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DQ3 そして現実へ…  (リュカ伝その2)

作者:あちゃ
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身を寄せ合って

<サマンオサ>

少女の名前は『フィービー』。
リュカの胸の中で泣く事約10分…
泣き止んだフィービーはリュカの手を引き、彼女の隠れ家へと案内する。
殆ど潰れた屋敷の中に、隠す様に存在する地下室…其処が彼女の隠れ家だ!
其処は想像していたよりも凄まじい状況で、薄汚れた浮浪児で溢れかえっていた…
いや…子供だけではない、出産間近でお腹の大きな女性もいれば、今にも死にそうな老人など、浮浪者達が30人ほど寄り集まっているのだ!

「此処は………?」
「此処はアタシ達の唯一の住処だ。アタシ達は此処で寄り添い生きている…」
リュカの問いにフィービーが抑揚無く答える。
そして教えてくれる…この国の状況を…彼女等の境遇を…

凡そ1年ほど前、急に王様が税率を5倍に引き上げた。
其処からこの国の闇が始まる…
税金を払えない者、不満を持ち抗議する者、それらの人々を取り締まる為に『特務警備隊』なる物を国王が組織する。
特務警備隊は国王に気に入られている者のみで構成されており、彼等には巨大な権力が与えられている。
彼等が悪と言えば証拠はいらない…
彼等に懲罰の方法は一任されている…
それがサマンオサ国王直属の特務警備隊だ。

特務警備隊の悪行は止まる事を知らない…
町中で目が合っただけで、反抗的に睨みテロを企てたとして懲罰を受けるのだ!
その懲罰も極悪で、男や老人であれば彼等が飽きるまで暴行され、女性であれば犯される。
更には、自分の好みの女性がいれば、目が合って無くても犯される…
それは子供でも関係ない…
幼女趣味の隊員に見つかれば、その場で犯されるのだ!
此処にはそんな酷い目に遭いながらも、何とか生き延びた者達が暮らしている。


「…ねぇリュカ、あの娘を見てよ…」
フィービーが指差した先には、一人の少女が虚ろな瞳で壁にもたれている。
年の頃なら14.5歳…焦点は定まらず、ただ生きているだけだ!
「彼女はリサ…この国でも有数の名家の生まれなんだけど…お父さんが税率に対して不平を言った次の日に、特務警備隊が家に押し寄せて、彼女の目の前でご両親と3つ年下の妹を殺したんだ…お母さんと妹は犯されて…勿論彼女も…」
誰も何も言えないでいる…あまりの状況に言葉が出ない…

「此処に居る人で、奴等に何もされてない人はいない…私も道を歩いてただけで犯された…好きでもない男に無理矢理処女を奪われたんだ………」
苦しそうに話すフィービー…
そして顔を上げ、リュカの瞳を見据えながら言葉を続ける…
「リュカ…さっきアタシに言ったね…『何故スリをしてるのか…何故そうなってしまったのか…』と…」
彼女の言葉にリュカは無言で頷く。

「この国じゃ物乞いをしても誰も何もくれやしない!特務警備隊に見つかれば、またあの悪夢を見せられるだけ…だから盗むしか無いんだ!………そしてアタシしかそれが出来ない……見て、みんなを…」
アルル達は見回す事が出来ない…もう分かっているから…
フィービー以外、動ける者が居ないのだ…
大人は皆、五体不満足だ…
両手足を切断されてる男や、右目を頬の肉からえぐられてる妊婦…
心の壊れてしまった少女…
やせ細り、ガイコツと見分けのつかない老人に、マリーよりも幼い子供達…


「………アルル、有り金を全部くれ!」
何時になく真面目な表情のリュカが、断れないほどの気迫で金を要求する。
「カンダタ、一緒に来い!他のみんなは此処で怪我人の看病を…」
アルルが出した財布を掴むと、カンダタと共に外へと出て行くリュカ。
皆、リュカが何をしに行ったのかは分からない…だが、この状況を無視出来ないのは彼(リュカ)だけではない。
ビアンカが荷物の中から薬や包帯を取りだし、怪我人達の看病を始めると、ハツキが魔法で傷を癒し出す。
そしてウルフも憶えたてのベホイミを駆使すると、ティミー・アルルもそれに習う。
回復魔法が使えない者は、濡れたタオルで彼等の身体を拭うなどし、少しでも状態改善に努めた。


1時間もしない内に、両手に大量の食料を抱えリュカとカンダタが帰ってきた。
「どうしたんだよ、それ!?」
フィービーが大量の食料に驚いている。
「買ってきた。ビアンカ、軽くで良いから料理してくれる?」
ビアンカはリュカの言葉に頷くと、荷物の中から携帯燃料を取りだし、それに火を灯す。
そして食材を調理し、暖かな食事を作り出す。
その間リュカも、調理の必要のない食材を使い、パンに挟んでサンドイッチなどを作り、子供や怪我人達に配り渡す。
「か、買ってきたって…何処で!?この国には碌に食料なんてないだろう!」

「僕はルーラを使えるからね!アリアハンに行ってきた。その後でロマリアとイシスにも…」
唖然とするフィービーの手を掴み、手繰り寄せ服を脱がすリュカ…
流石、女性の服を脱がす事には慣れている様で、然したる抵抗も出来ないまま裸にされるフィービー…
しかし直ぐにリュカが買ってきた新しい服を着せられる。
「ちょ……勝手にレディーを裸にして、今度は服を無理矢理着せるって………何なんだよアンタ!」
「うるさい、その服臭いんだよ!何時までも着てるなよ!」
フィービーのクレームを一蹴すると、脱がした服を丸めて焚き火の中へ放り投げる。

「あ!それまだ使うんだよ!…アンタも言っただろ!その悪臭のお陰で、スリが成功するんだよ…それにその臭いで奴等も近付かないし…」
文句を言うフィービーにサンドイッチを手渡し、リュカが力強く言葉を発する。
「もうスリをする必要は無い!もう脅えて暮らす必要は無い!…こんな国は僕が修正する!」
ラインハットの惨状を目の当たりにした時と同じように、リュカの瞳に力が灯る。
子供が虐げられる世界が気に入らないのだ…
自分も10年間、虐げられてきたから…

みんなに食べ物が行き渡るのを確認すると、リュカは立ち上がり隠れ家から出て行く。
そして無言でついて行くアルル達。
最早、この国に来た当初も目的など忘れている。
今、彼等の心にあるのは、フィービー達を救いたいと言う思いだけだ!
だからこそリュカに黙ってついて行く…
一国を相手にするかもしれないのに…



 
 

 
後書き
リュカさんキレました!
普段チャラくても切れると怖いんです。 
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