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狐を襲わないライオン

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第一章

                狐を襲わないライオン
 ボツワナの中央カラハリゲーム保護区という野生動物の保護区域でだった。
 現地の学者でありこの保護区で環境と生態系保護の為に働いているラク=ゴングは共にいる保護区の職員サト=ミナクに望遠鏡で暫く離れた道の方を見つつ言った。二人共黒人だがラクは小柄でサトは大柄である。顔立ちはラクは細面でサトは丸い。二人共アフリカの自然環境の中での活動に適したサファリ用の服を着ている。
「あそこにオオミミギツネがいます」
「オオミミギツネですか」
「はい、今あの生きものは」
「この保護区ではかなり数が減っていますね」
「ですから怪我をしている様なので」
 望遠鏡に見える狐は蹲っている、そして動きは非常に鈍い。
「すぐにあちらに行って」
「保護してですね」
「治療をしないといけないです」
「では」
 それならとだ、サトはラクに応えてだった。
 自分達の傍にあるジープを見てそうして言った。
「今すぐに行きますか」
「そうしましょう」
「それでは」
 二人でこう話してだった、彼等はそのオオミミギツネのいる方に向かった。だがあと十分位で着くといったところで。
 ラクは助手席から狐の方を望遠鏡で見てジープを運転しているサトに顔を曇らせて話した。
「待って下さい」
「ああ、何か出てきましたね」
 サトも運転しながら狐の方を見てだった。
 一旦ジープを停止させた、そうして運転席から望遠鏡で狐の方を見て言った。
「あれはライオンですね」
「雄と雌がいますね」
「夫婦みたいですね」
「狐は怪我をしていますから」
「簡単に捕まって」
「それで食べられるかも知れないですね」
「オオミミギツネは今この保護区では非常に少ないので」
 サトもこのことを言った。
「ですから保護したいですが」
「今行っても間に合わないですね」
「はい、ライオンの餌になったら」
「その時は」
 もう、とだ。二人はこれは駄目かと思った。しかし。
 二人が望遠鏡で狐の方を見るとだった。
 雌ライオンのところに三匹の子ライオンが来た、それで彼等は狐を見るとだった。
 狐を襲わなかった、狐は観念している様だったが彼等はその狐の前に出た。それはまるで。
「護っているみたいですね」
「怪我をした狐を」
「そうしているみたいですね」
「あの子達は」
 二人はその子ライオン達を見て話した。
「これはどうも」
「そして母親もですね」
「子供達を見てですね」
「狐の前に立ちましたね」
「護るみたいに」
 見れば雌ライオンもそうしていた、そしてだった。 
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