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大阪の夜行さん

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第三章

「いたよな」
「ええ」
 彼女は真剣な顔で答えた。
「私も見たわ」
「そうだよな」
「あれがね」
「夜行さんだな」
「間違いないわね」
「聞いてる姿のままだ」 
 それはというのだ。
「鹿児島でな」
「あと大学というか学園の方にも出るっていうけれど」
「その姿のままだったな」
「お馬さんもね」
 こちらもというのだ。
「首がなくて」
「そうだったな」
「いや、本当に出たのね」
「大阪でもな」
「そうね、若し今あの道を歩いていたら」
「頭に草履、靴か」 
 今履いているのはそれなのでこう述べた。
「頭に置いてな」
「それで道の端に平伏ね」
「そうしていないとな」
「あのお馬さんに蹴られるわね」
「それでお陀仏だったよ」
「そうだったわね」
「いや、通らなくてよかったな」
 あの道をというのだ。
「本当に」
「そうね、じゃあね」
「今からお寺行ってな」
「そしてね」
「神社にも行って」
 そうしてというのだ。
「お参りしような」
「あと出店にもね」
 こちらにもというのだ。
「行ってね」
「そしてな」
「遊びましょう」
「そうしような」 
 それがデートの目的だからと話してだった。
 拓也は彼女と大晦日そして新年のデートに行った、お参りもしたが食べて遊ぶ方が主体だった。そして昼に家に帰ったが。
 夫と共におとそとおせち料理を楽しんでいた。姉の玲美に大晦日に見たものを話した、そうするとだった。
 姉は酔っている赤い顔でこう返した。
「お姉ちゃんの言った通りでしょ」
「ああ、大阪だからな」
「まさかと思ってたのね」
「流石に出ないってな、けれどな」
「あそこは出るのよ」
「その夜行さんが」
「だから皆大晦日の夜はあの道を歩かないのよ」
 そうしているというのだ。
「ご近所の人達はね」
「そうなんだな、けれどな」
 拓也は姉が出したおとそを受け取って飲みながら言った。
「やっぱりここ大阪だろ」
「それでどうして夜行さんが出るかっていうのね」
「あれ俺達の地元の妖怪だろ」
 鹿児島のというのだ。
「何ていってもな」
「ええ、それは多分ね」
「多分?」
「私達にも関係あるのよ」
 姉も飲んでいる、そうしつつ弟に話した。 
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