| 携帯サイト  | 感想  | レビュー  | 縦書きで読む [PDF/明朝]版 / [PDF/ゴシック]版 | 全話表示 | 挿絵表示しない | 誤字脱字報告する | 誤字脱字報告一覧 | 

生まれた時から知っている

しおりを利用するにはログインしてください。会員登録がまだの場合はこちらから。 ページ下へ移動
次ページ > 目次
 

第三章

「ベッカーはなんだ」
「長く生きる必要はないか」
「そうなのね」
「他の犬も他の生きものもだよ」
 彼等もというのだ。
「だから皆だよ」
「寿命は短いか」
「そうなのね」
「そうだよ」 
 両親にこう言うのだった。
「だからね」
「そうか、もう知っているからか」
「愛情を」
「だから長く生きる必要はない」
「学ぶ必要がないから」
「そうだよ、ベッカーはずっと僕を愛してくれて」 
 そしてとだ、シェーンはさらに話した。
「お父さんもお母さんもだったね」
「うちに来た時からな」
「子犬で何も知らなかった筈なのに」
「お父さんもお母さんも愛してくれたよ」
「それも凄くね」
「だからだよ、人間は長く生きて」 
 そしてというのだ。
「勉強しないといけないけれどね」
「犬も他の生きものも知っているから」
「最初から」
「それでか」
「シェーンはそう言うのね」
「うん、それでベッカーは僕に愛情を教えてくれたんだ」
 その一生でというのだ。
「そうして天国に行ったよ」
「そうか、そうした考えもあるな」
「素敵な考えね」
 二人共我が子の言葉に感激した、そしてだった。
 彼にだ、笑顔で話した。
「お父さんもお母さんもお前のその言葉覚えておくぞ」
「素晴らしい考えだからね」
「そしてベッカーのことも忘れないぞ」
「ずっとね」
「うん、僕も忘れないよ」
 シェーンは両親に笑顔で応えた、そしてだった。
 彼はずっとベッカーのことを覚えていた、そうして常に彼に有り難うと言った。最初から愛情を知っていて自分に愛情を教えてくれた彼に対して。


生まれた時から知っている   完


                  2021・3・21 
次ページ > 目次
ページ上へ戻る
ツイートする
 

全て感想を見る:感想一覧