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ロックマンX~Vermilion Warrior~

作者:setuna
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Mission:6 月と天使と怪盗

マッシモとナナを仲間に加え、レジスタンスのリベリオンに対抗する戦力も整いつつあった。

セントラルタワーのレプリロイド達も、レジスタンスがリベリオン幹部を2体も撃破したことで活気付いていた。

[ねえねえ、最近、セントラルタワーのレプリロイド達が活気付いてるね]

「今まで敗戦続きだったレジスタンスがリベリオン幹部を2体も撃破すれば当然のことだと思うがな」

「このまま順調にやれれば良いんだけど…それにしてもお前達も特別製のフォースメタルを持っているんだな」

フォースメタルのメンテナンスをレジスタンスの技術者達に頼んでいたエックス達はスパイダーやマッシモが渡したフォースメタルが汎用のフォースメタルではないことにすぐに気付いた。

「ああ、俺のフォースメタルはマッシモ師匠から貰った“ザ・マッシモ”と言ってな。俺の戦闘スペックを底上げしてくれるんだ」

「俺のフォースメタルは“ブラフ”って言ってな。相手の電子頭脳に干渉して、相手の視覚とかを誤魔化すことが出来る。」

「へえ…」

「昔、ギガンティスでは、高性能な戦闘型レプリロイドには特別製のフォースメタルが渡されるんだ。俺も造られた時にこいつを渡されたんだ。こいつの師匠も多分そうだろ。多分実験的な意味合いが強かったんだろうが」

「フォースメタル…宇宙から飛来した鉱石…これのおかげでエネルギー問題は解決したけど、これによって新たな問題が出るのも考え物だな」

フォースメタルを利用した犯罪も増えているし、エックスが頭を痛めることはまだまだ続きそうである。

[そう言えば、ルナは今頃何してるんだろうね]

フォースメタルを利用したエネルギー機関を造り出した天才レプリロイドのルナは何をしているのだろうか?

「あいつのことだ。自分のやりたいことをしているに決まっている」

ゼロの言葉が的中していたことを知ることになるのは今から数時間後である。

そして一方、アクセルと共にギガンティスに訪れていたルナは目的地としていた研究所を発見し、意気揚々と向かっていた。

「フォースメタルの研究で有名なガウディル博士…これは会わねえと損だろ!」

1人の技術者として会いたいと思う人物がこの研究所にいるのだから行かない理由はない。

ここに知り合いの誰かがいればアポイント云々の話になっただろうが、運悪くここに彼女の知り合いはいない。

そして場所はセントラルタワーに戻り、モニタールームでは一同全員が集まっていた。

[えっと、今回お父さん達の任務はガウディル研究所にいるガウディル博士に会って、協力をしてくれるように頼んで欲しいんだって]

「ガウディル博士…?」

[うん、これがそのガウディル博士]

早速モニターにガウディル博士の姿が映る。

「…カモノハシ…?」

[カモノハシ型のレプリロイドだよ。ガウディル博士はギガンティス屈指の研究者で、あらゆるエネルギー理論のスペシャリストだったんだって]

「だったって…現在は?」

[ん~、自分の研究成果の悪用を恐れて今では政府との接触まで拒み続けてるんだって、だから…]

「大量の侵入者排除のための仕掛けが施された研究所に俺達に行けということか?」

[そういうことになっちゃうよね、お父さんがいるんだから警備システム突破は楽でしょ?それにゼロは忍び部隊の隊長さんなんだからさ。こういうのはそれなりに得意でしょ?]

こうしてエックス達は転送システムに乗り込み、ガウディル研究所に向かうのだった。

一方でガウディル研究所に正面から入ってきたルナ。

「すんませーん。アポイント取ってませんけどガウディル博士いますかー?」

声を出すが、当然反応はない。

「誰もいない…仕方ない…勝手に見学すっか☆」

帰るという選択肢は彼女には存在しないらしく、ガウディル研究所を無断で見学することにした。

「やっぱりこの研究所には色んな物があるよなあ…噂で聞いたけど、フォースメタルを精製出来るって言うフォースメタルジェネレータは特に見てみたい!絶対に見せてもらうぞ!!」

先に進むと警備システムが作動し、レイダーキラーとキラーマンティスが出て来た。

「あ、やべ!」

戦線から離れて長い彼女はすぐにステルスを駆使して物陰に隠れ、突然消えた反応に警備用メカニロイドは周囲をうろつくが、Aバレットを抜いたルナはメカニロイドの頭部をショットで撃ち抜いた。

「ふう、昔の俺は大暴れしてたらしいけど…やっぱり戦闘より機械弄りの方が良いかな……フォースメタルジェネレータはどこだろ?」

警備システムのメカニロイドを返り討ちにしながら、ルナはフォースメタルジェネレータを求めて、先に突き進む。

それがリベリオンやレジスタンス等の勢力を結果的に助けることになるのだった。

そしてエックス達もガウディル研究所に侵入したのだが、あまりの警備システムの手薄さに逆に違和感を感じていた。

「妙だな、警備が手薄過ぎる」

「思っていたより楽そうだ…と思えばいいのかねえ?」

「いや、これを見ろ。」

ゼロが指差した先には、焼け焦げた跡のある壁。

「かなりの高出力レーザーのようだな。しかも所々に焼け焦げた後がある。恐らく反射レーザーだな」

「反射レーザー……もしかして、いや、まさかな……」

反射レーザーと聞いて脳裏にある人物が浮かんだが、アクセルと一緒にいる彼女がここにいる訳がないと無理やり納得させた。

「おい、あれを見ろ!!」

「え?」

マッシモに叫ばれ、前方を見遣ると、ルナが仕留め損なったメカニロイド達がこちらに迫っていた。

「どうやら俺達よりも先に侵入した奴が仕留め損なったようだな」

「チッ、俺達は後片付けを押し付けられんのかよ!」

「言ってる場合じゃない!早くメカニロイドを倒してガウディル博士に会わなければ!!」

ルナの仕留め損ねたメカニロイドの後始末をするような形ではあるが、エックス達は警備メカニロイドを迎撃し始めた。

一方、エックス達とルナとは別方向を進んでいるレプリロイドがいた。

「それにしても、まさか私の他にも客がいるなんてね。」

桃色のアーマーを身に纏う女性型レプリロイド。

彼女は警備システムを簡単に切り抜け、凄まじいスピードで先に進んでいく。

「もしかしたら、私の同業者かもしれない……これは急がないとね。先にお宝を奪われたらたまらないし」

女性型レプリロイドは走る速度を速める。

一方でルナはステルスを駆使しながらゆっくりかつ慎重に進み、フォースメタルジェネレータの在処を探し続けた。

「あそこかな?」

特別なエネルギー反応を発見したルナはフォースメタルジェネレータかもしれないと思い、満面の笑みを浮かべる。

そして場所はエックス達の目的の人物であるガウディルが自身の研究室で騒いでいた。

「クワックワッ!わ、儂の警備システムがこうも簡単に…シナモンが…フォースメタルジェネレータがああ…」

「ガウディル」

「渡さん。シナモンは、フォースメタルジェネレータは渡さんクワッ!!」

「ガウディル!!」

「ん?サイケか!何の用だクワッ!今、それどころではないんじゃ!あのままではシナモンが…」

ガウディルが背後を見遣ると、リベリオン幹部の1人である高速演算処理人型レプリロイドのDr.サイケがいた。

「ん?ああ、なるほど。こそ泥にでも入られたか。どおりで何時もより警備が手薄だったわけだな…ん?お前か言っていたシナモンとは確か、フォースメタルジェネレータを搭載したレプリロイドだったな?」

「クワッ!?」

「やはりそうか…ということは私としてもまずい!何としてもそのこそ泥より、フォースメタルジェネレータを確保しなければ!ええい、どこだ!どこの部屋にいる!?ここか?この部屋か!?」

サイケがガウディルを退かして勝手に端末を操作し、フォースメタルジェネレータを搭載したレプリロイドのいる部屋を探す途中で、ルナの他にも入っていた女性型レプリロイドも映る。

「ま、また…侵入者が…」

「なぬ?ええい!もう少しまともな警備システムを用意しろ馬鹿者おっ!!」

居場所を特定したサイケが慌てて研究室を後にした。

そして誰よりも早くフォースメタルジェネレータの在処に辿り着いたルナはワクワクしながら扉を潜る。

「失礼しまーす。フォースメタルジェネレータを見せてくれー」

部屋に入ると、1体の看護型レプリロイドの金髪の少女が不思議そうにルナを見つめていた。

「あれ?」

「えっと…誰ですか?」

見た感じの設定年齢はルナとアクセルと大して変わらないだろう。

看護型レプリロイドは疑問符を浮かべながら、尋ねるが…。

「人に名前を尋ねる時は自分からってのがマナーだぜって言いたいとこだけど、今回勝手に入ってきたの俺だからなあ。俺の名前はルナってんだ。よろしくな♪」

「はい。私はシナモンです」

シナモンと名乗る少女が満面の笑みでルナに歩み寄る。

「へえ~シナモンね。可愛い名前じゃんか。あんた、助手か何かかい?」

「はい、私は博士のお手伝いをしてるんですよ」

「ほう!若いのに大したもんだ。あんたさ、フォースメタルジェネレータってどこにあるのか知ってるかい?俺、ガウディル博士やフォースメタルジェネレータとか見たくて研究所に入ったんだよ。警備システムでエライ目に遭ったけどさ」

「博士なら博士の研究室にいますよ。それからフォースメタルジェネレータならここにありますよ?」

「マジで!?どこどこ!?」

瞳を輝かせながら近寄るルナに、笑みを浮かべながら自身に搭載されたフォースメタルジェネレータを見せてくれた。

「これがフォースメタルジェネレータです」

「これがフォースメタルジェネレータ…あんたの体の中に仕込んでたのか…いくら何でもやりすぎな気がするんだけど……」

「博士は、自分の研究成果の悪用を嫌ってましたから……」

「悪用…(誰だろう…誰か…同じように研究の悪用を嫌っていた人がいたような…思い出せない…凄く凄く…大切な人だったはずなのに…)」

過去の事件の際の後遺症で過去の記憶がないルナはその人物を思い出せずに俯いた。

「あの…大丈夫ですか?どこか痛みますか?」

「え?」

シナモンの声にハッとなったルナは心配そうに自分を見つめるシナモンに笑みを返し、そしてほんの僅かな違和感に気付いた。

「凄く辛そうな顔をしていましたよ」

「あ、ああ!大丈夫だよ。ところで後ろに隠れてる奴、出てこいよ」

「あらら、バレちゃったか」

ルナとシナモンが背後を見遣ると、そこには桃色のアーマーの女性型レプリロイドがいた。

「お友達ですか?」

「いや、初対面」

シナモンの問いにあっさりと返すルナであった。

「あ、私シナモンです。初めまして」

「あ、初めまして、マリノです」

「挨拶返すとは律儀な不法侵入者だな」

「あんたが言えたことかい。あんたも私とやってること変わらないだろ。まさか連邦の有名人が不法侵入とはね」

「まあ、確かに…ん?マリノ…マリノって確か…」

一応不法侵入したことに対する自覚はあったらしい。

「えっと、マリノさんは何をしに来たんですか?」

「あんたのフォースメタルジェネレータってお宝を頂きに来たんだけどさ…」

「まさかフォースメタルジェネレータがシナモンの体に仕込んでたとは思わなかったと…あんた、怪盗マリノだろ?」

「怪盗って何ですか?」

「えっと、簡単に言うなら泥棒だな…まあ、普通の泥棒じゃねえけどな。」

「????」

疑問符を浮かべまくるシナモンにルナは苦笑する。

「怪盗マリノってのは、今の技術では治せないコンピューターウィルスのワクチンプログラムや新しい技術を貧しい国に存在するレプリロイドに無償でやってる義賊らしい。」

「じゃあ良い人なんですか?」

「んー、人格的には良い奴でやってることはアレだから良い悪党か?」

何故かルナはマリノを見遣りながら言う。

「いや、私に言われても困るよ。それにしても参ったねえ。まさかフォースメタルジェネレータがこんな子に搭載されてたなんて…」

フォースメタルジェネレータを頂きに来たマリノだが、まさかお目当てのフォースメタルジェネレータがシナモンに搭載されていたとは思わなかったのだろう。

物凄く困り顔だ。

「流石にハンター所属として人攫いは見逃せねえぞ?」

「私だって人攫いなんかしたかないよ。こうなったらフォースメタルジェネレータの設計図を奪うしか…」

どうにかしてフォースメタルジェネレータを手に入れたいマリノは設計図を頂くことにして考えを決めた時であった。

「危ない!!」

「させるかよ!!」

突如背後からの攻撃をレーザーで相殺するルナ。

「こそ泥かと思ったら、かの有名な技術者のルナ本人だったとはな」

「おい、誰だよあの茸みてえな奴?シナモン、あんたの知り合いか?」

「いいえ」

ハッキリと断言するシナモン。

代わりに答えたのはマリノであった。

「Dr.サイケ。今ギガンティスで暴れ回っているリベリオン幹部の1人さ…。こいつはエライ大物に出会しちゃったね」

「リベリオン…あの反乱組織の幹部…そいつがシナモンに何の用だ?」

「ガウディルの奴が何度説得しても聞き分けがないものでな、そこの小娘を人質にすれば、奴も少しは従順になると思ってなあ…」

嫌みな笑みを浮かべながら言うサイケに、ルナはこめかみに青筋を浮かべた。

「よくも俺の前でそんなこと言えるな…そんなことしてみろ。お前の頭に風穴を開けてやるぜ!」

「ほざくな小娘!イービルブラスター!」

「ダブルリフレクトレーザー!!」

サイケのイービルブラスターとルナのダブルリフレクトレーザーがぶつかり合い、威力はリフレクトレーザーが上だったらしく、サイケは勢いよく吹き飛んだ。

「ふう、や、やっぱり無茶はするもんじゃねえな…」

反動で腕が震えているルナ。

前線から遠退いたことで明らかに実力が落ちていた。

「だ、大丈夫ですか…?」

「ああ、ていうか…あんた逃げろよ…狙いあんたなんだから…」

「というか、あいつどんどん手下を出してきたね。こりゃ逃げないとヤバそうだ」

ルナとシナモンを抱えて走り出すマリノ。

「す、凄えな…俺とシナモン抱えて…」

「これでも戦闘型…しかも格闘特化型だからね。あんたら軽量型を2人を担ぐくらい訳ないさ。と言うわけで今回は見逃してくれよ?」

「はいはい、俺は何も見てませーん。偶然通りすがったマリノに助けられましたと。命救われて仇で返したくねえもん」

「そうこなきゃ♪」

ルナとシナモンを抱えたマリノは出口を目指して駆けるのであった。

一方、マリノ達が必死にサイケから逃げている最中に警備用メカニロイドと警備システムを突破したエックス達は何とかガウディル博士の研究室に入るとそこにはガウディル博士が拘束されていた。

「ガウディル博士、これは一体?」

急いで駆け寄り、ガウディルの拘束を解きながら、エックスが尋ねるが、ガウディルは聞こえていないのかブツブツと呟いている。

「シナモンが…サイケの奴め、やっぱり最初からシナモンが目当てじゃったのか~!」

「おい、落ち着け。分かるように説明しろ」

「シナモンとかサイケとか何のことだ?リベリオンの奴らかい?」

ゼロとスパイダーの言葉に反応し、ようやくエックス達に気づけたのか、ガウディル博士は目を見開いた。

「な、何じゃお前らは…」

「俺はエックス…リベリオンに抵抗しているイレギュラーハンターです。あなたの協力を得るために来ました。」

「イレギュラーハンター…あの娘の…ならばお断りじゃ!儂は盗人のイレギュラーハンターやリベリオンに協力する気はないクワッ!!」

「盗人だと?」

盗人呼ばわりにゼロの眉間に皺が寄る。

「盗人呼ばわりは言い過ぎじゃないですかね?そりゃあ、イレギュラーハンターが俺達みたいなのと一緒にいるのはおかしいかもしれないけど」

「これを見るクワッ!わしの研究所に無断で入った挙げ句滅茶苦茶にした犯人じゃ!どこからどう見てもお前達の仲間じゃろうが!!」

ガウディル博士がモニターに監視カメラの映像を見せる。

エックスが疑問符を浮かべながらモニターを見ると、次の瞬間、目を見開いた。

「ルナ!?」

「何だと!?何故あいつがこの研究所にいる!あいつは確かアクセルの調査に付き合っていたはずだ!」

モニターの監視カメラの映像に映るルナは正面から入って無断で研究所内を動き回り、警備システムと警備用メカニロイドを迎撃しつつも逃げながら、無断で研究室に入ったりして資料を無断で読み、色々しながらガウディル博士の研究所を荒らして、シナモンの元に向かっていた。

「ルナ…」

「何をしているんだあいつは…」

一部始終を見終えたエックスとゼロは絶え間ない頭痛に襲われ、深い溜め息を吐いた。

「ひょっとして政府からの命令があったのか?」

マッシモがルナの不法侵入の理由の可能性をエックスに尋ねるが、通信が使えないギガンティスでそれは有り得ないだろう。

「いや、違う。恐らく好奇心を抑えきれずに研究所に入って、警備システムや警備用メカニロイドから攻撃を受けたから取り敢えず迎撃したんだろう。彼女も優秀な技術者だからな。こういう場所には目がないんだ。」

「アクセルの調査に付き合っていたはずのあいつがいるということは、アクセルもこの研究所にいるのか?」

「それはない。アクセルがいたら確実に彼女を止めている…恐らく別行動をしているんだろう…良い意味でも悪い意味でも期待を裏切らないな…すみませんガウディル博士。彼女には後で厳しく言っておきます。」

深い溜め息を吐いた後、ガウディル博士に深々と頭を下げるエックスに深い溜め息を吐きながら、スパイダーがガウディル博士に尋ねる。

「まあ、エックス達の仲間のハチャメチャな行動は置いといて。今、大変なことになってんじゃないの?」

「クワッ!そうだった…シナモンが…シナモンがサイケに…リベリオンの奴らに奪われてしまう…」

「詳しく聞かせてもらえますか?博士」

「力になれると思いますぜ!!」

「別に恩着せようなんて考えちゃいないよ。俺達はリベリオンの奴らにチョロチョロされるのが我慢出来ないんだ」

「イレギュラーハンターとしてイレギュラーを放置出来んからな」

こうしてエックス達はルナへの説教も含めてシナモンの救出、保護をすることになった一方でサイケから逃げ続けているマリノ達は…。

「はあ…はあ…」

いくら軽量型とは言え、ルナとシナモンを抱えながら長時間長距離を全力疾走して息切れしているマリノを見て、ルナが顔を顰めた。

「あんた無理し過ぎだよ。少し休んだ方が…」

どう見ても疲れているマリノを見て、休憩するように促すルナだが、目の前に警備用メカニロイドが立ち塞がる。

「おっと…ドジっちまったね…」

疲労で警備システムに引っ掛かってしまい、キラーマンティスとレイダーキラーがマリノとルナに迫る。

「全く、ガウディル博士の噂は聞いちゃいたが、まるで要塞だな。仕方ねえ」

コピー能力の応用のステルスを発動し、姿を眩ますことで死角に潜り込んでからの射撃でメカニロイドを殲滅していく。

「やるじゃないか。」

「コピー能力の応用さ、俺は新世代型になるはずだったレプリロイドのプロトタイプらしいから…さ」

「へえ、あの…コピー能力を持ったレプリロイドって実在したんだねえ!それがあれば私の仕事も捗るし…欲しいなコピーチップ…」

「俺のコピーチップは駄目だ!絶対に駄目だ!!」

咄嗟に頭を押さえて、後退するルナに苦笑しながら後ろを見遣ると、サイケがこちらに追い付いてきた。

「チッ!追い付いて来やがった。逃げるよ!!」

「おう!」

バーニアを噴かしながらルナとシナモンを抱き上げ、逃げるマリノはしばらく走り続けるが、とうとう行き止まりにぶつかる。

「しまったね…」

「くっ…行き止まりか…」

「ようやく追いついたぞ。手間取らせおって、さあ…その小娘を渡せ!大人しく渡せば命だけは助けてやるぞ」

「冗談言うな、お前みたいな如何にも悪人の奴に引き渡すわけねえだろ!」

「私もあんたみたいなのは大嫌いでね。大人しく従う義理なんかない」

パレットとビームナイフを構えながら、戦闘体勢を取る2人を見て、サイケがプレオン達に指示を出そうとした瞬間。

「させん!零式兜割!!」

急いで来たのだろうゼロがハイパーモードを発動しながらバーニアを噴かし、Zセイバーによる回転の勢いを利用した斬り下ろしを繰り出してプレオンを1体を両断する。

「Xコレダー!!」

同じくハイパーモードを発動したエックスもコレダーを叩き込んでプレオンを破壊した。

「え?何でお前らがここにいんの?」

「それはこちらの台詞なんだがな…」

不思議そうに首を傾げるルナにゼロは溜め息を吐いた。

因みにスパイダーとマッシモはガウディルの護衛のために残しておいた。

「さて、ルナ。ガウディル博士の研究所に無断で侵入した挙げ句、研究所を荒らしたことについて色々聞きたいことがあるんだが?」

「いいっ!?」

表面上は穏やかな表情だが、明らかに怒っているのは雰囲気で分かる。

きっとこの後に物凄く怒られることを予想したルナは嫌そうに顔を顰めるが、サイケは苛ただしそうに叫ぶ。

「イレギュラーハンター共か…お前達には我らリベリオンがどれ程、レプリロイドの技術を進歩させ得るか分からぬと言うのか!」

「争いのための技術など!!」

コレダーを構えながら叫ぶエックスに対してサイケも構える。

「お前達と話していても時間の無駄だ!この場で滅してくれる!私自身の手でな!イービル…」

「させるか!零式突破!!」

サイケが攻撃するよりも早くゼロがセイバーによる突きを繰り出して妨害し、マリノとエックスが追撃を繰り出した。

「次は私だよ!ていっ!!」

「チャージコレダー!!」

ナイフによるボディへの攻撃とチャージしたコレダーのエネルギーを炸裂させ、サイケのボディを粉砕した。

「何だ弱いじゃん」

あまりにもあっさりと倒されたことに拍子抜けしたルナは目を見開いた。

「幹部って言っても研究者だからねえ」

「戦闘型ではないんだ。ジャンゴーとホーンドとは比べるまでも…」

「あ、皆さん!上を見て下さい!!」

【?】

シナモンに言われて全員が上を見上げると、サイケの残った頭部が浮かび上がり、電磁迷彩で隠されていた機動兵器と合体した。

「科学者を甘く見るなよ!合体完了!マッドノーチラス!!」

完全に姿を現したそれはまるでオウム貝を彷彿とさせるメカニロイドボディであった。

「が、合体しやがったぞ!?」

「ふん、何かと思えば図体だけの木偶の坊か。今更そんな虚仮威しが通用するか!!零式昇竜斬!!」

バーニアを噴かして一気にマッドノーチラスとの距離を詰めるとジャンプからの斬り上げを繰り出すゼロ。

ハイパーモードで攻撃力を底上げしてるにも関わらず、マッドノーチラスの装甲は多少ヘコんだだけだ。

「ふむ、強烈な一撃を感謝するぞ。これぞ究極のボディじゃ」

「何だと…!?」

「下がるんだゼロ!シェルバスター!!」

コレダーの銃口を向けて炎属性のショットを数発放つものの、マッドノーチラスの装甲はショットの高熱でも僅かに溶解した程度だ。

「その程度で進化した私に敵うと思うのか!デスグラビティ!!」

反撃とばかりにマッドノーチラスは重力弾を放ち、エックス達を吹き飛ばす。

「ぐっ…俺とエックスの攻撃で大してダメージを受けていないとはな…」

「ああ、あのメカニロイドのボディ…何て頑丈な装甲なんだ…早く弱点を見つけないと…」

「あの殻で守られてるのがコアなんじゃないか!?」

シナモンを守っていたルナがマッドノーチラスの殻のような隔壁で守られているコアらしき物を発見し、そこを指差す。

「あれか!なら抉じ開けてやるよ!マリノスタンプ!!」

即座にマリノが隔壁に超スピードでの跳び蹴りを叩き込むが、隔壁は開かない。

「コア放熱開始!」

マッドノーチラスがコアを覆っていた隔壁が開くと、エックス達に向かっていくつものレーザーが放たれた。

「こんな単純な軌道で…何!?」

光線を回避すべく身を捻った瞬間にレーザーが軌道を変えてエックスに炸裂した。

「ぐっ!ホーミングレーザーか…!」

「だが、一発の威力は大したことはない…次にコアを開いた直後を狙うぞ…」

「しかし、そんなに上手く行くか?コアの放熱が始まってからレーザーを放つまでに奴との距離を詰められるだろうか…」

「……」

ゼロの案はかなり良かったものの、コアの放熱からのレーザーの発射までのタイムラグが短すぎてエックスとゼロの機動力では間に合わない。

「ようするにコアの放熱が始まった瞬間に攻撃すりゃ良いんだろ?なら私に任せな」

「何だと?」

マリノが言うとエックスとゼロが疑わしそうに見つめる。

ルナとシナモンを助けてくれたことから悪人ではないのだろうが、信用出来るかは話は別だ。

「エンジェリックエイド!!」

突如エックス達の体を光が包み込み、ダメージが回復していく。

「これは…」

「動かないで下さい。怪我の治りが遅くなります」

シナモンのフォースメタルジェネレータの力でエックス達の自己修復機能が飛躍的に高められ、エックス達をほとんど万全の状態に戻していった。

「ありがとねシナモン!じゃあ、あの隔壁が開いたところを私が攻撃するからあんた達はとどめを任せたよ!」

「ひょ~ひょっひょっ!そんなことが出来るわけがあるまい!コア放熱開始!!」

マリノの言葉を戯れ言だと判断したマッドノーチラスは笑いながら隔壁を開いてコアの放熱を開始した。

「出来るんだよねそれが!ハイパーモード・クイックシルバー!!行くよおっ!!」

髪の色が緑から金色になり、アーマーが黒を基調とした色合いに変化し、より身軽となった姿となる。

次の瞬間にはマリノの姿が消え、マッドノーチラスのコアにナイフによる斬撃をおみまいする。

「は、速え!?」

「そらっ!そらっ!そらっ!そらあっ!!」

ハイパーモード状態のマリノの神速と思わせる程のスピードにエックスとゼロは唖然となるが、チャンスであることを思い出した2人は構えた。

「こいつを喰らいな!ハイパーダイブ!!」

50秒間での連続攻撃とマリノスタンプの強化版の跳び蹴りが炸裂すると、マリノは通常状態に戻り、弱点のコアに立て続けに攻撃を受けたマッドノーチラスは仰け反る。

「き、貴様~!許さんぞ!もうその姿は使えんだろう!これで…」

「終わりだ!貴様がな!」

「砕け散れ!!」

マリノが作ってくれた隙を突いて、ゼロとエックスがそれぞれの必殺技を繰り出す。

「零式昇竜斬!!」

「チャージコレダー!!」

「うぎゃあああああっ!!?わ、私の最高傑作が~っ!!?」

コアを破壊されたマッドノーチラスはこの結果が信じられないのか驚愕の表情を浮かべて爆散した。

マッドノーチラス撃破に安堵の息を吐いた時、スパイダーとマッシモに連れられたガウディルが駆け込んで来た。

「シナモン!」

「博士!」

可愛い娘同然のシナモンの無事にガウディルは安堵し、シナモンもまた親同然のガウディルの姿に破顔した。

そしてシナモンを守ってくれたエックス達に頭を下げる。

「エックス…礼を言う。じゃが、儂はあんたらにもリベリオンにも協力は出来ん。フォースメタルジェネレータを…シナモンを戦いに利用されるわけにはいかんのだクワッ!!」

「ええ…俺も彼女を戦いに巻き込みたくはない…みんな、引き上げよう」

「お、おい…アルには何て言うんだ…?」

「適当な言い訳でも考えればいいだろう。俺達はリベリオンじゃない。本来無関係な一般人を巻き込むわけにはいかない…そうだろうマッシモ?」

「…そう…だな」

「…皆さん…博士、私。皆さんと一緒に戦いたいです!」

「クワッ!?シナモン、何を…」

思わぬシナモンの発言に驚くガウディル。

「ふーん、おいおっさん。最後まで言わせてやれよ」

「私、利用されるんじゃありません。自分で考えたんです。サイケみたいな人を…リベリオンを…放っておいちゃいけないって!だから私、博士から貰ったこの力を役立てたいって…そう思ったんです!」

「…………」

呆然としながら、シナモンを見つめるガウディル。

いつもは聞き分けがよく大人しかった彼女が自分の意思を必死に伝えていた。

「ふっ……はははははっ!」

非常に珍しく声を上げて笑った彼。

エックス達は驚きで何も言えず、シナモンは不思議そうに見ていた。

「まさか今時こんな奴がいるとはな……ふふっ…面白い奴だなお前は………まるで昔のエックス達を見ているようだ。部外者の俺が言うのも何だが、彼女の意思を尊重してやったらどうだガウディル博士?」

「う、うむ…しかし…」

「良いんじゃないの?この娘の出来ないことは俺達がサポートしてやりゃあいい。それが仲間ってもんだろ」

スパイダーに言われ、とうとう諦めたのかガウディル博士は深い溜め息を吐いた後に苦笑を浮かべた。

「仕方ないクワ…」

「博士!」

「ガウディル博士…それじゃあ…」

「ああ、エックス。シナモンの言う通りかもしれん。Dr.サイケはあれでも優秀な研究者じゃった。そんな彼を狂わせてしまうようなリベリオンは…放っておいてはいかんのじゃろうな…」

「博士…」

「ありがとうガウディル博士!これで心強い仲間が…また2人も増えた…」

「2人?3人だろ3人。だよなマリノ?」

「へっ!?私!?な、何でさ、私は確かに共闘したけど、本当ならフォースメタルジェネレータを頂いておさらばしてたんだよ!?」

まさか自分も数に入れられているとは思わなかったマリノは自分を指差しながら驚く。

「でもマリノさんは良い人ですよ。マリノさんは私とルナさんを助けてくれたんです」

「あ、あれは…成り行きみたいな感じで…」

「じゃあ取り引きしようぜ。これなんてどうだい?」

悪どい表情を浮かべて数枚のファイルを渡すルナ。

マリノに耳打ちすると驚いたようにマリノは目を見開いて、ファイルを見つめた後に期待に満ちた目をしているルナとシナモンを交互に見て根負けしたように肩を落とす。

「…仕方ないね、ここまでの報酬と信頼までされちゃ断れないじゃないか…分かったよ。あんたらに雇われてやるさ…怪盗マリノ、あんたらの期待に応えてみせるよ」 

悪戯そうな笑みを浮かべて言うマリノを見たマッシモが一言。

「……美しい」

「お?」

マリノに見惚れているマッシモをニヤリと笑いながら見遣るスパイダー。

「よろしくお願いしますエックスさん!」

「というわけでこれからよろしくな」

シナモンとマリノを交互に見遣りながら、エックスも笑みを浮かべながら頷いた。

「ああ、よろしく。マリノ、シナモン……」

心強い仲間が増えたことにエックスはこれならリベリオンともまともに戦えると確信した。

「ところでルナ、マリノに渡したのは何だ?」

「秘密」

エックスが尋ねるが、ルナは答えなかった。

因みにマリノに渡したのは最新型のワクチンプログラムにフォースメタルを応用したエネルギーのファイルである。

これがバレたらエックスからの説教が待っていることだろう。 
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