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IS ショタが往くIS学園生活

作者:屍モドキ
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少年への疑惑

 午後は基本教科の授業だったため、あのあと結とは顔を合わせなかった一夏。もどかしい気持ちを無理矢理飲み込んで、今日も今日とて特訓に励むためアリーナへ向かった。

 結の部屋はアリーナの地下にあることだし、時間があったら覗いていこう。

 授業も終わり、片付けてアリーナへ向かおうと席を立ったところで一夏はシャルルに呼び止められた。

「一夏、IS訓練に行くんでしょ? 僕も同行していいかな?」
「あぁ、いいぜ」

 放課後の廊下を二人が話ながら歩く。

「結、倒れたらしいけど大丈夫だったの?」
「まぁ、原因は分かってるから大丈夫だとは、思う」

 なんとも曖昧な返事だった。
 しかしセシリアの料理下手があれほどとは思わなかった。あれはどうにかして矯正しなければ。

 そして結はしばらく安静にしているようにと言われていたので、今日の特訓には参加できないだろうと思いつつ、一夏はアリーナの更衣室で着替え、ピットから飛び出す。



「遅かったね一夏お兄ちゃん」
「⋯⋯結!?」

 アリーナ内に出ると、既に結がガーディアンを展開した状態で待機していた。

 先に出ていたらしい箒たちと一緒にいたが、みな総じて心配そうな顔をして立っていた。フルフェイス型のヘッドギアのせいで顔色がわからないが、不調では無いようでまずは一安心する。

「動いてもいいのか結。まだ寝てた方がいいんじゃ」
「大丈夫だよ。ほら、元気」

 そういいながらその場でバク転してみせる。
 息切れする様子もなく、虚勢を張っているわけでもなさそうなので、一応無事ではあるようだ。

「無理はするなよ上代」

 ぶっきらぼうだがそれなりに心配はする箒。

「申し訳ありませんでした結さん……」

 訳をこっそり教えてもらい、深々と頭を下げるセシリア。

「やばそうならちゃんと休みなさいよね」

 何処か気が気でない鈴。
 
 各々の言葉に結は一つ一つ頷き、簡単に返事を返す。
 後から出てきたシャルルも結をみて驚いていたが、別段なにも追及することはなく、呆気なく流していた。

「それじゃあ一夏。早速特訓始めようか」
「おう」

 まずは一夏とシャルルが軽い模擬戦をする事になり、結が二人から距離を取って観戦する。

「行くぞ、シャルル!」
「いいよ一夏!」

 雪片弐型を展開した一夏が『ラファール・リヴァイヴカスタムII』を纏うシャルル目掛けて跳躍する。
 振り下ろされた刀身を避けず、まずは小手調べと言わんばかりにシャルルは左腕のシールドでそれを受け止め、インターセプターで反撃を繰り出す。

 接近格闘特化の『白式』にとって遠中近すべてをこなせる『ラファール・リヴァイヴ』はかなり厄介な相手だった。

 近づかなければ攻撃手段がないこちらにとって、向こうは遠距離武器を有しているので距離を離されたらたちまち蜂の巣にされてしまう。

 一夏はとにかく接近して雪片を振るおうとするものの、シャルルは涼しい顔で飛び退き、アサルトライフルを展開して引き金を引く。

 一時的に展開させたシールドバリアで守ってはみるが、共通兵装ぐらいでは呆気なく撃ち破られる。

「こンのぉ!!」

 被弾覚悟で行う無理矢理の特攻。
 シャルルは尚もニコニコしながら後退し、グレネードランチャーを構え、一夏が目の前に飛び出してきたところで放つ。

「残念、僕の勝ちだよ」

 汚い花火が落ち、模擬戦はひとまず終わった。



 ◇
 


「一夏のISってそのブレード以外は無いの?」 
「あぁ、拡張領域を全部これに使ってるみたいで、ナイフ一本だって入らないんだよ」

 一撃必殺の武器と引き換えに、他の武器は何一つとして装備できない仕様の機体は玄人向けどころか、もはや失敗作と言ってもおかしくはなかった。

 そんなものをIS初心者に渡すのだから、開発者の配慮のなさが窺える。
 まぁ作った人間を知っていればそれなりに頷ける。

「それじゃあ僕のライフル使ってみる?」
「え、それ大丈夫なのか?」

 シャルルはライフルを一挺展開させ、ホログラムウィンドウで何か操作をしたあと一夏に手渡した。

「武器の権限を使用許諾(アンロック)しておけば、他の人でも使えるんだよ」
「へぇ、まだ知らないことがあるんだな」

 そうして渡されたライフルを持ってみたのはいいが、日本で生まれ育った一夏にとって銃の扱いなどてんてわからなかった。

「トリガーにはまだ指をかけないで、脇を閉めて安定させるんだ。それで……」
「こ、こうか?」

 一夏の後ろから被さるようにシャルルが持たせかたから照準の合わせかた、撃ち方までを丁寧に教えていく。

「なんか、近くない?」
「確かに近いな」
「殿方同士ですし、構いませんこと?」

 二人の様子を見ていた女子たちは三者三様の反応を示す。箒はあからさまに不機嫌で、鈴は不満な気持ちに溢れていた。セシリアは男同士だし、と割り切っている。

「……?」

 顔の見えない結は箒たちと一夏たちを交互に見ながら、顎に指をあてがって不思議そうに眺めていた。

 一夏たちから十数メートル離れたところに的が出現し、それへ向けてライフルの引き金が引かれる。

「おわっ!?」

 発砲音と反動におどかされるが、シャルルに促されるように照準をずらし、続けて的を撃つ一夏はそのままマガジンが一つ空になるまで射撃を続ける。

「どうだったかな、初めて遠距離武器を使ってみた感想は?」
「なんていうか、『速い』って印象だったな」

 接近するよりも速く、そして到達することが攻撃に繋がる。動作は最小限。近づくことなく相手に攻撃出来る事に近距離戦との違いをありありと実感した。

「でも直線的な攻撃になりやすいから、出来るだけ射撃は読まれないようにしないといけないんだ」
「はー、結構難しいんだな」

 シャルルの説明は知識と実践を織り交ぜた教え方で分かりやすく、難しい専門用語も程々に耳に入ってきやすい。

「シャルルって教えるの上手だな」
「そうかな? えへへ」

 これまでは箒たちから率先して教わっていたが、どれもあてにならずにほとんど独学に近い状態だった。

『こう、どん、と近づいてズバッといくんだ。なに? 分からないだと?』

『体面を120度に傾けて徐々に加速していき、鋭角をイメージして飛翔すればより速度を出せますわ』

『大体よ大体。こんなの感覚でわかるでしょ』

 擬音、専門用語、天才肌。どれも教わるには難易度が高く、言っている意味を理解することさえ困難だった事に疲れた笑みをこぼす。

「なんだその顔は。我々の教え方が気に入らないとでも言うのか一夏!」
「なにも言ってないだろ!」

 ここで愚痴を溢せばまたしごかれる。

「結もやってみる?」
「あ、うん」

 シャルルに手招きされた結がホバー走行で近くまで飛んでくる。一夏にした時と同じようにライフルを渡して、後ろから覆い被さる。

「待っててね、今使えるように……」

 ウィンドウを出そうとしたシャルルが言い終わるよりも早く、結はライフルを構えて遠くにある的の中心を撃ち抜いた。

 続けて同じ的を撃ち続け、標示されていた得点板を出来るだけ破壊したところで銃口を下に向け、安全装置を入れる。

 それを見ていた一夏たちは驚きながらも拍手をし、結を誉めていた。

「はい。ありがとう、ございま、した」
「あ、あぁ……うん」

 ライフルを受け取ったシャルルは自分のライフルと結を見て、ただ呆然としていた。

「使用許可もなしに、なんで僕の武器が使え……」

 ぶつぶつと迷走する思考は答えにたどり着くことはなく、あっちこっちに行き当たっては首を横に振ってまた次の答えに向けて千鳥足になっていた。

「どうしたんだよ、シャルル」
「いや、なんでもないよ……一夏」

 もしかして、いや、でも、まさか、そんな言葉を繰り返しては口のなかで転がり、のどの奥で絡まって出ることも落ちることもなく、ただただ胸の内を気持ち悪いもやが支配する。


 やがて思考を止めたシャルルは気を取り直し、誰もが心を許すような笑顔を浮かべて結に話しかける。

「いやぁすごいね。僕がサポートしなくてもあんなに正確に狙撃が出来ちゃうなんて!」

 絶えない笑顔で結を誉めるシャルル。対して結は何も言わず、照れることもなく、顔だけ向けてシャルルの言葉を聞いていた。

「結。君のこと、もっと知りたいな」

 そう言うとシャルルは結の手を取ろうと腕を伸ばすが、結は伸ばされたシャルルの手を払い、十字架のマスクでシャルルを睨む。

「さわらないで」

 いつか一夏に向けたような恐怖ではなく、明確な拒絶の意思を持ってシャルルから離れる。

 マスクの下で睨む結と、にこにこと笑うシャルル。
 あまりに対極的な二人の間を冷たい空気が流れる。

「……あはは、ごめんね? ちょっと馴れ馴れしかったかな」

 手を振って平謝りをするシャルルに一瞥をくれて結はカタパルトに向いて飛ぶ。

「かえる」
「お、おい結! すまねぇシャルル。またあとでな……!」
「いいよ。気にしないで」

 結を追いかける一夏はシャルルに向かって手を合わせ、シャルルはそれに手を振って返した。


 結の拒絶を見るのは二回目の箒は拒絶反応を示したのは背中のISのことか、それともシャルルが個人的に嫌いなのか。予想を立ててみるが、それ以上の答えは出てこなかった。



 ◆



 更衣室まで追いかけた一夏は、既に着替え終えた結の手を掴んで引き留める。

「待てよ結! 何か嫌ことでもあったのか?」

 あからさまに不機嫌だった少年をあんじて怒ることはせず、正すように聞いてみる。

「あの……人は、なんだか気持ち悪いの」
「気持ち悪い? シャルルがか?」
「うん」

 他人にここまで明確な嫌悪感を示すのも珍しいとは思うもの、何故あんなにも人当たりがいいシャルルに対してその感情を示すのかがわからなかった。

「ずっと笑ってるだけの人は、怖い。だからあの人はいやな感じがする」

 フードを掴んで目元まで隠す結は怯えるように俯いている。

「そうは言うがな、別に悪いやつじゃないだろ?」
「……もういい。かえる」
「結!」

 そう言い捨てた結は更衣室を抜けて地下へ向かう通路に向かう。
 それを追いかける一夏は結の手を取って一緒に歩く。

「嫌いなら嫌いでいいけどさ、露骨に避けなくてもいいんじゃないか?」
「……」

 結は答えない。
 かわりに一夏の手を強く握り返し、唇を尖らせる。

 今日だけで随分と感情を見せるものだ。
 怒るよりも可愛らしさが勝り、弟がいたらこんな気持ちになれるのかな、など思いながら一夏は結の頭をガシガシなで回す。



 そうやってじゃれている二人の目の前に、一人の女性が現れた。
 


「ゆ~い~ちゃ~ん~?」
「ひゅ……」

 目の前に満面の笑みを浮かべる山田先生が、全然笑ってない口調で結の名前を呼ぶ。
 結は山田先生とエンカウントした瞬間に一夏の背に隠れてしまうが、頼った先の一夏に抱えられて、借りてきたねこのように持ち上げられる。

「だめだぞ結。山田先生に言わないできたんだろ?」
「だって……」

 珍しく不貞腐れる少年に一夏は苦笑してしまう。
 だが結も心のうちでは悪かったとは思っているようで、抵抗しないのがその現れだろう。そのまま床に降ろし、今度は隠れることなく山田先生の前に立った結は申し訳なさそうに頭を下げる。

「……勝手に出ちゃってごめんなさい」
「本当に、元気なのはいいですが、休むときはちゃんと休む。約束してください!」

 そういいながら山田先生は結に向けて小指を出す。
 戸惑う結はおずおずと自分も指を出すと、すぐに山田先生に指を絡め取られる。

「ゆーびきーりげんまん嘘ついたら針千本のーます、指切った!」

 ぽかんとする結。
 対して山田先生は穏やかに笑っていた。

「今の、なんですか?」
「ふふっ、人と約束するときのおまじないみたいなものです。もう無理しちゃいけませんよ?」

 無言で頷く結。 
 後は私に任せてくださいと言われたらもう出る幕がなくなり、一夏は手ぶらになった片手で頭をかいて帰路につく。

 その後、シャルルと同室になることになり、箒と部屋が別れた一夏だが、朴念仁をかまして一発いいものを喰らった一夏だった。
  
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