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優しいゴールデンレッドリバー

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第二章

「そうしているな」
「それは忘れていないわね」
「そうだな」
「絶対にね」
「ご飯をあげることが遅れても」
 そうした意味で忘れてもというのだ。
「完全にあげないのはな」
「ないわね、じゃあ食べたら」
「康太起こしてね」 
 二人の息子である、幼稚園児ですくすくと育っている。父親そっくりである、
「そして康太にもご飯食べさせて」
「それから散歩行くか」
「アンもそれでいいわね」
「ワンッ」
 アンも応えた、そしてだった。
 二人は息子を起こして彼にご飯を食べさせてからアンの散歩に出た、その後は休日ののどかな一日となった。
 息子は昼食の後は部屋の中でアンと一緒に遊んでいた、しかし。
 やがて寝てしまった、それまでリビングで本を読んでいた妻はその息子に気付いて。
 毛布をかけようとしたが。
 それまで一緒に遊んで傍にいたアンがだった。
 息子が触っても起きないのを見て毛布を咥えて持って来た、そうしてだった。
 彼に毛布をそっとかけた、妻はそれを見てだった。
 自分の部屋でゲームをしていた夫を呼んで話した。
「あの毛布アンがかけてくれたのよ」
「本当か?」
「ええ、康太が寝ていたらね」
「そうしていたらか」
「毛布を持って来てくれてね」
 そうしてというのだ。
「それでなのよ」
「それは凄いな」
 夫も話を聞いて驚いた。
「犬は賢いけれどな」
「それでアンは優しいけれど」
「ゴールデンレッドリバーは」
 夫はこの犬のことから話した。
「頭がよくて優しい種類だけれどな」
「特に女の子はね」
「それでもな」
「そんなことするなんてね」
「アンは凄い娘だな」
「本当にね」
 二人でこう話してだった。
 アンのところに行ってそっとだった。
 アンの頭を撫でてだ、優しい声で言った。
「アンよくやったな」
「康太に毛布をかけてくれて有り難うね」
「よくそうしてくれたな」
「とてもいいことをしたわね」
「ワンワン」
 アンは二人、自分にとっては親である彼等に褒めてもらって嬉しそうに尻尾を横に振った。そして夕食の時にだった。
 その毛布をかけてもらった息子に話すとだった。
 彼も笑顔になった、そうして丁度自分の傍で寝ていたアンに自分の席から言った。
「アン有り難うね」
「ワンッ」
 アンはこの時も尻尾を横に振った、そして嬉しそうに鳴いた。一家はそんなアンを見てまた笑顔になった。彼等にとってはこの日は最高の休日になった。


優しいゴールデンレッドリバー   完


                  2021・3・18 
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