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SHOCKER 世界を征服したら

作者:日本男児
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父よ、母よ、妹よ 中編

 
前書き
今回はショッカー側の反応についての話です。

それではッ! (`゚皿゚´)/イーッ!!  

 
志郎が夜空に向かって嘆いていた、ちょうどその頃。



大ショッカー党北京支部は蜂の巣を突いた以上の騒ぎだった。V3に党大会を襲撃されたことは北京支部の面子を丸々潰されたと言っても過言ではない。
事実、他支部からはドクトルGの安否確認を兼ねた嘲りと憤りの電話がひっきりなしに掛かっていた。
その上に、北京支部に属する多くの党員が責任を取らされ、更迭されていた。

皮肉にも結城の言っていた通り、アンチショッカー同盟の今回の作戦はドクトルGの暗殺こそ失敗したが、ショッカーに打撃を与えるという点においては成功していた。





北京支部の極秘の地下空間では緊張した空気が張り詰めていた。
壁に備え付けられたサソリのレリーフの前に、治療を終えたばかりのドクトルGが(ひざまず)いていた。
サソリのレリーフが赤々しく光る。レリーフからは大首領の怒気を孕んだ威圧的な声が響いた。


『ドクトルG!貴様は何をやっておる!?V3に党大会を妨害されておきながら、貴様は何も策を講じないつもりか!!』


「ハハー、大首領様!誠に申し訳ございません!!」


大首領から叱責を受け、ドクトルGはただ深々と頭を下げることしか出来なかった。

 
「とにかく早急にV3、そしてライダーマンを粛清してしまわねばならない。しかし、どうしたものか……」


ライダーマンはともかく、V3は最強クラスの改造人間。生半可な怪人を送り込んでも倒されてしまうのがオチだ。その上、どこに潜んでいるのかも不明だ。一応、旧中国内にいるという事は判明しているがいくら捜索しても一向に見つかる気配もない。
これにはさすがの大首領も手をこまねくことしかできなかった。



そんな中、ガァーと自動ドアが開いて1人の男が入室する。
赤銅色の全身甲冑を纏ったその男は地面に頭を擦り付けるドクトルGを見て嫌らしく笑った。


「フハハ、無様だな。ドクトルG」


何者かとドクトルGは顔を上げ、驚いた。嫌らしく笑っている彼はドクトルGと同じく、ショッカーの大幹部だったからだ。


「…ヨロイ元帥!!何故、お前がここに!?モンゴルエリアの統治者だったはずだ!」


「不甲斐ない貴様に代わって問題を解決してやろうと思ってな。モンゴルエリアの統治の方は秘書官に任せてきた」

 
ヨロイ元帥はドクトルGの前を悠然と通り去り、サソリのレリーフに跪いて、忠誠を顕にする。まるでドクトルGのことなど見えていないというような態度だった。


「大首領様、突然の訪問をお許しください。しかし、私めから1つお願いがあるのです」


『願いだと?何だ、言ってみろ』


大首領だけでなく、ドクトルGまでもヨロイ元帥に耳を傾ける。ヨロイ元帥は場が静まり返っているのを確認すると話しだした。


「私めに中国エリアの警察権とV3及びライダーマン抹殺の指揮権をくださりませんか?」


!!!!!!!?????


ドクトルGは顔を真っ赤にして憤然と立ち上がる。
当たり前だ。中国エリアはドクトルGの管轄であり、中国エリアの統治に関わる権限が与えられているのもドクトルGだ。当然、その中には警察権や作戦の指揮権も含まれている。ヨロイ元帥はそれをドクトルGから取り上げ、寄越せと言っているのだ。


彼が激怒しない理由はなかった。


「ヨロイ元帥!ここは俺のエリアだ!余所者がしゃしゃり出ていい場所では―」


ドクトルGがそこまで言った刹那、サソリのレリーフがより濃い怒気を伴って紅く光る。


『誰が発言を許可した!?負け犬は黙っていろ!』


「う……ぅ、分かりました。大首領様」


大首領に叱責され、ドクトルGは驚いたような素振りを見せ、その後、へなへなと再び跪いた。


『…ヨロイ元帥。貴様の願い、聞き入れた。一時的に中国エリアの警察権及びV3・ライダーマン抹殺の指揮権を与える』


「ありがとうございます、大首領様。私はどこぞの無能と違って失敗は致しません」


『うむ、期待しているぞ。貴様なら愚劣な反乱分子を抹殺してくれるだろう』







やり取りを終えるとヨロイ元帥は底意地の悪い笑みを浮かべ、ドクトルGを一瞥する。
そんなヨロイ元帥がドクトルGの怒りの炎に油を注いでいた。
……ドクトルGはそんな心情のせいで思わず"言ってはならない例のこと"を言い返しそうになった。


結城丈二(ライダーマン)が裏切った理由を忘れたのか!?お前がくだらん自己保身に走ったせいだぞ!!―



ドクトルGの思索は止まらない。


ヨロイ元帥。彼は大幹部の中でも特異な存在だった。ゾル大佐や死神博士などの他の大幹部が大首領への忠誠を基本としていたのに対し、彼は常に自己保身と組織内での出世しか眼中になかった。また、大幹部の中では人一倍、敵愾心と嫉妬心が強いことでも有名だった。

そんな彼の嫉妬や憎悪の被害者が結城丈二だ。元々、ショッカーの科学グループで出世街道を進んでいた結城は『未来の大幹部』とさえ呼ばれる程の逸材だった。

ヨロイ元帥は後に自身を脅かしかねない彼に『裏切り者』の濡れ衣を着せ、処刑しようとしたのだ。だが、その奸計は結城の助手達の手助けによって失敗。脱走した結城はアンチショッカー同盟に逃拾われ、ライダーマンとなってしまった。

余談だがそれからというもの、第2のライダーマンを生まないために大首領親衛隊が秘密裏に大幹部を査察しているという噂がたった。


それら一連のことを追及してやろうと思ったドクトルGだったがすんでのところで冷静になり、沸き上がる怒りを腹の奥に飲み込んだ。
それはショッカーの中でもトップクラスのタブーなのだ。下手に口にすれば自身が大幹部といえど命が危うくなる。
ドクトルGはヨロイ元帥からの侮辱と嘲笑に耐え続けることにした。

そしてすぐにドクトルGは察した。
恐らくはヨロイ元帥はライダーマンを殺すためにここに来たのだ。彼さえ消せれば、自身の失態を有耶無耶にできる。そうでなければわざわざ、他エリアまで出向いてテロリスト殲滅の指揮を執る理由がない。
 

(この奸臣が…。自身の保身の為に他エリアで起きたテロまで利用するのか…)









ドクトルGが憎悪を向けていることなどつゆ知らず、ヨロイ元帥は揚々と大首領に語りかける。


「私にかかれば愚かなレジスタンス風情なぞ、簡単に壊滅させてみせましょう」

 
『それは頼もしい。だが何か策があるのか?』


「勿論です。…おい、ドリルモグラよ、入れ」


ヨロイ元帥が合図を出すと再び、自動ドアが開いて1体の怪人が入室する。
ドリルモグラと呼ばれたそれは名前の通り、モグラの怪人だった。青色の皮膚に、頭頂部にはドリルが付いていた。


『その怪人は何だ、ヨロイ元帥?見たところヨロイ一族の者ではないようだが…、貴様の部下の一人か?』


「いえ、部下と言うよりは手駒です。コイツは元々はアンチショッカー同盟の者でしてね。北京をうろついていたのを我がヨロイ一族の者が攫い、改造手術を施したのです。今や、立派なショッカーの一員ですよ」


『ほう、用意周到だな』


ヨロイ元帥の言葉に大首領は感心して見せたが、ドクトルGはまたまた憤りを覚えた。
モンゴルエリアのスパイが断りも無く、他エリアで活動し、何の許可もなく人民に改造手術を行う。 
それは言い換えれば他エリアの管轄と権利を土足で踏みにじっていることに他ならなかった。しかし、「テロを未然に防げなかった」という失態を犯したドクトルGには抗議はおろか、発言することすらその場の空気が許さなかった。
ヨロイ元帥は怪人の紹介を続ける。


「この怪人は同盟の中でもそれなりの地位に就いており、奴らの幹部にも簡単に近づくことができる数少ない人間です。こいつを使えば奴らのアジトを突き止め、ライダーV3らの息を止めることなど造作もないことであります。……なあ、そうだろう、黒田よ?」


「リィ〜ロ〜。ああ、その通りだ」


ドリルモグラはニヤリと笑うと人間態である黒田としての姿に戻った。
彼の右頬はつい先程、純子の平手打ちを受けたばかりなため、赤く腫れていた。


黒田はショッカーによって洗脳され、ドリルモグラに改造されていたのだ。人間態としての黒田を見つめるようにサソリのレリーフが妖しく光る。


『ドリルモグラよ。貴様は我がショッカーの為ならかつての仲間を裏切れるか?』


「仲間?ああ、裏切り者のV3やライダーマンのことか。あんな奴ら、改造前から死ねばいいと思ってたからな。裏切れるなど容易いことだ」


『フハハハ、そうか。これは頼もしいな』


黒田の答えに大首領は満足気な様子で高笑いをした。
そんな中、黒田はヨロイ元帥の方に向き直った。ヨロイ元帥は思わず、身構える。


「…ただ一つだけいいか?頼みがあるんだ。北京支部に珠純子という女がいるんだが…。他の奴はどうしようと構わんがそいつだけは俺にくれ」


黒田は痛々しく腫れた右頬を擦りながらヨロイ元帥に尋ねる。黒田としては純子を手に入れることで自身の征服欲と所有欲を満たしたかったのだ。
一方、ヨロイ元帥は一瞬悩んだ。自身の下僕、それも『元テロリスト』の願いを聞き入れるべきか困りあぐねていたのだ。ヨロイ元帥は大首領に意見を求めた。


「ドリルモグラはこう言っていますが……どうされますか?大首領様」


『まあ、よかろう。好きにするがいい』


大首領から許しをもらい、黒田は嫌らしく微笑った。これから純子を自由にできるという喜びと興奮から来るものだ。
その気色の悪い表情にはドクトルGとヨロイ元帥でさえも嫌悪感を覚えた。


『それではヨロイ元帥、V3及びライダーマン抹殺作戦の実行を命じる。これはショッカーの名誉を取り戻す戦いである。失敗は許されんぞ』


「ハハッ!了解しました。大首領様」


『さぁ、V3、そしてライダーマンよ。精々、足掻いてみせるのだ。虫けら同然に葬り去ってくれるがな!!
フハハハハハハハハ!!!!!』


大首領の高笑いは地下空間にあるあらゆる物に反響し、その場にいる全ての者を畏怖させた。
…この数日後、ショッカーによる抹殺作戦が決行されることを風見達はまだ知らない。
 
 

 
後書き
次回予告
V3・ライダーマンに迫るヨロイ元帥の策謀!ドリルモグラは純子に手を伸ばす!
ピンチに陥ったV3を救うのは彼の仲間達の想い!?
次回、父よ、母よ、妹よ 後編にご期待ください。


それでは、またじかイッーーー!!  
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