に」
「そうじゃないか」
「ちゃんとどの道に何時に出るか調べてな」 
 そうしてというのだ。
「そこに行かないと駄目だろ」
「そうなんだな」
「ああ、そうしような」
「そういうの知ってる人いるかな」
「日本史の松井先生が詳しいかもな」
 別の友人が言ってきた。
「そうしたことは」
「あの人がなんだ」
 山影はその友人にも応えた。
「妖怪のこと詳しいんだ」
「あの人何でも民俗学の学者さんでな」
 学校にいながら学問に励んでいるというのだ。 
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