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オカバンゴの奇跡

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第一章

                オカバンゴの奇跡
 ボツワナのことである。
 この国のオカバンゴのソウリサーチキャンプに一匹の子犬がいたが。
「おい、大丈夫か」
「この犬後ろ足が動いてないぞ」
「前足だけで歩いているぞ」
「よくこんな状況で生きていたな」
「すぐに保護しよう」
 その薄茶色の毛で垂れ耳の痩せた中型犬を見てだった。 
 キャンプのスタッフ達はすぐに保護したが。
「酷いな」
「背柱が潰れているじゃないか」
「こんな状態で動いていたのか」
「前足だけで」
「しかもここは」
 このゾウリサーチキャンプはというと。
「野生動物が多い」
「大型の肉食獣も多い」
「よく食べられなかったな」
「それでも生きていたのか」
「奇跡だ」
「こんなことが起こったのか」
 まさにと言うしかなかった。
「どれだけの間この状態でいたんだ」
「後ろ足が動かない状態で」
「それだけでも凄いことだ」
「後ろ足が動かないで生きていて」
「しかも食べられずに済んだ」
「何を食べていたのか知らないが」
「虫でも食べていたのか」
 そうでもしてというのだ。
「そうして必死で生きていたのか」
「本当によく生きていた」
「その願いに応える」
「そうしないと駄目だな」
「この犬は助けるぞ」
「これこそ神のもたらされた奇跡だ」
「その奇跡にも応えるぞ」
「クゥン・・・・・・」
 こうして犬は保護されてだった。
 そうして食べものを与えられてだった。
 背中の状況を見られたが。
「よし、治るぞ」
「この背柱は治る」
「重症だが大丈夫だ」
「また歩ける様になる」
「女の子だが」 
 性別もわかった。
「子供も産める様になるぞ」
「完治出来るから」
「よかったな」
「ワン」
 犬はスタッフ達も鳴いて応えた、そして。
 犬に名前を付けられたがその名前はボビーとなりその名前でも呼ばれる様になった。
「ボビーいいか?」
「これから手術するからな」
「お前の背柱治すぞ」
「時間はかかるが大丈夫だ」
「絶対によくなる」
「完治するぞ」
 こうボビーに言ってだった。
 ボビーの手術にかかった、そうして手術は無事に成功し。
 これまで前足だけで背中の苦しみに耐えながら歩いていた彼女は普通に歩ける様になった、その彼女を見てだった。
 キャンプの白人の女性職員スザンウ=ケリーは同僚達に話した。波立った金髪を後ろで束ねはっきりした顔立ちでスタイルのいい女性だ。
 その彼女がだ、こう言ったのだ。
「あの、完治しましたし」
「普通に歩ける様になった」
「後は訓練をすれば走れる」
「元気にそうなれるね」
「これからは」
「はい、ですから」
 それでというのだ。
「今度はこの娘に家族を迎えてもらいましょう」
「いいな、それじゃあな」
「すぐに探そう」
「このボツワナだけじゃない」
「世界中でそうしよう」
「是非」 
 こう言ってだった。 
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