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子猫のお母さんは犬

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第一章

               子猫のお母さんは犬
ロサンゼルスに住んでいるシャワ=プラットは家に帰ると夫のロナウドに一匹の子猫、黒と銀のトラ毛の彼を見せて話した。
「帰り道でね」
「拾ったのか」
「ええ、何か人があちこち見回っていて」 
 それでというのだ。
「どうしたんですかって尋ねたら」
「その子がいたんだな」
「母猫や他の子猫を探していたらしいけれど」
「見付からなかったんだな」
「ええ、それで探している人達がどの人もペット飼える状況じゃないらして」
「うちで引き取ろうってか」
「どうかしら」
 夫を見て尋ねた、二人共金髪だが夫の目は黒で妻の目は青だ。妻の背は一六七位で夫はそれより十センチは高い。
「この子は」
「そうだな」
 夫は妻に少し考えてから答えた。
「拾ったのも縁だしな」
「そうよね」
「うちはまだ余裕あるしな」
「もう犬二匹と猫一匹がいるけれど」
「もう一匹位はな」
「だからね」
 それでというのだ。
「この子もね」
「そうするか、それでその子雄か雌か」
「雄よ」
「そうか、じゃあそこから名前も考えてやるか」
「そうしましょう」
 夫婦ですぐに猫の名前を考えた、そして二人で話してだった。決まってからその子猫に対して言った。
「お前の名前はクレイショウだ」
「そうなったわよ」
「だからこれからはそう呼ぶからな」
「宜しくねクレイショウ」
「ニャア」
 子猫も応えた、そして。
 次に他の家族にも紹介した、まずは白いポメラニアンだった。
「ロキシー、家で一番のお兄さんだぞ」
「十一歳よ」
「キャン」
 そのロキシーが挨拶する様に明るく鳴いた、だがクレイショウは動じない。夫婦はその彼を見ながら肝が据わっていると思いつつさらに紹介していった。今度は黒とかなり濃い銀色のトラ模様の猫だった。
「ラッキー、女の子で三歳だ」
「貴方のお姉さんよ」
「ナア」
 ラッキーもクレイショウに対して鳴いた、やはりクレイショウな動じない。見ればラッキーも警戒はしていない。二匹は友好的だった。
 そして最後の一匹黒のピットブルだが。
「ロキシー、五歳のお姉さんだぞ」
「この娘も宜しくね」
「ワン」
 夫婦が紹介するとだった。
 ロキシーは自分からクレイショウのところに来た、そうして。
 彼に頬を摺り寄せてきた、これには夫婦も驚いた。
「すぐにか」
「頬を摺り寄せてきたわね」
「自分から近付いてな」
「これは驚いたわ」
「普段から優しい娘だけれど」
「今回は特にね」
 優しいというのだ。
「初対面なのに」
「そうするなんてな」
「これはうちにすぐに溶け込みそうだな」
「ロキシーがこんなに優しいとね」
 二人はクレイショウの将来に希望を見た、だがそれは普通の希望であった。
 希望は時として裏切られる時もある、だがそれが絶望や失望ではなくより大きな希望の場合もある。それがこの時だった。
 ロキシーはいつもクレイショウの傍にいる様になった、彼が眠くなると身体を預けその寝床になり。
 優しい目を向けて何かと面倒を見た、それでクレイショウはケイシーやラッキーとも仲良くなっていたが。
 特にロキシーとそうなっていた、二匹はいつも一緒にいて。 
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