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十年同じ場所で

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第一章

               十年同じ場所で
 グーグルマップやグーグルアースにはストリートビュー機能がある。
 これは世界中の道沿いの風景がパノラマ画像で観ることが出来るサービスだ、ある日アメリカネバダ州ラスベガスに住んでいるジェニファー=ベラスケス黒に近い褐色の肌で縮れた長い髪の毛と黒い長い睫毛の目と赤い唇そして一六〇程の背で胸の大きな彼女は。
 そのサービスでラスベガスの街を観ていたが。
 ここであることに気付いて夫のジャック、浅黒い肌で逞しい長身に黒く波がかった髪の毛と顎鬚を生やした黒い目の彼に言った。
「犬がいたわ」
「犬?」
「ここの郊外近くにね」
 そこにというのだ。
「いるけれど」
「犬なら何処にいるだろ」
「それがどうも普通じゃないのよ」
 こう夫に言うのだった。
「何時観てもそこにいるの」
「郊外の近くにか」
「道にね」
「じゃあ野良犬か」
「そうみたいね。野良犬ならね」 
 それならとだ、妻は夫に言った。
「私達犬好きだし」
「ああ、しかも今いないしな」
 夫は妻に残念そうに述べた。
「だからな」
「保護出来て家族に出来るなら」
「そうするか」
「じゃあここ行ってみる?」
「仕事前に行ってみるか」
 二人はこの街でアイスクリーム屋をやっている、美味くてトッピングも多いということで評判になっている。
 その店の開店前にとだ、夫は妻に提案した。
「そうするか」
「ええ、じゃあね」
「明日にでもそこに行くか」
「そうしましょう」
 夫婦で話してだった。
 二人は実際に次の日にその道のところに行った、そして妻はそこにいた茶色の長い毛の大型犬を見て夫に言った。
「この子よ、間違いないわ」
「この犬がか」
「そう、ストリートビューにね」 
 そこにというのだ。
「ずっと映っている子なの」
「そうなんだな」
「野良みたいね」
「何でここにいるんだ?しかも野良なのにな」
 夫はその犬を見て首を傾げさせつつ言った。
「随分とな」
「大人しくて人を怖がらないわね」
「クゥ~~~ン」
 見れば犬は優しい目をしている、黒い光の目は穏やかだ、そして。
 その目には悲しいものがあった、夫はそのことに気付いて妻に言った。
「若しかして捨て犬か」
「そうかも知れないわね」 
 妻もその可能性を感じた。
「ここにずっといるってことは」
「そうね」
「あんた達どうしたんだ?」
 ここでアフリカ系の老人が二人のところにドッグフードと水が入ったそれぞれの皿を持って来て声をかけてきた。
「まさかと思うがこいつの飼い主か?」
「貴方は」
「俺は近所のバイクの修理店の主だよ、パトリック=サマーっていうんだ」
 見れば白髪頭で顔の皺は多い、だが背はかなり高い。
「ずっとその犬の面倒を見ているんだ。うちは女房が犬アレルギーで飼えなくてな」
「そうなの」
「かれこれ十年な」
「十年!?」
 夫婦は老人のその言葉に驚いて思わず声をあげた。
「十年って」
「この子それだけここにいるの」
「前の飼い主が捨てたみたいでな、ここにな」
「それでか」
「十年もここにいるの」
「その十年の間俺が面倒見ていたけれどな」
 それでもとだ、老人は夫婦に口をへの字にして述べた。 
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