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DQ3 そして現実へ…  (リュカ伝その2)

作者:あちゃ
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大切な

<サマンオサ南の洞窟>

一行はラーの鏡の上に空いた落とし穴を目指し、宝箱が無造作に設置されているフロアへと戻ってきた…
まるで一行の二度手間を、嘲笑うかの様にモンスターが襲いかかってくる!
前方からは『ガイコツ剣士』が団体で…後方からは『キラーアーマー』・『ガメゴン』・『ベホマスライム』が連携して…
前方のリュカは、ビアンカと協力してガイコツ剣士を駆逐する!
しかし如何せん数が多く、後方へ援護に向かう事が出来ないでいる!
後方のティミーは、アルルと協力し3体のモンスターと対峙する。
今のティミーの実力ならば、苦戦する様な敵では無いのだが、今一歩の所でベホマスライムに回復されて、なかなか倒しきれないでいた!
狭い通路で挟撃される形の為、ウルフは下手に魔法を唱えられず、鋼の剣を構えてマリーを守る事しか出来てない。
しかしながらリュカとティミーの実力と、この洞窟内のモンスターとの力量では勝負にならず、気が付けばモンスターの数も残り僅かになり、リュカ達の勝利は確定していた………そんな時に事件は起きる!

両サイドから敵に襲われ、緊張の面持ちで剣を構えるウルフに守られているマリーは、暇を持て余していた。
気が付けば、直ぐ側に宝箱が1つ…
父の言い付けを守る為、我慢をしてはいたのだが、思いの外長引く戦闘に絶えられなくなり、思わず宝箱を開けてしまう…
ウルフが気付いたのは正にその時だった!
宝箱型のモンスター『ミミック』の鋭い刃がマリーへ襲いかかる!
「マリー!!」

(ザシュ!)
慌ててマリーを押しのけて、ウルフは自身をミミックに差し出した!
ミミックの大きな口がウルフの右半身にかぶりつき、鋭い歯で臓器まで傷つける!
「きゃー!!ウルフ様ー!!」
ウルフは極度の激痛に、その場に倒れ込み動けなくなる…
マリーの悲鳴に気付いたリュカが、最後のガイコツ剣士を倒し娘の元へと駆け寄った!
其処には大量に出血するウルフと、彼の血を全身に浴び嬉しそうに跳ねるミミックが…
リュカの存在に気付いたミミックが、魔法の詠唱に入る…が、発動する前にリュカの会心の一撃によりミミックは粉砕された!

リュカは慌ててウルフの元に近付き、彼を抱き上げベホマを唱える。
幸い怪我から回復までの時間が短かった為、ウルフの命は助かった。
「ごめんなさいウルフ様…私が…」
まだ立つ事の出来ないウルフに近寄り、泣きながら謝るマリー…
マリーの涙を手で拭い、優しく…しかし弱々しく微笑むウルフ。

(パンッ!)
しかし、そんなマリーの頬に平手打ち、厳しく娘を叱るリュカ!
「マリー!!お父さんは宝箱を開けるなと注意したんだぞ!」
生まれて初めて父に叩かれたマリー…生まれた初めて声を荒げた父に叱られるマリー…
自らの行為が、計り知れないほどの危険を孕んでいた事に気付き、涙が止まらなくなる…
「お父さんはね、いい加減に見えても冒険者としては経験を積んできてるんだ!そのお父さんが宝箱は危険だと言ったら、お前はそれを信じないと………お前は、この洞窟内で何が危険かを分かっているつもりなのだろうが、それは違うぞ!一番危険なのは慢心する事だ!『自分は賢いから大丈夫』『自分は守られてるから平気』…そう慢心する事こそがダンジョン内では危険なんだ!」

止め処なく泣き続けるマリー…慰める言葉が出てこないアルル達…
娘の事を大切に思い、仲間の事を大切に思う…だからこそリュカの叱りは止まらない。
そして周囲も止められない…
だが一人だけ、マリーを庇う者が此処に居た。
「リュ、リュカさん……これは…お、俺の…ミスです…マリー…を…叱らないで…く、下さい…」
大量の出血により、口を動かすのすら苦痛なはずなのに、ウルフはマリーの頭を胸に抱き、リュカへマリーの許しを請う。
最後の気力を振り絞ったのだろう…マリーを抱き締めながら気を失うウルフ。

「………ったく………マリー、お前には勿体ないほどの男だな…」
「お、お父様…」
「マリー…今後、お前が心を成長させなければ、お前等二人を認める事は出来ない…ウルフには、もっと素敵な女性が似合うはず。今のお前の様な娘ではなくな!…ウルフの事が本当に好きなのなら、自分自身を成長させろ…身体ではなく心を!…そんな人生を歩んできたお前には、些か難しい事だと覚悟しろ!」




洞窟内の小部屋に陣を取り、ウルフの回復を待つアルル一行…
その間にリュカは一人でラーの鏡を手に入れる為、別行動を始めた。
そして待つ事10時間…
怪我一つしていないリュカが、ラーの鏡を手にアルル達の元へと戻ってきた。

「ただいまぁ…あー、疲れたぁ!」
「お帰りなさいアナタ。食事にします?お風呂にします?それともワ・タ・シ!?」
夫婦のくだらないコントを見せられ、横になっていたウルフが苦しそうに笑う。
「お!笑えるぐらいまでは回復したか!」
「はい、お陰様で……でも、もう勘弁して下さい。笑うと苦しいので…」
「そうか…じゃぁ、後1日は此処で待機だな。ほれ、食べ物を買ってきたから…」
そう言うとリュカは、レバーやほうれん草などの血になりやすい食料を懐から取り出した。
「どうしたんです、これ?」
「え?だから買って来たんだって!」
わざわざ一旦洞窟から出て、買い物をして戻ってくる…
不思議そうなティミーの質問に、さも当たり前の様に答えるリュカ…

最早、気にしようともしないビアンカは、リュカが買ってきた食材を手早く調理し、ウルフへと食べさせる。
薄暗い洞窟内にアットホームな雰囲気を作り出すリュカファミリー。
翌日、ウルフが自力で歩ける様になるまで、この空間は持続した。





<サマンオサ>

ラーの鏡を手に入れたリュカ達は、多少衰弱から回復した本物の国王を連れ、再度城へと乗り込んだ!
正面玄関には、完全武装した特務警備隊が下品な笑みを浮かべて待ち構えている。
「へっへっへっ………すげー良い女が居るじゃねぇか!」
「俺はあっちのお嬢ちゃんを頂くぜぇ!」
牢屋から逃げ出した事が発覚し、王の命令で数日前から待ち構えていたのだろう…
総勢100人以上…
全特務警備隊がアルルやビアンカを…そしてマリーを犯す為に集まっていた。
「いくぜぇ!」
一人の掛け声と共に、特務警備隊が襲いかかってくる!
「バギクロス」
しかしリュカが感情無く唱えた殺傷能力のないバギクロスで、特務警備隊は勢い良く城を囲う堀へと吹き落とされた!
後に残るは警備の居なくなった正面入口…
何事も無かったかの様に、入城するリュカ達。
そして偽の王の前へと辿り着く。



 
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