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イベリス

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第三話 少しずつでもその四

「気をつけていてもね」
「悪いことはしてしまうのね」
「そうよ、何も悪いことしない人間なんてね」
「いないのね」
「生きているとね」
 それならというのだ。
「もうそれだけで悪いこともね」
「するものなのね」
「そうよ、気付かないうちに悪いことをして」
「悪口もなのね」
「言ってね」
 そしてというのだ。
「罪を犯して恨みもね」
「買うのね」
「ええ、けれど気をつけていたら」
 そうしていると、というのだ。
「その分そうしたことをすることが減るから」
「いいのね」
「そう、だからね」
 それ故にとだ、愛は咲にさらに話した。
「本当にいつも気を付けることね」
「そういえば愛ちゃん悪いことしないわね。悪口だってね」
「あまり言わないでしょ」
「私の知ってる限り悪口も悪いこともね」
「これでも絶対にね」
 咲がそう言ってもとだ、愛は返した。
「悪いことしてるし」
「悪口もなのね」
「言ってるわよ、私も」
「そうなのね」
「それが人間だからね」
「今言ってる通りに」
「そうよ、生きてるだけでだから」
 人間はどうしても罪を犯してしまうからだというのだ。
「気をつけないとね」
「そういうことね」
「それで私思うのよ」
 愛は真面目な表情になった、咲はこの従姉が表情豊かであることを知っているが今回は特にだと思った。
「人間自分が悪いことをすると自覚してね」
「気をつけることね」
「それで行いを反省して」
 そしてというのだ。
「気をつけないとね、それでよりよくいい人にならないとってね」
「思うことね」
「ほら、悪人正機説ね」
「教科書で出たわね」
「浄土真宗の教えよね」
「親鸞さんよね」  
 咲も言った、これは歴史の教科書で習ったことだ。
「あの人よね」
「そう、自分が悪いことをしたと自覚している人がね」
「悪人よね」
「そう思っていない人が善人で」
「それでよね」
「悪人こそ救われるべきだってね」
 その悪人正機説を愛は自分なりの解釈で咲に話した。
「言うわね」
「そうよね」
「本当に人は生きてるだけで罪を犯すから」
 だからだというのだ。
「気をつけていってそしてね」
「悪いことをしないで」
「そしてこの場合は仏様だけれど」
 浄土真宗の教えだからだというのだ。
「神様にも助けを求めね」
「救われるべきなのね」
「やっぱりね。咲ちゃん神様とか信じる?」
「まあ一応は」 
 信仰心と言うと咲は自覚がほぼない、だが神や仏の存在は否定するかというとそうでもないのでこう答えた。
「いるとは思うわ」
「だったらね」
「神様や仏様にもなのね」
「助けを求めることよ、人間信仰心もないと」
 それもなければというのだ。 
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