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ロックマンX~Vermilion Warrior~

作者:setuna
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Mission:4 友の魂

エールのIDを手に入れたエックスとゼロはレジスタンスの装備品管理室に入り、扉を潜って先へと進む。

道中、メットール、ゼニーフォーラー、アインハンマー等のメカニロイドがいたが、エックスとゼロの100年間で培ってきた連携の前にあっさりと沈黙した。

しばらくメカニロイドを迎撃しながらセントラルタワーの通路を昇っていくともう1つの装備品管理室の前に辿り着き、扉の前にレジスタンスの一員らしきレプリロイドがいた。

「おい」

ゼロがレプリロイドに声をかけると、レプリロイドがこちらを振り返り、目を見開いた。

「エックスに…ゼロ…?ひょっとしてあの、伝説のS級のイレギュラーハンター?頼む!この部屋に囚われている仲間を助けてくれ!!」

助けを求めるレプリロイドにエックスは何時でも攻撃出来るように腕をXバスターに変形させ、ショットを撃てるようにしながら扉に向かう。

「分かった。任せてくれ」

扉を潜り、プレオン・チェイサー2体がこちらに気付く前にゼロがZセイバーを構えて距離を詰めていた。

「零式突破!!」

ダッシュで距離を詰めながら繰り出されたセイバーによる突き。

その一撃は強烈で、高い耐久力を誇るはずのプレオン・チェイサーを容易く撃破した。

「なっ!?エックスとゼロだと!?」

「喰らえ!!」

ゼロに気を取られてた最後の1体にエックスがショットを放った。

放たれたショットをまともに受けたプレオン・チェイサーは頭部を吹き飛ばされたことによって機能を停止した。

エックスとゼロは他にリベリオン兵がいないことを確認してから扉を開けた。

一方で、エックス達がプレオン・チェイサー達を倒した直後、それをモニタールームのモニターで見ていたレプリロイドがいた。

リベリオン幹部の1人にして高機動山猫型レプリロイド…ワイルド・ジャンゴー。

「ふん、小賢しい!だが、流石は伝説になったイレギュラーハンターなだけのことはあるニャ!!」

「一般兵士くらいじゃ荷が重いか?」

「ニャ!?スパイダー…お前なら奴らを倒せると言うのか!?」

先程まではいなかったはずの、いつの間にかいたエックスとゼロと戦ったスパイダーに対して、ジャンゴーは不機嫌そうに尋ねる。

「報酬は?」

ジャンゴーの問いに対してスパイダーは必要以上な会話はせずにエックスとゼロを倒した際の賞金を尋ねる。

「ハッ!金の話か!?良かろう!貴様がエックスとゼロを止めたら欲しいだけくれてやろう!いずれ我らリベリオンはレプリロイドの天下を取る!そうなれば金など好きなように出来るわ!!」

笑いながら言うジャンゴーに対してスパイダーは静かに口を開く。

「あんたらの天下に興味はないが…欲しいだけ貰えるってのは悪くない」

それだけ言うと、スパイダーは踵を返してモニタールームを後にした。

そして場所は武器管理室に戻り、エックスとゼロの口から聞かされたエールの最期に、レジスタンスのメンバー達が目を見開いていた。

「そうか…エールが…奴はアル長官に拾われて以来、彼を親のように慕っていたからな…エックス、ゼロ。これを持って行ってくれ、アル長官が捕まっているデータバックアップ室の鍵だ」

カードキーをエックスに差し出すレジスタンスメンバー。

「頼む…アル長官を助けてくれ…そして、エールの仇を…」

「無論だ」

その言葉にエックスとゼロは力強く頷いた。

自分達を進ませるために犠牲となったエールの魂に応えるためにも必ずアル長官を救うと心に誓う。

「エックス、行くぞ」

「ああ」

幸運にもレジスタンスのメンバーが扱っていた武器を売ってくれた。

ゼロが扱えるようなセイバー系の武器は無かったが、エックスのバスターに炎属性を付加させるチップを売ってくれた。

このチップをバスターに組み込むことでバスターを炎属性のショットを撃てるファイアバスターに変形出来るようになる。

気のせいかやたらチップの値段が高かったが、セントラルタワーを占領しているのはリベリオン幹部のワイルド・ジャンゴーは雷属性のレプリロイド。

ここのプレオンには雷属性を持つタイプもいるらしいので炎属性のファイアバスターが非常に役立つ。

「喰らえ!」

早速ファイアバスターの炎属性の超高温ショットによる攻撃は雷属性を持ったプレオン・スパークに有効で通常よりも早く片付いた。

「カゲロウ起動!」

ゼロ専用装備の半実体のエネルギー分身を生み出すカゲロウを使い、セイバーによる連続攻撃を繰り出す。

分身もゼロの動きを追うようにして動き、プレオン・チェイサーを瞬く間に破壊する。

こうして戦っているうちにエックス達はパネルのある扉を見つけ、操作する前にIDを使わなければならないらしく、エールのIDを翳そうとした瞬間だった。

「っ!?」

IDを翳そうとしたエックスの真横の壁に見覚えのあるカードが突き刺さったのは。

「大したご活躍だなエックス、ゼロ…おかげで良い稼ぎになりそうだ!」

「貴様は…」

「賞金稼ぎ…!」

ゼロとエックスが即座にセイバーとバスターを構えた。

「スパイダーって呼んでくれ。あんたらが暴れまくったおかげで今やあんたらの首には法外な賞金がかけられてるんだ。あんたらの首…貰うぜ?」

「やってみろ、イレギュラーめ。エックス、こいつは俺に任せて先に行け」

「しかし、ゼロ…こいつは…」

「最初の時と違って相手の手の内は大体把握した。前のようには行かない」

「あ…」

ゼロには相手の戦闘パターンを解析し、強化するラーニングシステムがある。

それによってスパイダーのことをある程度把握出来たはずだ。

「行け、エックス」

「分かった!」

「ん?」

エックスの掌に納まっている球体を見たスパイダーの目が驚愕に見開かれた。

「あのIDは…まさか…!?」

「何をぼんやりしている!」

驚愕しているスパイダーに対してゼロはセイバーで横薙ぎするが、スパイダーはそれを後ろに跳んでかわす。

「あのIDはあいつの…あんたは後回しだ。今はエックスを追いかけさせて貰うぜ!」

「やれるものならやってみろイレギュラー!」

カウンターカードのバリアで逆に自分の攻撃がスパイダーのエネルギーにされてしまうために、ゼロはバリアに気を付けながら接近戦を挑む。

「なるほど、流石は伝説のイレギュラーハンターさんだ。そう簡単にはやられてはくれないか」

ゼロのセイバーの斬撃をかわしながら、カードボムを放つ。

先程なら回避出来なかったが、ゼロはこの短時間で進化している。

「遅いな!」

「なっ!?」

カードボムの連射を容易く回避したゼロにスパイダーが目を見開いた。

「イレギュラー…いや、スパイダー。お前の実力は大した物だ。並み居るレプリロイドの中でもS級ハンタークラスに相当する桁違いの戦闘力の持ち主。そいつは認めてやろう。だが、お前はあの時ミスを犯した。あの時お前は警報が鳴った時にとどめを刺さずに去った。それにより俺のラーニングシステムでお前の動きなどを完全に把握させてしまった。」

「成る程、噂のラーニングシステムか…想像以上に厄介な代物だな…」

「一気に決着を付ける!ハイパーモード・ブラックゼロ!」

ゼロのアーマーが漆黒に変化し、髪色も銀色に変化する。

「フォーチュンカード…ストレート!!」

スパイダーのカードスリットからカードボムが連射されるが、ゼロはその軌道をラーニングシステムで把握するとそれを回避する。

バーニアを噴かしてスパイダーに肉薄し、ゼロの拳がスパイダーの顔面に迫る。

スパイダーは顔を逸らしてかわそうとするが、即座にゼロの手がスパイダーの首を掴む。

「ぐっ!?」

「残念だったな、この姿の俺はパワーとスピードが向上する。今のお前のスピードでは避けられんぞ!」

「くっ!!」

スパイダーは咄嗟にゼロの腹部に蹴りを入れ、何とか離れることに成功した。

しかし、まさかラーニングシステムによる強化により両者の実力差はひっくり返されていた。

「今更、エックスを追っても追い付けないか…あんたに聞きたいことがある。」

「?」

「あのエックスが持っていたID…どこで手に入れた?」

「イレギュラーである貴様には関係のないことだ」

敵に情報を売り渡す馬鹿はいない。

ゼロはスパイダーの言葉を無視してセイバーを構えようとした。

「関係?大有りだね。あのID…あいつの…エールの物だろう?下半身がないレプリロイドの」

「何?」

何故スパイダーがエールのことを知っているのだろう?

スパイダーはスパイダーでゼロの反応を見て、エックスの持っていたIDがエールの物だと悟ったのだろう。

少しだけ目を閉じた後、口を開いた。

「やっぱりそうか…エックスがエールのIDを持っているということは……あいつ…また怪我したのか?それとも………死んだ…のか?」

「エールは…死んだ。俺達を先に進ませるためにIDを俺達に託して、リベリオン兵と戦って死んだ。アル長官を救い、リベリオンを打ち倒すという信念のためにな」

それを聞くとスパイダーの全身から戦闘意欲が失せていた。

「そうか…はは…どこまでも底抜けのお人好しのあいつらしいよな…。」

エールの最期を聞いて苦笑しながらゼロに背を向けるスパイダー。

「お前はエールと…」

「悪いが、この仕事は降りるぜジャンゴーさんよ。」

ゼロが聞く前に監視カメラに向けて言い放つと、ジャンゴーの怒鳴り声が聞こえてきた。

『ニャニャ!賞金稼ぎめ!勝手な真似を!全警備兵出動!奴ら全員始末しろニャ!』

監視カメラからの怒鳴り声の命令に、複数のプレオン・チェイサーがこちらに向かってくる。

「俺は確かにイレギュラーと言われても仕方ない賞金稼ぎなんかしているがね。友の魂に恥じる仕事だけは絶対にしない。」

踵を返し、ゼロに背中を向けながらスパイダーは言葉を続ける。

「こっちは帰るついでに掃除していってやるから……さっさとアルさんとやらを助けに行くんだな!」

「おい、待てスパイダー!お前はまさかエールの…」

ふと、壁に刺さったカードを見遣ると、ジャックのカードにはエールの絵があった。

もしかしたらスパイダーはエールの…。

いや、考えている暇はない。

早くエックスと合流しなければと、扉を潜る。

そして先に進んだエックスもアル長官を監視していたプレオン・スパークを撃破し、アル長官を救出していた。

「アル長官ですね?助けに来ました」

「ありがとう…君は…?」

目の前にいる蒼いアーマーを身に纏う青年は、自分を慕ってくれていた青年と設定年齢はさほど変わらないだろう。

あの青年は無事だろうか?

「俺はエックス。政府から派遣された、イレギュラーハンターです」

「君がエックス…!そうか…!」

蒼き英雄・エックスの名は、紅の破壊神・ゼロ、朱き舞姫・ルインと同じ、レプリロイドなら知らない者など存在しない。

「それで、レジスタンスは?私の仲間達は?」

「ここまでに囚われていた何名かは救助しましたが、後は襲撃された際に散り散りになったようです。…それと……エールが自分を犠牲に……俺とゼロをここまで導いてくれました…」

「エール…彼が…!?」

アルがエールの死に驚愕した時、モニターにジャンゴーの姿が映った。

『ふん!アルよ!リベリオンに協力しようという気はないようだニャ!!』

一部の動物型レプリロイドの特徴の1つでもある独特な話し方をするジャンゴーの見下すような声色にアルはモニターに映るジャンゴーを睨み据えた。

「言ったはずだぞ!例えバラバラに解体されたとしても、ネジの1本までお前達に抵抗するとな!」

『いずれ全レプリロイドを平定する我々に逆らうとは、どこまでも愚かな奴らよ!アル、エックス!ふん、だが、もういい。貴様らと…』

ジャンゴーは一旦言葉を切って画面の外から何かを引っ張り出すと、それを見たエックスが目を見開いた。

「スパイダー!?どうしてスパイダーがジャンゴーに…?」

ゼロと戦っているはずのスパイダーがジャンゴーにやられていることにエックスは驚く。

「奴はリベリオンとの契約を破棄し、ジャンゴーに戦いを挑んだんだろう。エールのためにな」

「ゼロ…どういうことなんだ?」

「詳しいことは知らん。だが、恐らくスパイダーとエールは知り合いだったんだろう」

『ついでにこの薄汚い裏切り者も合わせて、この建物ごと吹っ飛ばしてくれるニャ!』

「まさか、自爆装置をっ!?」

『ネジの1本も残さず、消えてなくなるがいいニャ!!』

プツン、と音を立て、モニターの電源が落ちた。

「何ということを…っ!」

「長官!自爆装置の解除方法は!?」

エックスの問いで、アルはハッとなる。

目の前にいる伝説のイレギュラーハンター達なら今から向かっても止められるのではないかと。

「そうだ!ジャンゴーのいたモニタールームへ行けば、装置を止めることが出来る!ここから通信でモニタールームへの道順を案内する!装置を止めてきてくれ!」

頷いたエックスとゼロは、通ってきた道を駆け戻った。

セントラルタワー内のほとんどのリベリオン兵はスパイダーが破壊したらしく、エックスとゼロは生き残ったリベリオン兵を薙ぎ払いつつ、モニタールームに向かう。

途中で複数のビットを従えたプレオンビットマスタがエックスとゼロに襲い掛かる。

「零式昇竜斬!!」

機銃を放とうとしたビットにジャンプしながらの斬り上げを繰り出し、両断する。

「エックス!」

「ああ!チャージショットだ!」

バスターのエネルギーチャージが完了したエックスがチャージショットを放つと、プレオンビットマスタとビットは一瞬で全滅した。

『左手の扉の奥が司令室だ。やはり敵がいるようだな…気を付けろ』

アルからの通信を受けながら、2人は扉を潜って更に奥の扉を潜ると、複数のプレオンがいた。

「レジスタンスか…この自爆装置は止めさせん。装置が起動するまで…我々はやられはせんぞ!!」

「黙れ!イレギュラー共!」

「チャージショット!!」

ゼロがカゲロウを起動しながら突撃し、1体1体にダメージを与えていく。

そしてとどめにチャージショットを放って殲滅した。

エックスは端末を操作して自爆装置を停止させる。

『良くやった。こちらでも自爆装置の停止を確認したぞ。奴は上のフロアにあるヘリポートから脱出するつもりだ!ヘリポートへと繋がる扉のロックを解除しておいた。至急ヘリポートへ向かってくれ!』

「了解!急ごう、ゼロ!」

「ああ、イレギュラーめ!逃がさんぞ!」

エックスとゼロは急いでジャンゴーのいるヘリポートに向かった。

息を切らしながら、エックスとゼロがヘリポートに出るとジャンゴーが怒りに震えていた。

「自爆装置を止めたニャ!?小賢しいイレギュラーハンター共め!」

「ジャンゴー!お前達は間違っている!俺が…倒す!」

「温いニャ!」

ジャンゴーはこちらを振り返るのと同時にこちらに爪による一撃をエックスに喰らわせ、エックスを吹き飛ばした。

「エックス!」

咄嗟に動いてエックスを受け止めるゼロ。

「たかがイレギュラーハンターの2匹如き。この俺に敵うと思うてニャ?…ニャイン?」

ふと、足に何か当たったような感触に下を見ると、それはエールのIDであり、エックス達がどうして総督府を自由に動けたのかの理由に気付いたジャンゴーはそれを拾う。

「ふん、これを鍵にして、建物に入り込んで来たと言うわけニャ」

IDを握り砕こうとした刹那に1枚のカードがジャンゴーの顔面に炸裂した。

「ニャ!?」

「あれは…」

カードボムが飛んできた方向を見遣ると、傷付いたスパイダーが足を引きずりながらゆっくりとこちらに出て来た。

「スパイダー…」

「ジャンゴー…そいつに…あいつの魂に、汚ねえ手で触らないで貰おう。そいつはあんたみたいな、可笑しな野郎が…っ……触って良いような物じゃないっ!!」

スパイダーの激情に促されるようにエックスとゼロも疲弊した体に鞭打ち、力強く立ち上がった。

「イレギュラー、ワイルド・ジャンゴー。イレギュラーハンターとして貴様を処分する!!」

ジャンゴーは雷属性のレプリロイドで炎属性の攻撃が有効なはずだ。

エックスはファイアバスターを構えてショットを放つ。

「小賢しいニャ!!」

ショットをかわしつつ、ジャンゴーはイナズマキャプチャーをゼロに向けて投擲する。

ゼロはセイバーでそれを弾くが、既にジャンゴーは圧倒的なまでの機動力でゼロに肉薄していた。

「っ!」

「電閃ネイル!!」

防御が間に合わないゼロは咄嗟に体を捻ることで直撃を避けたものの、左肩のアーマーが吹き飛ぶ。

「チャージショット!!」

単発の攻撃では避けられると判断したエックスはフルチャージではないが、チャージショットを放つ。

「遅いニャ!」

拡散エネルギー弾のチャージショットを容易くかわしていく。

「何!?」

「エックス、お前の弱点を教えてやるニャ。お前はバスターの充分な威力を発揮するのにチャージに時間が掛かりすぎるのがネックニャ!!」

「がはあっ!」

ブースターによるスピードを上乗せした体当たりをエックスに喰らわせて吹き飛ばす。

「次は貴様ニャ!ズタズタに引き裂いてやるニャ!!」

「トリックスター!」

再びプラズマキャプチャーを投擲するが、スパイダーは自身が使用しているフォースメタル・ブラフの効果で攻撃を空振りさせ、ハイパーモードの電磁迷彩で姿を消す。

「ニャ!?消えただと!!」

「そう言えばこれをあんたに見せるのは初めてだな。これが俺のハイパーモード・トリックスターだ。あんたからは俺の姿は一切見えねえ。」

その上、一時的に攻撃力も向上するから一方的に攻撃し放題と言いたいが、エネルギーの消耗が激しいのと持続時間が短いのが欠点だ。

それに最初のエックスとゼロとの戦いで消耗しているために、普段より持続時間が短い。

「今のうちに…」

スパイダーの考えを察したエックスはバスターのチャージをしながら攻撃のタイミングを計る。

「そらそら、どうしたジャンゴーさんよ?そんなんじゃ当たらないぜ」

カードボムを放ちながら、エックスのエネルギーチャージ完了までの時間を稼ごうとするが、後少しのところでトリックスターが解除されてしまった。

「っ!トリックスターが…」

「そこかニャ!!」

「零式突破!!」

電閃ネイルでスパイダーを八つ裂きにしようとした時、ハイパーモードを発動したゼロがセイバーによる突きによる攻撃で吹き飛ばした。

「ニャにい!?」

「今だエックス!」

「チャージショッ…」

「ニャめるなよ!ドメガサンダー!!」

ジャンゴーが懐から取り出したドメガサンダーと呼ばれるエレメントボムの雷がエックス達に降り注ぐ。

予想外の攻撃にエックス達は膝をついた。

「ドメガサンダー。メガサンダーの強化改良型ニャ。最後に俺のとっておきをくれてやろう!全エネルギー解放!行くニャーーーッ!!」

全身から凄まじい放電現象が起き、勢いよくジャンプすると高速回転をしながら狙いを定める。

狙いはエックスだった。

「エックス…早く…動け…」

「駄目だ…体が…」

バインド状態ではないが、ドメガサンダーの雷により体が痺れて動けない。

「喰らうニャーーーッ!ローリングアサルト!!」

高速回転をしながらエックスに急降下するジャンゴー。

エックスは急降下してくるジャンゴーを見つめながら歯噛みしていた。

3人掛かりでも勝てなかったという事実が、エックスに酷い無力感を味合わせた。

まるで最初のシグマの反乱の時のVAVAとの最初の戦いで味わったそれによく似ていた。

「(ここまでなのか……?)」

エールの魂に応えることも出来ず、イプシロンを倒すことも出来ず、ルインを探すことも出来ず。

「(いや……まだだ!)」

ルインがこの場にいたら絶対に諦めたりはしないだろう。

今までだって自分より強い者達と戦って来たではないか。

VAVA、シグマ、ルミネと言った強者達と。

「(振り絞るんだ自分の可能性を!俺の…いや、俺達の力はこんなものじゃない!)」

ある意味向こうから真っ直ぐ向かってくれるなら寧ろこれは好機でもあった。

エックスは痺れる体を突き動かしながらハイパーモードを発動し、コレダーでジャンゴーの突進を受け止めると、チャージしていたエネルギーをここで解放した。

「チャージコレダーーーーッ!!!」

「ニャアアアアアッ!!」

チャージしていたエネルギーを直接炸裂させられたジャンゴーは悲鳴を上げながら吹き飛ばされ、エックスのコレダーにも無数の亀裂が走った。

「スパイダー、俺に続け!!」

「OK!!」

ジャンゴーに向かっていくゼロとフォーチュンカードを発動したスパイダーがジャンゴーを狙う。

「零式烈斬!!」

「フォーチュンカード…ツーペア!!」

ゼロの連続斬りとスパイダーのカードがジャンゴーに繰り出された。

「ニャ、ニャ…ッ…ニャアアアアアッ!!!」

ジャンゴーの耐久限界を大きく超えたダメージを受けたことにより、ジャンゴーは断末魔の叫びを上げながら爆散した。

ジャンゴーだった部品が地面に転がったのを見て安堵したエックスはハイパーモードを解除して座り込んだ。

戦闘が終わるのを待っていたのか、アルがこちらに駆け寄ってきた。

「ジャンゴーを倒したんだな…エックス、ゼロ」

「ええ、でもスパイダーの協力があったからこそです。」

「そうか…スパイダーさん。私からも礼を言おう。君は我々の仲間、エールのために戦ってくれた。」

アルの礼にスパイダーは何も返さず、静かに口を開いた。

「あいつは…エールは…駆け出しの賞金稼ぎだった頃の俺の相棒だったんだ。俺の下らないミスで…あいつは敵にやられて…」

「そうか…」

エールを偶然拾った時、下半身が失われていた理由を今知ったアルは一瞬だけ遠い目をした後に口を開いた。

「しかし、君がここに居合わせたなんて、大した偶然じゃないか」

「偶然…きっと、エールが俺達を引き合わせてくれたんです」

これは偶然ではない、何かの必然なのだと…そう信じたい。

「そうだな…」

アル長官も同じ気持ちなのだろう、真っ赤に染まった空を見上げた。 
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