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姉一人弟一人

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第四章

「それでだったからな」
「もう諦めかけたのね」
「けれど姉ちゃんに言われて姉ちゃんが頑張ってくれたから」
 それでというのだ。
「今の俺があるよ、全部姉ちゃんのお陰だよ」
「違うわよ、それは」
 姉は弟に微笑んで答えた。
「やっぱりそれはね」
「俺がっていうんだ」
「そう、あんたが頑張ったからよ」 
 姉は弟に笑顔で言葉を返した。
「だからよ」
「今の俺があるんだ」
「さもないとあれだけの選手になっていないわ」
 レギュラーになり一億円プレイヤーにもなっていないというのだ。
「バントの記録も達成して今もコーチをやれてるでしょ」
「そこまでなっていないんだ」
「そうよ、だからね」
 それでというのだ。
「あんたが努力したからよ」
「いや、その努力が出来る様になったことは」
「私がいたからなの」
「そうだよ、姉ちゃんが支えてくれたから」  
 それでというのだ。
「今の俺があるんだよ」
「そう言ってくれるのね」
「実際にそうだから、それと姉ちゃん今は」
「ええ、エッセイを書いてね」
 姉は弟が振って来た話にも笑顔で応えた。
「そちらでも知られる様になってるわ」
「そうだよな、姉ちゃんこれからも頑張っていくんだな」
「そうしていくわ、それであんたもね」
「うん、これからも頑張っていくよ」
「お互いにこれからもね」
「頑張っていこう」
「そうしていきましょう」 
 こう話してそうしてだった。 
 平野は中日のコーチとしても頑張った、そして今も姉への感謝の気持ちを忘れていない。今の彼があるのは彼女¥がいてからこそだと誰よりもわかっているからこそ。


姉一人弟一人   完


                2020・12・17 
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