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ワイルド突っ込み

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第四章

 或人は自分の不幸をネタにして静にそれを突っ込ませた、それを観た観客達は思わず唸った。
「これやこれ」
「自分の不幸をネタにするんや」
「それで笑いを取る」
「全力で突っ込ませる」
「それがお笑いの真髄や」
「よおわかってる」
「見事や」
 こう言って褒め称えるのだった。
「それでええ」
「この二人はよおわかってる」
「このままやって欲しい」
「それが漫才や」
「ほんまもんの漫才師や」
 皆拍手した、そうして二人の名声はさらに上がったが。
 静は舞台の後難波にある劇場の近くにある居酒屋で舞台が終わった打ち上げで飲みながら一緒に飲んでいる或人に問うた。
「しかしうちも思いきり突っ込んでな」
「ええかっていうねんな」
「そや、自分はしてええって言うけどな」
 それがというのだ。
「はたいて蹴ってええんか」
「ほな俺が突っ込んだらどないや」
 或人は焼酎を飲みながら静に問うた、彼はそれを飲んでいるがは梅酒だ。二人共卓の上に枝豆や卵焼きや冷奴や焼きそばを置いている。
「ハリセン持って」
「うちがぼけてか」
「そや、男が女はたくんやぞ」
「そらあかんわ」
 静はすぐに答えた。
「男が女どついたらな」
「印象最悪やろ」
「それはDVや」 
 静は言い切った。
「人として最低や」
「そや、それでや」
「自分は突っ込まんねんな」
「突っ込みもな」
 これもというのだ。
「誰が突っ込むか」
「それが大事か」
「突っ込み方だけやなくてな」
「それでどんなネタを使うか」
「そや、やっぱりお笑いはな」
「笑わせるんやな」
「全力でな、そしてな」  
 卵焼きを食べつつ話した。
「突っ込むモンもな」
「大事やな」
「男が女叩くのは受けん」
 それは絶対にというのだ。
「印象最悪や、それでや」
「そこも考えてか」
「やるんや、それでこれからもな」
「うちが突っ込む」
「俺がぼけてな、ええな」
「それでいくで」
「何かうちがワイルドとか野蛮とか言われてるな」
「ええことやろ」
 静の今の言葉にもすぐに返した。 
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