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老人とペンギンの絆

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第一章

                老人とペンギンの絆
 ジョアン=ペレイラ=デ=ソウザは煉瓦職人をしていた。
 今は引退してリオデジャネイロの近くの島に移住して漁師をしている。七十一歳になって悠々自適の生活をしている。
 その彼に近所の若い漁師が言ってきた。
「爺さん、ちょっといいか?」
「どうしたんだ?」
 ジョアンは若い漁師に応えた。白髪で皺だらけの顔である。中肉中背の体格である。
「一体」
「ちょっと変わったのがあっちにいるんだよ」
「あっちか」
 若い漁師の指差した方を見た、すると。
 そこは岩の上だった、そこを見て言うのだった。
「じゃあ行くな」
「ああ、それじゃあな」
 若い漁師も言ってだった。
 それで二人でそこに行くとだった。
 岩の上にペンギンがいた、そのペンギンはオイル塗れになっていてかなり弱っていた。ジョアンはそのペンギンを見て言った。
「ペンギンか」
「ああ、こっちにも来るんだな」
「みたいだな、はじめて見たな」
 この島に来てとだ、ジョアンは若い漁師に答えた。
「本当に」
「俺もだよ、まさかな」
「この島にかい」
「ペンギンが来るなんてな、けれど来ることもな」
「あるか」
「アルゼンチンに来るからな」
 ペンギンはというのだ。
「それならな」
「ブラジルに来てもか」
「おかしくないだろ」
「そうなんだな」
「まあ兎に角弱ってるからな」
 それでとだ、ジョアンは若い漁師に答えた。
「すぐに助けような」
「オイル落としてか」
「そうしてな」
 こう言ってだった。
 ジョアンはペンギンを抱き上げてそうしてだった。 
 家に連れて帰ってオイルを丁寧に落としてからそのうえで雄だった彼に魚をやり獣医にも診せて仕事をしつつ看病をした。
 名前も付けた、名前はディンディンとしたが。
 彼がすっかり元気になったところでジョアンは言った。
「もうな」
「元気になったからか」
「海に戻してやるか」
「自然に帰すんだな」
「ああ、もうな」
 それこそというのだ。
「いい頃だろ、元気になったしな」
「そうか、ずっと一緒にいないんだな」
「こいつは自然の中にいたんだ、だったらな」
「自然に帰るのが一番いいか」
「だからな」 
 それ故にというのだ。
「ここはな」
「そうか、じゃあな」
「ああ、こいつはな」
「自然に戻すか」
「そうするな」 
 元気になって家の中を歩き回っているディンディンを見て話した、そうしてだった。
 実際に彼を海に戻した、すると彼は元気に泳いでその中に消えていった。ジョアンはそれを見送ってから若い漁師に話した。
「これでな」
「ああ、ディンディンはか」
「戻るべき場所に戻ったからな」
「よかったか」
「ああ、じゃあ寝るか」
「明日も仕事だしな」
「だからな」
 それでというのだ。
「今日はもう寝てな」
「それで明日も日の出の前からな」
「働こうな」
「そうしような」
 こう話してそうしてだった。
 ジョアンは自宅に戻って寝た、そして次の日は仕事をしてだった。 
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