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星河の覇皇

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第七十七部第二章 第二次国境会戦その三十七

「切り札はタイミングです」
「いきなり出すのではなく」
「それを見て出すことですね」
「それを行いにくいのが民主主義の軍隊です」
 主権者である市民が損害や戦禍を恐れていて即時停戦を求めるからだ。
「それを実感しています」
「今のサハラの戦闘を見て」
「それで、ですね」
「思われていますね」
「その様に」
「そうです、しかしこれはすぐにどうにかなるものでもありません」
 八条はグラタンを食べつつ達観して述べた。
「市民の方々が軍事知識、切り札を投入するタイミングを理解出来るまで備えれば」
「その時はですね」
「その戦術も使えますね」
「切り札を使えるタイミングを見計らって使える」
「その時は」
「主権者次第です」
 こう二人の元帥に話した。
「軍事も」
「そうなりますね」
「連合では主権者は市民です」
「では市民の方がどうか」
「まさにそこからですね」
「はい、しかし連合での軍事の優先順位は低いです」
 このことには定評がある、それは軍事費にも出ている。
「政治や経済、貿易等が最優先で」
「福祉や教育もですね」
「それぞれの分野が優先され」
「軍事はどうしてもですね」
「その後になりますね」
「はい、ですからその知識も」
 優先順位が低いだけにだ。
「どうしても低いままです」
「残念ながら」
「そうなっていますね」
「はい、ですがそのこともわかったうえで」
 軍事の優先順位の低さもだ。
「そうしてです」
「軍事知識を備えてもらうこともですね」
「待ちますか」
「そうしましょう、しかし」
 また話した八条だった、グラタンの中のマカロニの味を口の中で楽しみつつ。
「すぐにではないので」
「だからですね」
「このことについては」
「待ちましょう、主権者がどうかで」
 連合では市民となるがだ、八条は他のケースも考えて二人の元帥に話した。
「軍事、戦争の仕方も変わります」
「そうですね。実際に」
「そのことは民主国家だけではないです」
「これが君主であってもです」
「同じですね」
「君主の如何で敗れた戦争もありますし」
 八条はその主権者の話を続けた。
「例えば趙ですね」
「中国戦国時代の国ですね」 
 その中国人である劉が応えた、グラタンのチーズの中にあるよく火が通った牡蠣の味は実にいいものである。
「あの国といえば」
「長平の戦いですね」
「秦との間で行われた」
「あの戦いで趙は敗れました」
「その君主のせいで」
「当初趙は廉頗が指揮を執っていました」
 趙の誇る老練の名将だった、宰相であった藺相如との刎頸の交わりの故事で知られる。
「しかしです」
「それでもでしたね」
「はい、秦は守りを固めて機を伺う廉頗を見て策を用いました」
 幾ら攻めても挑発してもあえてそうしていたのだ、廉頗はそうして秦が退くか攻める機会を伺っていたと言われている。 
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