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イベリス

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第一話 卒業してその四

「とんでもないことになるから」
「最初からよね」
「そう、付き合ったら駄目よ」
「やっぱりそうよね」
「夢ちゃんはそうしたところはしっかりしているけれど」
 それでもというのだ。
「やっぱりね」
「そうした人には気をつけることね」
「学校の外でもね、東京はそんな人も多いから」
 それだけにというのだ。
「いいわね」
「私も東京で生まれ育ってるから」
 咲も母に答えた、答えつつマカロニグラタンを食べる。
「だからね」
「わかってるでしょ」
「ええ」
 その通りだと答えた。
「もうね」
「だったらね」
「高校に入っても」
「胡散臭い人には声をかけられてもね」
「近寄らないことね」
「そこは気をつけてね、学校でも外でもね」
 両方でというのだ。
「気をつけてね」
「そうしていくわね」
「絶対にね」
「高校は賑やかなところにあるしな」
 父は娘がこれから通うその学校の話をした。
「東京の中心に近くてな」
「そうよね」
「渋谷にも近いだろ」
「もうすぐそこね」
「あそこもな」
 渋谷もというのだ。
「色々あるからな」
「胡散臭い人も多いから」
「注意してな」
「学校にも行くことね」
「ああ、そうしろ」
 父は唐揚げを食べつつ言った。
「いいな」
「わかったわ」
「あと痴漢がいたら」
 母は厳しい顔で言ってきた。
「もう手をコンパスの針でも使ってね」
「ブスリなの」
「そうしてやるのよ、いいわね」
「それじゃあね」
「あとね、スカートは短くしても」
 制服のそれはというのだ、母は昨今の女子高生が制服のスカートを短くしてファッションにしていることから娘に話した。
「用心しなさい」
「痴漢については」
「だからよ」
「若し触ってきたら」
「もうね」 
 この時はというのだ。
「コンパスか何かでな」
「ブスリね」
「そうしなさいよ、もう容赦は無用だから」 
 痴漢にはというのだ。
「いいわね」
「そこまでしていいのね」
「冤罪の人間違えて通報したら大変だけれど」
「刺すのならなの」
「触ってきたらね。そうした相手も犯罪だから」
「そこで退くから」
「そうしてやることよ」
 こう娘に言うのだった。
「いいわね、あと寒かったら」
「その時は?」
「スカートの下にスパッツでも半ズボンでもね」
「穿くといいのに」
「冷えない様にね、兎に角胡散臭い人には注意」
 母は娘にしつこいまでに話した。 
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