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Fate/WizarDragonknight

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集まるオーパーツ

 
前書き
真司「ハルト!」
ハルト「真司! ここにいたんだ……あれ? 送ってたんだよね?」
真司「もう送ったよ。お前、さっきエンジェル見たか?」
ハルト「ああ……」
真司「俺もさっき友奈ちゃんとみてさ、手分けして探してるんだ。あいつ、絶対に場危ない奴だからな」
ハルト「大丈夫。さっき……多分、倒した……と思う」
真司「倒した?」
ハルト「さっき、エンジェルと戦って……爆発したから多分」
真司「お前……これでエンジェルのマスター、もう戦い止めてくれない……」
ハルト「いや、あのマスター元々戦い止める気ない人なんだけど」
真司「そういう問題じゃ……ああもう! こうなったら、エンジェルのマスターにはもう平和的に聖杯戦争を降りてもらうしかねえ! 探すぞ!」
ハルト「お、おう」 

 
「ディアボリックエミッション」

 

 キャスターが唱えると、ぐんぐん球体型の闇が広がっていく。凄まじい破壊力を誇るそれにはエンジェルも避けたいのか、大きく翼を広げて上昇する。

 

「逃がさない」

 

 速度では劣るが、キャスターにも飛行能力はある。四枚の漆黒の翼を広げ、純白の翼の天使を追った。

 遠目で、エンジェルがすでに宝珠を胸に装填していた。

 すると、キャスターの周囲に旋風が舞う。それは徐々に数を増やして壁となり、円を描く竜巻となった。

 

「くっ……」

 

 キャスターは両手より黒い光線を放つ。だが、風は魔力の光を遮り、むしろ跳ね返してくる。

 さらに、逃げ場のなくなった竜巻の中を、上空のエンジェルが雷を放った。下に逃げようにも、キャスターは彼の雷から逃げられるほど早くはない。

 防ぐしかない。

 キャスターは両手を出し、そこに魔法陣を発生させる。黒と紫の魔法陣は雷を防ぎ、反射させながらキャスターのエンジェルへの接近を許した。

 

「ほう……」

 

 エンジェルは笑みながら、剣を取り出す。

 同時にキャスターは雷を防ぎきり、右手に装着された装備を突き出す。黒の盾をベースに灰色が彩られたそれから、黒い光線が発射。それはエンジェルの右上翼を貫き、彼の顔を苦痛に歪めた。

 

「おのれ!」

 

 エンジェルが剣を振るう。キャスターは右手の武器で防御したが、エンジェルはすぐさま太刀筋を切り替え、それを弾き、キャスターの体へ斬撃を叩き込んだ。

 魔力障壁さえも突破した彼の一撃で、キャスターは少し体を回転させられる。さらに、エンジェルはその腕より雷を放った。

 

「っ!」

 

 反応が遅れ、防御手段が取れない。

 その攻撃は、的確にキャスターを貫いた。

 

「っ……!」

 

 だが、キャスターはまだ倒れない。エンジェルの下で体制を立て直し、傍らの本がパラパラとめくられた。

 

「ミストルティン!」

 

 七本の白い矢が、キャスターの前に発生し、エンジェルへ飛ぶ。

 

「無様だなキャスター! そのような技など……何?」

 

 矢を弾いたエンジェルは、その効力に目を見張る。彼の腕が、剣ごと石になっていたのだ。

 

「貴様!」

 

 さらに、キャスターの攻撃は続く。

 本が新たに導いた魔法。それは、轟雷。

 どこからか手にした、黒い柄。そこより伸びる、大きくて巨大な金の剣はキャスターの動きに応じて周囲に轟雷をまき散らす。

 

「プラズマザンバーブレイカー」

 

 振り下ろされた雷の刃。それは、キャスターの石化した剣を破壊し、エンジェル本体にもダメージを与えた。

 

「ぬおおおおおおおおおお!」

 

 エンジェルの上を取った。

 キャスターは何よりも先に、追撃を優先させる。

 金色の次は桃色の光。天空の星々より集う光が、キャスターの前に集積されていく。

 だが、すでにエンジェルは翼で復帰している。

 

「なかなかやるではないか。シーイックオーブ 天装」

 

 青い宝珠で、右手の石化を解除したエンジェルは、そのままこちらへ攻め入る。

 キャスターは眉をひそめながらも、告げた。

 

「スターライト……」

「甘い!」

 

 エンジェルが指をパチンと鳴らす。

 

「……?」

 

 その意図を、キャスターは図ることができなかった。

 そして、それがキャスターの失態となった。

 

「っ!」

 

 キャスターの周囲を、白、黒、金の柱が覆った。ゆっくりと回転するそれは、キャスターを中心に回る衛星のようだった。

 

「これは……?」

「何、私の(しもべ)の亡骸だ」

 

 エンジェルはほくそ笑む。

 だが、キャスターは構わず、再び光線を発射しようとする。だが、

 

「さあ、やれ! ナモノガタリ! バリ・ボル・ダラ! ロー・オー・ザ・リー!」

 

 三本の柱は、それぞれが正三角形を描く位置に固定された。

 危険を予知したキャスターは、技を中断して白と金の柱へ向けて手を伸ばす。

 だが、遅かった。

 

「スカイックオーブ 天装」

 

 赤い宝珠。それは、エンジェルの胸の窪みに吸い込まれると、赤い風とともに鎖となり、キャスターを縛った。

 同時に、チャージが完了した桃色の星の集いが消滅。桃色の光が空中に分解されていった。

 

「こんなもの……ん?」

 

 外見の強度と実際の強度が釣り合わない。

 顔をしかめたキャスターへ、エンジェルが雄弁に語った。

 

「無駄だ。それはただの鎖ではない。魔力の封印術だ」

「封印……?」

 

 キャスターは目を凝らして鎖を見る。自らの黒い魔力が、鎖に吸い込まれていくのが見えた。

 

「くっ……」

「今だ……私の目的の体験版だ。栄誉と思え」

「目的?」

 

 だがエンジェルはそれ以上語ることはなく、「やれ」と三本の柱へ命じた。

 すると、三本の柱は回転の速度を速める。それは風、地、水のエネルギーを発しながら、三角錐の結界となり、キャスターを閉じ込める。

 

「何っ!?」

 

 キャスターはその水色の結界を叩く。だが、キャスターにとって未知の物質でできたそれは、キャスターの手では破壊することができなかった。

 

「ふはははははは! それでは、もらおうか。貴様のオーパーツを!」

 

 エンジェルの狙いは、常にキャスターの傍らに浮いている魔道具本。そう。浮いているからこそ、三角錐の封印には巻き込まれず、無防備なその姿を宙に浮かせていた。

 

「しまった……!」

「はあっ!」

 

 エンジェルが剣で本を切り裂く。

 頑丈さもあった本は幸いして、破壊されることはなかった。だが、パラパラとめくられたうち、一枚のページが本を離れ、エンジェルのもとに収まる。

 

「もらっていくぞ。ダイナソーのオーパーツを」

 

 エンジェルが見せたそれは、恐竜の頭骨が描かれたページ。やがて白い光とともにページは消滅し、変わりに描かれていた恐竜のオーパーツがエンジェルの手に置かれた。

 

「貴様はここで、ムー大陸が我がマスターの手に落ちるのを、指をくわえて見ているがいい」

 

 エンジェルはそのまま、笑い声を上げながらどこかへ飛び去って行った。

 

「……っ!」

 

 閉じ込められたままのキャスターには、彼を追撃することも、ここから動くこともできなかった。

 

 

 

「バリィ!」

 

 バングレイの斬撃が青い偃月となって飛ぶ。

 ビーストはスライディングで避けながら、バングレイに肉薄。

 

「いい加減にしやがれ!」

 

 ビーストはそのまま、連続蹴りでバングレイを攻撃する。だが、まったく動じないバングレイは、それをむしろ受け流し、ビーストの顎を殴り上げた。

 

「がっ!」

 

 両足を大きく広げて大きく背中を地面にぶつけるビースト。そんなビーストの体を飛び越えて、ブライがバングレイへ迫る。

 

「ムーの力は、キサマのようなつまらない奴が手にしていい代物ではない」

「ケッ! とっくの昔の化石じゃねえか。俺が、有効利用してやろうって言ってんだろうが!」

 

 そのままブライとバングレイは斬り合う。ブライの素早くも力強い剣は、徐々にバングレイを追い詰めていく。

 

「やるじゃねえか……ブライの力、俺も欲しくなっちまったぜ」

「キサマには、永遠に手に入ることはないものだ」

 

 ブライはバングレイの剣を防ぎながら、右手に紫の光をため込む。

 ゼロ距離で放たれた光の拳は、そのままバングレイを弾き飛ばし、地面を転がした。

 

「バリッ!」

 

 転がったバングレイへ、さらにブライは追撃する。両手で剣を振り上げ、重圧とともに振り下ろす。

 起き上がったバングレイには、防ぐことはできない。剣と、それによって地面から噴き出る衝撃波を受け、大爆発を起こした。

 

「……ふん……」

 

 爆炎により、姿がみえなくなったバングレイ。

 ブライはそれを見届けると、ビーストにも剣先を向けた。

 

「お、おいおいおい! なんでこっちにまで向けてんだよ!?」

「キサマも、俺の敵だからだ」

「いやいやいや! 俺たちさっき話してたこと忘れたのか? 俺はお前が知りたがっていたことを言った。んで、次はお前が俺の質問に応える番。そこにあの宇宙人が割り込んできただけだろ?」

「……」

 

 ブライは冷たい眼差しでビーストを睨む。

 そして。

 

「まだ終わってねえんだよなあ!」

 

 爆炎より現れたバングレイが、ブライを背中から斬りつけた。

 

「!?」

 

 倒したと勘違いした油断からだろう。無防備な背中を切られ、ブライは痛みに悶絶していた。

 さらに、そんなブライの頭を掴んだバングレイは、彼の体をビーストに投げつける。

 

「ぐおっ!」

 

 しりもちをついたビーストはバングレイが「いい記憶だ」と笑っているのを見た。

 

「おい、ブライさんよぉ。お前、バリいい記憶持ってるじゃねえか」

「何……?」

 

 バングレイは右手を鎌で叩く。その時、ビーストは彼が記憶を読み取る能力を持っていることを思い出した。

 

「なるほどなあ……了解了解。バリ分かったぜ。お前がブライな理由もな」

「!」 

「あるんだろ? ……そこ・・に……?」

「キサマ……!」

「バリバリ……」

 

 バングレイが、その六つの目をさらに歪める。

 

「ムー大陸が……眠ってるんだろ?」

「キサマああああああああああああ!」

 

 ブライがビーストを突き飛ばし、バングレイへ挑む。だが、先ほどとは打って変わって冷静さを欠いているブライだ。

 もともと戦闘能力が高いバングレイは、いとも簡単にブライを突き飛ばし、その体に切れ込みを入れる。蹴り飛ばし倒れたと同時にその首を掴んだ。

 

「ぐあっ……!」

「ソロ! この野郎……!」

「お前はコイツの相手でもしてろ!」

 

 バングレイの右手___ブライの掴む手の甲___より青い光があふれる。

 ブライの記憶より再現された敵が、ビーストへ攻撃を開始した。

 盾と剣を持つ、騎士。遺跡の石と石の間を、謎の光で繋いだようなものが、こちらに剣を振り下ろしてきた。

 ビーストがダイスサーベルでその攻撃を防ぐと同時に、ブライが呟いたのが聞こえた。

 

「エランド……だと……?」

「エランド?」

 

 ブライがエランドと呼称した戦士と戦いながらも、ビーストのしり目ではバングレイの締め付けが続く。

 

「バリバリ。シノビは頂くぜ」

「キサマに……渡さない!」

「バリバリ。そいつはご苦労なこった。だがな、狩りはもう終わってんだよ!」

 

 バングレイは、左手と同化している鎌を振るい、首を絞めたままブライの体を切りつける。

 

「ソロ!」

 

 助けに行こうとするが、エランドの効率を重視した動きにビーストは防戦一方になる。しかも、距離を取ればその中心部より光線が放たれ、アスファルトを焼き尽くしていく。

 

「バリバリバリ! お前は果たして、何回耐えられんのかな!?」

 

 バングレイは手を放すことなく、何度も何度もブライの体を切り刻む。その都度ブライの体から火花が散り、ブライの呻き声が聞こえる。

 やがて、その声が聞こえなくなった。

 見れば、バングレイに首を絞められているブライは、変身を解除し、ソロの姿に戻っていた。

 

「ソロ!」

 

 だが、駆けつけようとするも、ソロの記憶より再現されたエランドの猛攻を、ビーストは無視できない。少しずつ、ビーストはソロから離れていく。

 

「もらうぜ。シノビのオーパーツをなあ!」

 

 バングレイはソロの体を地面に乱暴に落とす。

 すでに気絶したソロの体より、手裏剣の形をした緑の石がこぼれた。

 

「オーパーツ。頂きぃ!」

「クソがあ!」

 

 バッファローマントを装備したビーストは地面を叩く。発生した衝撃で、エランドは耐性を崩した。

 

「うおおおおおおおおおおおおおお!」

 

 そのまま、バッファローの力をもって突進。エランドが盾を用意するよりも先にその体を貫き爆散。そのままビーストは、バングレイに向かっても直進した。

 だが、目的のものを入手したバングレイは、静かにビーストを見つめていた。

 そして。

 

「狩りは、終わった後も気を付けるってのが、狩人の鉄則なんだよ」

 

 バッファローの頭部部分をかがんでよけ、逆にビーストの腹に二本の剣で斬り裂く。

 

「バリ」

「な……」

 

 バングレイを通り越して、ビーストの足は止まった。

 そして同時に、勝負は決してしまった。

 ビーストの全身より散る火花。ビーストは自らの体を支えることができず、雪道に倒れてしまった。

 

「バリ楽しい狩りだったぜ? ビースト」

 

 コウスケに戻り、顔を上げる。

 バングレイは、シノビのオーパーツを持ちながら、コウスケの目の前にしゃがんだ。

 

「また遊ぼうぜ? その時はまた、ウィザードやら他のやつらを連れて来いよ」

「待て……!」

 

 そのまま歩み去ろうとしたバングレイの足を、コウスケは掴む。

 

「お前……」

「離せよ。俺は今からベルセルクも狩りに行かなくちゃいけねえんだ」

「! させるか!」

 

 コウスケはバングレイにしがみつく。

 

「行かせねえ! 響のところになんざ、ぜってえに行かせねえぞ!」

「はあ……」

 

 バングレイは深くため息をついた。コウスケの襟首を掴み上げたバングレイは、ぐいとコウスケに顔を近づける。

 

「俺の狩りだ。何を狩ろうが勝手だろ」

 

 そして、そのままバングレイはコウスケの腹に蹴りを入れる。

 
「ぶおっ!」

 
 再び雪道に倒れるコウスケ。

 
「待ちやがれ……! バングレイ……!」

 
 だが、呻き交じりのコウスケの声を、バングレイが聞き届けるわけがなかった。

 
「あばよ。ビースト。今日はここまでだ」
 

 すでにバングレイの姿は、雪道に見えなくなっていた。 
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