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真・恋姫†無双 劉ヨウ伝

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第107話 難楼 前編

結局、白蓮とは話す機会を作ることは叶いませんでした。

彼女は上谷の烏桓族討伐の決着を見届けると配下を連れ、郡へと戻っていきました。

遼西の烏桓族の動きを警戒してのことでしょうが、私と顔を会わせるのが気まずいのだと思います。

私も上谷郡での戦後処理を終えれば、遼西郡の烏桓族討伐のために郡に出向ので、その時にわだかまりを解消すればいいでしょう。

難楼を屈服させたことで、今まで日和見をしていた烏桓族を筆頭に、私に反抗的だった烏桓族も私に恭順の意を示してきました。

幽州で勢力的に一番の難楼を無条件降伏させたのですから当然の結果です。

私に対し反抗的だった烏桓族の族長の中には遼西の烏桓族討伐の折に先陣を勤めると申し出てきた者もいました。

彼らも必死なのでしょう。

これから幽州の烏桓族の立場は最悪です。

私にその気が無くても、彼らが漢人たる私に屈服した事実は変わりません。

幽州の民はこぞって、烏桓族を弾圧することでしょう。

白蓮達を見ていてそれを予感できます。

私に最初から恭順している烏桓族は私の保護を受けることができますが、それ以外の烏桓族は身の安全を保証する術がありません。

だからこそ、彼らは私への忠誠を示そうと躍起になっているのでしょう。






私は今回の烏桓族討伐に同行している武将達を全て招集し軍議を開くことにしました。

私が美女を献上させた件の経緯は冥琳を通して周知しています。

ただ、武将達は私の口から、ことの真偽を聞きたい様子です。

「美女の献上の一件は他意はない。難楼に降伏条件を飲ませるためだった」

私は武将達一人一人の顔を見回しました。

「主は難楼に降伏を促すためにあのような条件を突きつけたのですか?」

星は要領を得ないという表情で尋ねてきました。

「ああ・・・・・・。最初の降伏勧告で難楼は拒否してきた」

「正宗様が難楼に掲示された降伏条件は全面降伏とはいえ、甘々な内容でした~。私でも勘ぐりますね~」

風が私の話を捕捉するように言った。

「風、冥琳殿から聞いているので理解はしている。結果論から言えば策は正しかったのだろう。しかし、常識から考えれば、降伏を条件に女を差し出せなどと言えば、余計に拒否される気がするのだが」

「幽州で反乱を行った彼らは虐殺されるのが当然です~。それにも関わらず甘い降伏条件を突きつけられ、それを信じると思いますか?」

風はアメを舐め星だけでなく、周囲の武将の様子を窺っていました。

「まあ、信じないわな。大将がお人好しな人間と知る訳もないからな」

真希((太史慈))が腕組みをしながら、得心したように頷きました。

「正宗様、感動しました!」

泉((満寵))は私を見つめ、胸の当たりで手を組み瞳を潤ませています。

他の武将達も私の行為を理解したようです。

「しかし、面倒なことになりましたね。正宗様、今回の一件は後を引きますぞ」

稟は私を厳しい表情で見ました。

「幽州の民の受けはあまり良くないです。女を対価に憎い烏桓族を許したと思われることは目に見えています。それは、今後の正宗様の治世で挽回できますが、当面は痼りが残りますぞ。問題なのは烏桓族の方でしょう。多分、正宗様を無類の女好きと勘違いし、自分の部族の女を献上してくるでしょうね。彼らにしてみれば、正宗様のお側に近づく機会を得る好気です。今後、烏桓族の立場が悪くなることを考えれば、少しでも良い条件を引き出したいはずです」

「それは解決する方法はある」

冥琳が私と稟の会話に割り込んできました。

「正宗様が烏桓族から側室を取れば済む」

冥琳のその言葉に武将達が目を丸くしました。

彼女達の中には立ち上がった者までいます。

「それはどういうことです?」

星が鋭い視線を私と冥琳に向けてきました。

「言葉の通りだ。だが、私は本意でない。しかし、今後のことを考えればそうするしかない。私と烏桓族の女性が形だけでも婚姻関係にあれば、烏桓族達の立場もそう悪くはならないと思う。だから、烏桓族から1人側室を選ぶ。勿論、相手の気持ちを尊重するつもだ。後、冥琳を側室にすることが決まったのでよろしく」

私は武将達の表情を流すように見た。

冥琳からは3人と言われましたが、1人で十分です。

冥琳は先ほどの私の言葉を聞き漏らさずに聞いていたようで私を厳しい表情で見ました。

ただ、自分の結婚の話を入れたので直ぐに微妙な表情になりました。

「何ですと――――――!」

星は声を張り上げると、私に詰め寄ってきました。

「冥琳殿が側室とはどういうことです!」

星は烏桓族の女性を側室の話を無視して、凄みの効いた表情で私を凝視しました。

「え・・・・・・と、流れで・・・・・・。あははは。冥琳は綺麗だし、仕事が出来るし・・・・・・」

「主、私は素通りなのですか?」

「星、顔が近いぞ。それに少し恐い」

星は私を一睨みしました。

「星も綺麗だと思うぞ。本当だ。仕事も出来るし」

私は星の睨みに怖じ気づいてしまいました。

「ふっ」

星は私の様子を見て、軽く吹き出すと笑顔になりました。

「主はまだまだですな~。主の態度に免じて、今回は大人しく引き下がるとしましょう。主、無礼の段お許しください」

星は拱手をして謝罪を言うと自分の席に戻っていきました。

何だったのでしょう。

女性とのコミュニーケションは凄く疲れます。

考えてみれば揚羽と一緒の方が一番しっくりと落ち着きます。

ああ、揚羽が側に居て欲しい。

「コホンッ」

私の側で咳払いが聞こえました。

咳払いをしたのは冥琳でしょう。

「冥琳、なんだ?」

「今回、難楼より献上された女性より3人選ぶとなっていたと記憶にありますが」

冥琳は私に確認するように尋ねてきました。

「私には無理だ。譲歩して1人でお願いします」

最後は丁寧語で冥琳に言いました。

「駄目です。千名も献上され、1人では体面上よろしくないです」

「1人しか好みの女性が居なかったと言えば言いだろう」

「それでは烏桓族を増長させます。複数の女を側室にすることで、烏桓族を一枚岩にさせずに済みます。1人も2人も駄目です。3人だからこそ意味があるのです。烏桓族の立場を守ることも大事ですが、烏桓族が力を一つにするような事態は作ってはなりません。これは正宗様だけの問題ではございません」

冥琳は有無を言わさない表情で私に詰めよりました。

「やっぱり駄目か?」

「駄目です」

冥琳はきっぱりと言いました。

「分かった。私もこれ以上しのごは言わない」

私は渋々納得しました。

「一気に側室は4名ですか。主、もう後1人、2人増えても支障は無いですな」

星は私を見て、機嫌の良さそうな表情で言いました。

私はそれに何も言いませんでした。

気が重い。

麗羽の耳に入るのが凄く恐ろしい。

揚羽はこのことをどう思うだろう。

頭の中がぐちゃぐちゃになってきました。




「正宗様、気をしっかりとお持ちください。烏桓族討伐はやっと山場を超えたばかり、詰めを謝れば水泡に帰す可能性があります」

冥琳が私を労るように言ってきました。

「そうだな。風、稟、泉の3名は前へ」

私は気を取り直し、幽州支配の先駆けになる人事を行うことにしました。

後日、早馬で朝廷へ奏上するつもりです。

「風と稟、烏桓族討伐のためにの外交及び、補給線の維持をよくやってくれた。特に、風は難楼の降伏を纏め上げ、無用な血を流さずに済んだ功は大きい」

私は一呼吸置き、言葉を続けました。

「風、お前を上谷郡大守に任じる。稟、お前を幽州刺史に任じる。従事中郎の官職は今まで通り兼任してくれ」

風と稟は私の言葉に驚いていました。

「誠にございますか?」

稟が私の言葉を確認してきました。

「嘘ではない。両名とも良くやってくれた。私が幽州支配を固める為に尽力して欲しい」

「ハッ! この郭嘉、命に替えましても、正宗様の為に尽力いたします」

稟は拱手して私に礼を述べました。

「稟ちゃん、良かったですね~。幽州刺史の治所は上谷郡にあるので仲良くやりましょうね」

「ああ!」

風は稟に声をかけると私の方を向きました。

「正宗様、私は烏桓族を保護し、彼らが上谷郡の復興に尽力するように導けばよろしいのですね」

「そうだ。風、彼らの降伏を纏め上げたお前が適任だと思う」

「大守の地位に任じていただいた以上、頑張って働かせていだきます~。しかし、人材を回してください。できれば、武官の方をお願いします」

風は拱手して私に礼と希望を告げてきました。

「分かった。出来るだけ早く手配しよう」

幽州に進出して、急に人材不足になってきました。

朱里は上手いことやってくれているでしょうか?

彼女は武官の手配は無理そうなので、私の方でどうにかするしかないですね。

「泉、お前は上谷郡での烏桓族討伐では局地戦ながら戦功を上げたこと、白藤の監視も問題なくこなしてくれた。私は烏桓族討伐にあたり、朝廷へ私に護烏桓校尉の官位を与えるように上奏するつもりだ。よって、お前にはその属官の司馬に任ずようと思う」

「正宗様、お待ちください!」

泉は私の申し出に声を上げました。

「どうした?」

泉の態度に私は訝しい表情をしました。

「恐れながら申し上げます。今度の任務は私一人の功ではございません。無臣は兵卒の身ではございますが、将の器がございます。不遜な申し出ではございますが、司馬の官職は私でなく無臣へお与えください」

泉は拱手をして平伏したまま、私に言いました。

彼女は真面目な性格です。

彼女の話に嘘偽りはないと思います。

しかし、無臣は思った以上に優秀なのでしょう。

張純を討ち取った腕前なので武はそれなりのはずです。

「良いだろう。泉と無臣に司馬の官職を与える。共に励んでくれ。泉、無臣をここに呼べ」

「ハッ! 直ぐに呼んで参ります!」

泉は私の言葉を受け、嬉しそうに立ち去っていきました。
 
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