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Fate/WizarDragonknight

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ライト プリーズ

「うっ……」

 土の匂いが充満する。
 目を覚ましたハルトは、暗い中を見渡した。

「……あれ?」

 果たして目を開けているのか閉じているのかさえも分からない闇の中。ハルトは手探りで環境の情報を探した。

「っ!」

 何かに触れた。土にしては柔らかい。砂場だったのだろうか。

「や……め……」

 その割には、何やら人の声が聞こえる。何だろうと、両手で撫でまわしてみる。

「地獄に行きたいの? 松菜ハルト」

 目が慣れ始めた暗闇の中から、凄まじい形相の暁美ほむらが現れた。
 そして理解した。今ハルトが触れていたのは、彼女の発展途上の女せ「グレネードをプレゼントしましょうか?」「ごめんなさい」



『ライト プリーズ』

 一時的とはいえ、光が洞窟内を照らし出す。
 天井は崩落の影響で塞がっており、たとえ風のウィザードに変身したとしても突破するのは危険があった。

「進むしかないか……」

 ほむらにゲンコツをもらったハルトはそう結論付けた。

「仕方ねえよな? まあ、折角遺跡の新発見に出会えたんだ。すぐに帰るのは勿体ねえだろ」

 光が消え、再び訪れた暗闇の中でコウスケの声が語った。

「こりゃ大学の単位どころの話じゃねえかもしれねえな。まさか、見滝原遺跡の奥にこんな隠しダンジョンがあったなんて、大発見になるぜ」
「帰れればね」

 ハルトは左右を見渡す。
 光のない遺跡は通路状のもので、その天井から落ちてきたようだった。幸い落石は道を塞いではいないものの、模様さえも見えないところで、ハルトたち四人は閉じ込められてしまった。

「マスター。懐中電灯は?」
「下敷きよ」

 キャスターの声に、ほむらが指さす。彼女の指先には、崩落で潰れた懐中電灯があった。

「貴方を連れてきてよかったわ。松菜ハルト」
「え?」
「貴方が懐中電灯よ」
「……それ本気で言ってるの?」
「ええ」
「おお! そいつは助かる!」

 すると今度は、コウスケがハルトの肩を掴んで揺らした。

「頼むぜハルト! お前だけが頼りだ!」
「俺の魔法は懐中電灯と同じレベルの価値かよ!」
『ライト プリーズ』
「おおっ! 光! 光よ!」

 コウスケがふざけて太陽に喜ぶ民族のようにハルトを崇める。
 ハルトは「やめなさい」とコウスケを立たせ、キャスターに向き直る。

「それで、情報通のキャスターさん。どっちに行けばいいの?」

 その問いに、キャスターは指をくいくいと動かした。

「ん?」
「光」
「お前も俺を懐中電灯扱いかよ!」

 この日、ウィザードライバー読み込みランキングはライトが更新するだろうと、ハルトは確信した。



「ライダーのマスター。光」
「ハイハイ」
『ライト プリーズ』
「おいハルト。こっちにもくれ」
「ハイハイ」
『ライト プリーズ』
「ライダーのマスター。光が消えている」
『ライト プリーズ』
「ハルト。光源が足りなくて写真写り悪ぃぜ。光くれ」
『ライト プリーズ』
「ライダーのマスター」
「ハルト」
『ライト プリーズ』
「お前らホントいい加減にしろおおお!」


 そろそろ耳に胼胝ができるほど、ハルトはライトを使った。
 遺跡の天井付近に出現した小さな太陽より、光が放たれる。
 唯一遺跡の文字を解読できるキャスターは、通路に記されている文字を凝視しながら、何度も何度もハルト(懐中電灯)のライトをつける。
 文字が比較的少ない反対側では、コウスケが新型のデジタルカメラで写真を連写している。まるでゴキブリのように壁一体を即座に移動した彼は、まさに興奮の絶頂のようだった。

「すげえ、すげえ! こんな壁画見たことねえ! うわ、この絵は何だ? 一体何を現してんだ?」
「多田コウスケ、少し静かにしてくれないかしら?」

 唯一することがないほむらが、瓦礫に座りながらコウスケに吐き捨てた。だがコウスケは耳を貸さず、それどころかキャスターの肩を叩いた。

「なあ、なあ! キャスター、あそこには一体何て書いてあるんだ?」

 キャスターは少し顔をへの字にしながら、コウスケが指さす壁を見る。ちょうどそこで、光が消えた。

「おいハルト! ライトプリーズ」
「お前こっちもそろそろ疲れてきてるの分かってる?」
『ライト プリーズ』
「お、光った! で? みなまで言ってくれキャスター。あそこ、なんて書いてあるんだ?」
「『ラ・ムーを讃えよ』」
「ほうほう。ラ・ムー?」
「かつてのムーの皇帝の名だ。神官として、神の言葉を告げた記憶もある」
「ほうほう。お前、ムーに行ったことあるのか?」

 コウスケの質問に、キャスターは頷いた。

「一度だけ。ムーとの戦いの中で、一度だけ時の我が主がムーに攻め込んだことがあった」
「マジかよ……お前歴史の体現者じゃねえか」
「確か、彼がムー大陸を大きく変えたはずだ。より力を得たものにしたのは、一重に彼の御業だったな」
「すげえ王様だな」
「もういいな?」

 キャスターは、再び通路の文字の解読に戻った。

「……マスター」
「何か分かったの?」

 待ってましたと言わんばかりに、ほむらが立ち上がる。

「こちらです」

 キャスターは通路の先を指さした。

『ライト プリーズ』
「ハルト。お前、もうだんだん何も言わなくなってきたな」
「俺はもう、ライトすることしかできない。俺は全自動ライト製造機だ」
「それは便利ね。ぜひ一家に一台欲しいわ」

 何度もライトの指輪を使いながら、ハルトはキャスターの先導の元歩いていた。
 時折キャスターは足を止め、壁の文字を読み取る。そのたびに、あった分かれ道を選んだり、隠し扉の位置を割り当てたりしていた。

「なあ、これって俺たち、もしかしてキャスターがいなかったら永遠に迷子になってたんじゃない?」
「みなまで言うな。自分でも悲しくなる」

 コウスケとひそひそ話している間も、キャスターは進んでいく。
 そして。

「……あれ?」

 ハルトは、体に違和感があった。

「どうした?」
「今……なんか踏んだような……」

 足元の違和感の正体を探るべく、ライトで視界を照らす。
 綺麗に敷き詰められたブロックの一点のみ、意図的に開かれたであろう窪み。
 それがスイッチだと、ハルトは認めたくなかった。
 そして、ズドンと重い音が背後から聞こえてきた。

「何だ?」

 能天気に後ろを向くコウスケ。
 ハルトは冷や汗をかきながら、ライトを使う。

「ねえ、こういう古代のダンジョンで出てくるのって……」

 ライトで闇を照らし出したその中に現れた。
 巨大な、丸い岩。

「やっぱりか!」
「ごめんなさあああああああい!」

 ハルトとコウスケは大声とともに駆け出した。
 先行していたキャスターとほむらも異常に気付き、一足先に逃げ出している。

「なあ、ハルト!」
「なに!?」
「よくよく考えたら、この岩ぶっ壊せばよくね?」
「ああ、それもそうだな。ナイスアイデア!」

 ハルトは走りながらトパーズの指輪を取り出す。ドライバーオンでウィザードライバーを出現させた。

『シャバドゥビ……』
「変身!」
『ランド プリーズ』
「ああ、それって最後まで聞かなくてもいいんだ」
「実は必要なかったりする」

 ハルトの前に、魔法陣が出現する。通過し、ランドスタイルになった。

『ドッドッ ド・ド・ド・ドンッドンッ ドッドッドン』
「よし、これなら……」

 ウィザードは立ち止まり、、そのままディフェンドの指輪を中指に入れる。
 このまま『ルパッチマジックタッチゴー』という音声の中で指輪を使えば、土の壁が現れるはずだが。

『エラー』
「「は?」」

 ウィザードとコウスケは一瞬時が止まった。

「……テイク2」
『エラー』
「「何で!?」」

 もう巨岩が迫ってきている。

「おいお前戻ってるぞ!」

 コウスケの言葉に、すでに自分の姿がハルトに戻っていることに気付く。
 ハルトはもう一度変身しようとランドの指輪を使う。だが、帰ってくるのは『エラー』。

「魔力切れ!? あのライトそこまで消費量はないはずなんだけど!」
「みなまで言ってる場合か!? とにかく逃げるのが先だ!」

 コウスケに腕を引っ張られ、ハルトは改めて逃げ出す。

「でも、まだ魔力はあるはずなんだけど……」
「まだ言うか!」
『ライト プリーズ』

 ライトだけならばまだ使える。
 変身ができなくなった現状に、ハルトは苦悶の声を上げた。

「でも、岩よりオレたちの方が速えみてえだからラッキー……」

 コウスケの言葉は、だんだん細々と消えていった。
 ずいぶん前に走っていたはずのほむらがヨレヨレになっている。そのまま、ハルトとコウスケが追いついた。

「あれ? ほむらちゃん……もしかして……」
「ぜえ、はあ、ぜえ、はあ……」

 本気で疲れ果てた顔で、ほむらはハルトを見上げる。

「運動苦手?」
「う、うるさい!」

 ほむらは怒鳴った。

「魔法少女に、変身できれば、こんな罠、どうってこと、ないのよ……! なんで、生身の体に、戻ってるのよ!」
「……やばい。なんか、無理するほむらちゃんが可愛く見えてきた」
「殺すわよ! ……だいたい、何で、変身、出来ないのよ!」
「変身できないの、君も?」
「……っ!」

 ほむらはきっと睨む。

「こんな、ところで、こんな、バカみたいな罠で……」

 ほむらの足は、ハルトよりも後ろに下がっていった。
 そうして、ほむらがぺしゃんこになる寸前。

「頼む! コネクトは使えてくれ!」
『コネクト プリーズ』

 天の行幸か。現れた魔法陣からウィザーソードガンを取り出し、その刃先をほむらのすぐ後ろに投影する。ハルトはそのままほむらを抱き寄せ、ウィザーソードガンの元に押し倒す。

「松菜ハルト!?」
「静かに!」

 上手く行くかは賭けだった。
 巨岩はウィザーソードガンを起点にジャンプ。ハルトとほむらを飛び越え、そのまま先に転がっていった。

「うおおおおおおおおおおお!?」

 そのまま、岩はハルトたちのことを忘れたように、コウスケとキャスターへ走っていった。



「お、おい! 何立ち止まってんだよ! 逃げろ!」

 コウスケは、目の前のキャスターへ避けんだ。
 彼女はなぜか立ち止まり、こちらに向けて腰を落としている。

「……」

 キャスターは静かに息を吐く。コウスケが彼女と入違った時、コウスケはキャスターの目を見て背筋が凍った。
 そして。

「はっ!」

 生身のキャスターは、その拳を巨岩に叩き込む。スポンジ製だったかのような埋め込み具合とともに、岩石は粉々になった。

「________」

 コウスケはあんぐりと開いた口が塞がらなかった。岩石の雨のなか、キャスターはコウスケに振り替えることなく告げた。

「古代ベルカ式体術の一つ。この遺跡の中では、術式を組むのに少し手間取った」
「手間取った……ねえ……」

 その割には涼しい顔をしている、とコウスケは思った。 
 

 
後書き
ハルト「ほむらちゃん、大丈夫?」
ほむら「……礼は言っておくわ。松菜ハルト」
ハルト「どもども。もっと言ってくれてもいいけど」
ほむら「……私たちは敵だって……さっきも言ったわよね?」銃ジャキッ
ハルト「ごめんなさい調子に乗りました」
ほむら「まあ、ここで荒事は止めておくわ。それより、キャスターたちを追いかけないと」
ハルト「コウスケは潰れても心配なさそうだけどな……」
ほむら「……」グッ
ほむら(よしっ! ラッキースケベから始まって、普段はツンツンしていて、いざという時に寸でのところで助けてもらった! これは、完全なるヒロインムーブ! メインヒロインの座は私がいただく!)
ハルト「どうしたの?」
ほむら「何でもないわ。それより、ライト」
ハルト「はいはい」
『ライト プリーズ』
ほむら「それでは、今日のアニメ、どうぞ」
ハルト「この暗闇でやるんだ」



___いつも いつも あなたのそばで 愛を強く抱きしめたいよ___



ほむら「C³(シーキューブ)ね」
ハルト「2011年の10月から12月までのアニメだな」
ほむら「意思をもつほどに呪われた道具が、その呪いを解こうとする物語ね」
ハルト「あと、色々と際どいシーンも多いな」
ほむら「もしこの呪いの道具がこの遺跡にもあったら、「呪うぞ」とか言われるわね」
ハルト「この白穂って子、ほむらちゃんに似てるね」
ほむら「似てるかしら?」
ハルト「特定の女の子に凄まじく執着するところとか。あと中の人」
ほむら「私が一体誰に執着しているっていうの?」
ハルト「まさか君自覚ないわけでもないだろうに」 
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