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バスに乗ってきた犬

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第一章

               バスに乗ってきた犬
 イギリスウエストヨークシャー州のことである。
 そのバスの乗客達は非常に驚いていた、何と。
 茶色の毛のスタッフォードシャー=ブルテリアがバスに乗ってきたのだ、そして座席の一つで丸くなりだしたのだ。
 それを見てだ、誰もがいぶかしんだ。
「何だあの犬」
「一匹で来たぞ」
「飼い主はいないのか?」
「はぐれたのか?」
「どうしたのかしら」
 誰もがいぶかしんだ、それでだった。 
 丁度仕事帰りだったOLのジェマ=バートンはその犬を見て一緒にバスに乗っていた同僚に話した。金髪を長く伸ばし彫のある顔で小さい鳶色の目に大きな赤い唇を持っている。背は一七〇近くあり膝までのタイトスカートが似合っている。
「あの子どうしたのかしら」
「迷子かしら」
 同僚もいぶかしむ顔で犬を見つつ言った。
「そうなのかしら」
「そうね、捨て犬かも知れないわね」
「ええ、そこまわからないわね」
「このままにしておけないから」
 ジェマは犬を見つつ同僚に話した。
「あの子が降りたらね」
「そうしたらなの」
「ついていってね」
 そしてというのだ。
「保護して」
「そうしてなの」
「動物の保護施設に預かってもらうわ」
「それで飼い主さんを探すか」
「捨て犬なら新しい飼い主さんをね」
 その人をというのだ。
「探してもらうわ」
「そうするのね」
「どっちにしても放っておけないから」
 犬一匹ではというのだ。
「それにあの子凄く悲しそうだし」
「そうね、はぐれたにしても捨てられたにしても」
「悲しい思いをしてるから」
 それでというのだ。
「あの子をね」
「保護して」
「そしてね」
 そのうえでというのだ。
「よくなる様にするわ」
「わかったわ、私もついていくわ」
 同僚はジェマの言葉に頷いた、そうしてだった。 
 二人はバスの中で犬をじっと見守った、犬は終点まで乗っていたが。
 終点になるとバスから降りた、運転手もその犬を見て首を傾げさせた。
「こんなことははじめてだな」
「犬が一匹で乗り込んできたのはですね」
「全くだよ、こんなこともあるんだな」
 こうジェマに言った、そして。
 ジェマはその運転手と別れてだった、そのうえで。
 同僚と共に犬を保護してだった、バーンスリー近郊の保護施設であるクリフ=ケンネルに連れて行った、そうして。 
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