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戦国異伝供書

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第百二十九話 灰からはぐれた者達へその六

「出来まする、師が忍術を教えてくれたので」
「うむ、しかしお主は忍術の知識はあるがな」
「それでもです」
「使うことは不得手じゃ、というよりな」
 むしろという口調の言葉だった。
「お主は忍術を使うだけの身体の頑健さや素早さはない」
「身軽さもですな」
「だからな」 
 それ故にというのだ。
「お主は忍術は使えぬ、しかしな」
「知識があるので」
「教えることは出来る」
 それは可能だというのだ。
「だからな」
「それで、ですな」
「天下を巡り」
 そうしてというのだ。
「そしてな」
「身寄りのない子を引き取り」
「そのうえで忍の者として育ててな」
「織田殿にお仕えする様にですな」
「してはどうか」
「左様ですな」
 考えてからだった、居士は師に答えた。考えの後ではっきりとした顔になっていてそうして言うのだった。
「それでは」
「うむ、これより天下を巡ってな」
「身寄りのない子を引き取り」
「忍にする様にな、しかし一旦引き取った子はな」
「必ずですな」
「そうじゃ、見捨てるでない」
 それはしてはならないというのだ。
「よいな」
「はい、この戦国の世身寄りのない子は多いです」
「そうじゃ、そうした子を引き取ったならな」
「見捨てずにですな」
「育てよ、一旦育てると決めた者を捨てるなぞな」
「人の道に反します」
「だからな」
 それ故にというのだ。
「それでじゃ」
「そうしたことはせぬことですな」
「仁の心を忘れぬことじゃ」
 居士にこうも話した。
「何があろうともな」
「はい、そのことも肝に銘じておきます」
 居士ははっきりとした声で答えた。
「くれぐれも」
「そうせよ、そしてな」
「この戦国の世を終わらせる」
「その力になるのじゃ」
「そうなりまする」
「戦国の世で泣くのは民、そしてその戦国を裏から起こす者がおるなら」
 それならとだ、師はさらに言った。
「その者は決してな」
「許してはなりませぬな」
「その動きをな」
「ではその者達のことも調べますし」
「忍の者達もな」
「育てまする」
「頼むぞ、しかしな」
「しかしですか」
「いや、これまでわしはまつろわぬ者と聞いてもな」
 それでもとだ、師は話した。
「もう遥か昔のことでな」
「今いるとはですか」
「思っていなかった、だが天下を見ると」
 どうしてもというのだ。 
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