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窓の外の景色が好きな猫

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第一章

                窓の外の景色が好きな猫
 この時前田恵理は弟に頼まれて子猫を探すことをしていた、それで猫を保護しているボランティア団体を訪問した。背は一五六程で黒髪をセミロングにしていて色白でややふくよかな顔をしている。垂れ目が印象的で二十代後半で夫の賢治からはそろそろ肉付きがよくなっていて余計にいいと言われて内心ダイエットも考えている。
 そうして弟が好きだというタイプの猫、黒猫の雌を引き取ったが。
 一匹の青い目のシャム猫に目がいった、その猫はずっとケージから外を見ていた。恵理はその猫を見て団体の人に言った。
「この子は」
「はい、誰かが何となくエイブラハム=リンカーンと名付けまして」
「アメリカの大統領ですか」
「野良で保護したんですがお医者さんに診せたら八歳位とのことで。雄です」
「八歳ですか」
「はい、野良は平均三年位ですから」
 それでというのだ。
「多分飼われていた時もありますね」
「捨て猫ですか」
「よくわかりませんが」
「それで飼い主さんもですね」
「首輪もないですから」
「そうですか。それじゃあ」  
 恵理はアメリカ大統領の名前のシャム猫がかなり気になった、それで自分も猫を飼おうと思ってだった。
 夫に携帯で連絡をして飼っていいかと聞くと夫は幸い休憩時間ですぐに返事をくれた。返事はいいというものだった。夫はむしろ妻より動物好きなので話はあっさりと決まった。
 それでその猫を引き取って車で家に帰るとだった。
 ケースに入れていたシャム猫はずっとその中から窓の外を見ていた、恵理はそれを見て随分車窓の景色が好きな猫だと思った。
 弟に黒猫、雄の彼を柔道家の様な外見の弟に渡すと彼はその猫をタマと名付けた。そして用意してあった首輪を付けて笑顔で名前を呼んだ。
「タマこれから宜しくな」
「ナ~~オ」
 彼等はすぐに打ち解けた。この時から弟と彼女の妻と息子そしてタマとの猫を頂点とした幸せな生活がはじまった。そして恵理もだった。
 シャム猫を家に入れると忽ち彼が家の中心になった、大統領の名前では長過ぎるので省略してエイブという名前にしてだった。 
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