星河の覇皇
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第七十七部第四章 二度目の引き分けその二十四
「マムルークからさながらハーレムのスルタンだ」
「そこまで変わってしまいますね」
「堕落を極め」
「そのうえで」
「彼等はかつては砂漠で盗賊をスポーツと考え蜥蜴を馳走としていた」
アラブと呼ばれる半島にいた頃はというのだ、これはまだイスラム教が勃興したヒジュラかその頃のことだ。
「しかしだ」
「それがですね」
「大きく変わりましたね」
「ササン朝ペルシャを滅ぼしビザンツの豊かな部分の殆どを奪い」
「そうしてですね」
「そうだ、彼等は豊かになった」
一転、というのだ。
「そうしてだ」
「そのうえで、ですね」
「バグダートで栄耀栄華を誇った」
「そうなりましたね」
「そうだ、バグダートで優雅に氷で冷やした家に住み香辛料が効いた肉を食べた」
羊や鶏のそれをだ。
「そうなった、そしてカリフはだ」
「ハールーン=アル=ラシードですね」
「あの伝説のカリフですね」
「アラビアンナイトにも出て来る」
このタイトル通り千話ある物語の五十話程に出て来るカリフだ、尚物語と史実ではその性格が違うのはこのカリフも同じだ。
「しかしですね」
「それでもですね」
「あのカリフがですね」
「堕落していて」
「そしてですね」
「そうだ、とてもだ」
到底というのだ。
「あのカリフは」
「到底ですね」
「当初のイスラム教徒達とは違いますね」
「ああなった、堕落してだ」
それでというのだ。
「弱くもなっていった」
「そうですね」
「それではですね」
「彼等はまた繰り返す」
「そうなりますね」
「そうだ、豊かさに溺れる者達は強くなれない」
准将は断言した。
「餓えた狼は満ち足りた場所では犬にも劣ってしまう、しかしだ」
「そこをですね」
「我々は逆に学ぶ」
「反面教師として」
「そうしていきますね」
「栄養が満ち足りた狼が実戦さながらの訓練と教育で鍛えられてだ」
今度はこう言った准将だった。
「そしてだ」
「その強い軍隊がですね」
「我がエウロパの国土と民衆を守り」
「敵を退けるのですね」
「そうなっていく、我々はな」
こう言ってだ、今は休むがそれでもだった。
彼等はオムダーマン軍とティムール軍の戦闘を観ていた、それは彼等にしても国家の為に行っていたが。
アッディーンは全てを賭けていた、それで戦場において采配を執りつつそのうえで言うことがあった。
自軍の動きを見てだ、彼は言った。
「最早だ」
「はい、今回もですね」
「限界ですね」
「将兵の疲労も損害も」
「その両方を見て」
「これ以上の戦闘は無理だ」
それを行う限界が来たというのだ。
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