| 携帯サイト  | 感想  | レビュー  | 縦書きで読む [PDF/明朝]版 / [PDF/ゴシック]版 | 全話表示 | 挿絵表示しない | 誤字脱字報告する | 誤字脱字報告一覧 | 

緋弾のアリア ―瑠璃神に愛されし武偵―

作者:アキナ
しおりを利用するにはログインしてください。会員登録がまだの場合はこちらから。 ページ下へ移動
 

Ⅰ La bambina da I'ARIA…
  第015弾 天上の舞台で舞うは…… 

 
前書き
凪優 「どうも、今回は潜入から始まる水無瀬凪優です」
桃  「どうも、まだ本編の出番が来ない夾竹桃よ」
凪優 「そういえばさ、私思うんだよ。 モモ」
桃  「いきなり何を言い出すのよ」
凪優 「私達って似た者同士だなって」
桃  「私の反応待たずに始めるのね」
凪優 「良いじゃない。そんな些事」
桃  「ちっとも些事じゃないのだけれども。 でも、その通りよね」
凪優 「でしょ? お互い兄貴や姉貴に苦労してるし」
桃  「否定はしないわ」
凪優 「それにその事で胃薬仲間だし」
桃  「勝手に仲間にしないで頂戴」
凪優 「いや、事実じゃん」
桃  「………………私は認めたくないけど」
凪優 「それ以外にも色々とあるだろうけどね」
桃  「急に全部聞き出したくなったわ」
凪優 「そう? じゃあタイトルコールの後に語らいましょ」
桃  「そうね。『第015弾』」
凪優 「『天上の舞台で舞うは……』」
凪桃 「「どうぞ!!」」

案外似た者同士な二人がお送りしたまえがき ⑯ 完 

 
Side_Kotori(Nayu)

「あ、センパイ、いいですか?」
「ちょ……、いま潜入中なんだから、『綾瀬さん』とか『琴里ちゃん』とかにしてよ。亜璃珠」

 離陸直後のANA600便で潜入中の私に話しかけて来たのはイ・ウー研鑽派現役生、神楽坂(かぐらざか)亜璃珠(ありす)だった。
 完全に私のことをイ・ウー在籍時と同じノリで話してたので、私の身バレ防止の為、注意する。

「いやいや、別に違和感はないですからいいじゃないですか」
「そういうもんかね」
「そういうもんですよ」

 妙な説得力があったので納得してしまう私である。

「で、何か報告があったんじゃないの?」
「あ……そうでした。えっと、予定通りなのかは知らないですけど、遠山キンジが搭乗したようです」
「そう。アイツがいないと困ったことになるかもだし良かったわ」
「あと、やっぱり乗り込んでました。《《アイツも》》」
「そっちも想定内ね。じゃなきゃ折角の潜入も不発になっちゃうし良かったわ」
「ま、不発でも良いじゃないですか。私的には」
「『私的には』っておま…………」

 私は亜璃珠の私情ダダ漏れっぷりにドン引きしていた。
 絶対にコイツは私のCA姿の記録を夾竹桃(モモ)に売りつける気だ。
 そうとなれば次の夏コミの題材が私になってしまう。それだけは絶対に阻止せねば。
 そう考えていると亜璃珠は次の報告を始めていた。

「あと、懸念材料だった遠山潤(畜生)の存在は確認できませんでした」
「そっか。遠山潤(外道)は居なかったのね」
「はい。私の気配察知にも引っかかりませんでしたし」
「それなら確実ね。良かった、良かった」

 亜璃珠の言葉に安心の私である。
 私も気配察知の精度は高い方だが、亜璃珠の気配察知の精度は優に超える。
 亜璃珠の気配察知はSDAランク世界1位の人物と同等である。
 ちなみにそのSDAランク世界ならびにアジア1位の人物は高天原ゆとり(担任教諭)である。
 あの人の強さは語るまでも無いだろう。

「マジで良かったですよね。遠山潤(あの畜生)が乗ってなくて」
「マジそれな。私、遠山潤(畜生外道)乗ってたら9条破り確実だったわ」
「はい。私も遠山潤(こん畜生)居たらヌッ殺してますねwwww」

 黒い会話で盛り上がる私達である。
 亜璃珠はイ・ウーに入学した時から潤の被害者であり、この反応は当然だ。
 対する私は以前からも主戦派(イグナティス)研鑽派(ダイオ)で所属は違えど、理子絡みで度々胃薬案件なのはまだ堪えられた。
 しかし、さっきの一件で仏の顔は行方不明になったのでこの評価なのである。
 このまま、遠山潤抹殺(黒い会話)で盛り上がるのも良いのだが時間がない為、私達は報告確認に戻る事にする。

「ちゃんと配布してあるわよね? 転移陣のカード」
「はい。それはもうバッチリと」
「なら良し。これで死傷者を最小限までに抑えられるわね」
「ですね♪ ……あっ、もうそろそろ位置に着く時間ですよ」
「あ、もうそんな時間なんだ……。わかったわ」

 CAとして潜入している私は自分の持ち場に向かう事にする。
 さて……と。気引き締めて行かなくちゃな。

「〈当然でしょ。油断して早々に戦線離脱とか、勘弁被るからね? 凪優〉」
「わかってる」

 最後に瑠璃(相棒)と精神会話を交わし、私は持ち場に向かった。

Side_Out……


Side_Kinji

 あれから、全力で羽田に向かった俺は、急いでアリアが乗っているロンドン・ヒースロー空港行きANA600便の搭乗口に向かった。
 受ける刺激の種類にも寄るが、ヒステリア・モードは長くても数十分しか保たない。
 なので、空港第二ビルに到着した際には通常モードの俺へと戻っていた。……だからといって、歩を止めるわけには行かない。
 俺の推理が正しければ、アリアはもうすぐ会ってしまう。武偵殺しと。
 空港のチェックインを武帝徽章で通り抜け、金属探知器もスルーしてゲートへ飛び込む。
 アリア、そんなにイギリスに帰りたければ勝手に帰ってればいい。
 だが、もう、『武偵殺し』とは戦ってはいけない。
 アイツは俺より桁違いに強かった兄さんを斃したのだ。だから戦えばお前は怪我だけじゃ済まされない。殺される。確実に死んでしまうんだ。お前は!

 ボーディングブリッジを突っ切り、ハッチを閉じつつある600便に俺は飛び込んだ。
 その直後、俺の背後のハッチが閉ざされる。

「武偵だ! 今すぐ離陸を中止しろ!」
「お、お客様!? い、一体、ど、どういう―」
「悪いが、説明しているヒマなんか無い! 今すぐこの飛行機を止めるんだ!」

 CAはかなりビビった顔で頷き、2階へと駆けていった。
 CAがその場から立ち去った後、俺はその場で両膝を落としてしまった。
 強襲科(アサルト)を辞めてから時間が経って体力が落ちている状態での今回の全力疾走。
 正直言ってもう殆ど体力は残っていない。その証拠に息が切れている。
 おまけに「もう一歩も動けない」そんな感じがする。
 だが、これで離陸は中止出来たはずだ。ひとあ──(ぐらりっ)…………は!? 
 今、機体が揺れた!? って事は動き出してるってことか……! 
 どうしt―

「あ、あのぉお……」

 さっきのCAが戻ってきたようだ。
 そしてCAから結果を聞く。
 その結果は…………正直最悪だった。CAの話によれば、

『この飛行機の現在のフェーズは管制官からの命令からしか受け付けられない』

 ……とのこと。
 窓の外を睨めば飛行機は既に滑走路に入っていた。
 今、無理矢理でにも止めようとするものなら、確実に他の飛行機との衝突事故が起こってしまう。
 こうなってしまっては仕方が無い。作戦を切り換えるしかない。

『後手に回ったのなら、後手なりの戦いをするまでの話』

 こういう時に凪優がいたら、絶対そう言うだろう。
 このような場面では凪優はもの凄く頼りになる存在だ。故に

「なんで、こんな時に限っていないんだよ……」

 と思ってしまう。
 だが、居ないものは仕方が無い。取り敢えずはアリアと合流せねば。
 仕方がないのでさっきのCAを落ち着かせて、アリアのところに案内してしまおうとしたら、別のCAが通りかかったのでそのCAに案内して貰う。
 さっきのCAは放置になるらしい。
 そう俺を案内してくれたCA……名前は”綾瀬”というみたいだ。
 綾瀬さんに案内して貰い、まずはアリアと合流できた。ひとまず安心だ。

「キ、キンジ!?」

 まさか俺が自分の個室に入ってくるとは思わなかったのだろう。
 その証拠と言わんばかりに紅い瞳をまん丸に見開いた後、案の定というか、お約束というか、俺に詰め寄ってきたアリア。

「なんで……なんであんたがこんなところについてきちゃったのよ!?」
「なんというか…………カンだ」
「なにそれ。バッカみたい」
「いや、凪優が居たら絶対そう言うだろ」
「ああ言いそう。その凪優の姿見当たらないんだけど?」
「俺も知らん。『依頼が入ってる』としか聞いていない」
「そう。結衣も同じような理由ね。居たら此処に居るはずだし」
「あぁ、まぁな。……てかなんでわかるんだよ」
「だって、アンタが行動起こせばもれなくセットで結衣も付いてくるじゃない」
「アイツはポテトかなにかか? まぁ、それは否定せんが」

 そんな感じで話しているうちに機内放送が流れ、直後、機体が少し揺れる。
 それはいいが、さっきから大きく雷の音が鳴り響く度にアリアは強がってキッチリ怖がっていた。
 それを見た俺はこんな時に不謹慎だが笑いがこみ上げてきてしまった。
 しかし妙だ。なぜにこんな雷雲の近くを飛んでいるんだ……? 
 普通だったら有り得ないぞ? こんなの。
 よっぽど機長の運転が下手なのか、それとも運が悪いのか。
 そして、さらにさっきより大きい雷鳴が鳴り響く。

「キ、キンジぃ~~~~~~」

 さっきからベッドの中に潜り込んでいたアリアだが、遂に限界が来たらしく、毛布の中から涙声で席に座る俺の制服の袖を掴んでいた。
 流石にこれは笑えない。なので苦笑いしつつもアリアの恐怖を紛らわす目的でテレビをつける事にする。

「お主、この桜吹雪、見覚えが無ぇとは言わせねぇぜ!」

 お、丁度「遠山の金さん」やってるな。
 その主人公・遠山景元金四郎は俺の家のご先祖様であったりする。
 兄さん曰く、彼もまた、ヒステリアモードのDNAを持っていて……要は露出狂のケがあるようで、もろ肌を脱ぐことで体力・知力を高めることが出来たらしい。
 そんなことはさてお―(おい、子孫よ、先祖をもっと敬わ―)……? 誰だ、今の。ご先祖様本人が降臨なさったか? (←注:概ね当たってる)
 まぁ、無視だ、無視。
 こんな時に邪魔すんじゃねぇよ。非常時だけど。
 あんなアリアでも(←失礼)こんな時だけは平凡な女子高校生なんだ。そして、今の俺は平凡な男子高校生。
 だから……

「アリア……」
「キ、キンジ…………?」

 こうやって、震える手に手を添えてやって。
 普通のクラスメート……友達として。
 震えを和らげてやることぐらいはできる。
 アリアの指が、何秒かの躊躇いを見せてから俺の手を握り返そうとしたとき…………

 パァン、パパパパパパパァン((・д・)チッこの腐れリア充共がっ……!)

 音が、響いた。
 この音は雷鳴でも何でもない。
 俺達が聴き慣れた音。

 銃声。

 まるでこの空気を物理的にぶち壊すかのように。
 それは概ね、この甘くなりかけた空気をぶち壊すかのように。
 あと、なんか聞こえたからな。俺は『リア充』なんかじゃない。
 大切なことだから言っておく。

 そんなことはさておき、個室を出て狭い通路に出ると、

「な、なんなお……?」
「(´・д・`)ヤダ」
「シニタクナイ」
「懺悔する?」
「南無三」
「もうどうにでもなっちゃえい!」
「もう知らなくもなくもなくもない」
「なんなの? 危機感欠如してんの?」
「もうどっちなんだよ!」
「餅つけや」
「いや、餅付いてどうすんの!? 落ち着けや!」

 乗客・CAが騒いでいた。
 発言がギャグっぽく聞こえるが危機的状況であり、漫才とかの類ではない。
 あと、ツッコミ勢の意見には賛同する。

 その直後、騒いでた奴らの懐のカードが淡く光り、

 ひゅぱんっ

 そんな音と共に光に包まれて騒いでいた奴らの姿が消えた。
 ん……? これ、どっかで見たことが最近あるような……? 

 そう考えていたら、銃声のした機体前方……コックピットの扉が開け放たれていた。

「…………!」

 そこにいたのは、先程、放置されて頼りにならなかった間抜けCA。
 そして、そいつが引き摺っているのは機長と副機長。
 その二人は全く動いていない。
 刹那、その二人の懐も淡く光り出す。

 ひゅぱんっ! 

 再びそんな音と共に光に包まれ、二人の姿が消えた。

「…………!?」

 何かやった犯人であろうCAが目をまん丸に見開いて驚愕していた。
 ……? これはあいつがやったわけじゃないのか……? 

 じゃあ、いったいだれが……? 

 そう考えかけていたが、俺は慌てて拳銃を抜く。

「動くな!」
「|Attention Please.お気を付けくださいなのでやがりますのです」

 CAは胸元からピンを抜いた缶を放り投げる。

 …………っ!? まさか、ガス缶!? ……ヤバイっ!!! 

 俺はアリアを押し込むようにして個室の扉を閉めた。
 その瞬間、ぐらり。と機体が揺れ、ばちん。と機内の照明が消えた。

 刹那の暗闇の後、赤い非常灯が点った。

「アリア。あのふざけた喋り方…………あいつが『武偵殺し』だったんだ。やっぱり出やがった」
「『やっぱり』……? アンタ、『武偵殺し』が出るのわかってたの!?」
「ああ。さっき解ったんだよ。武偵殺しの奴はバイクジャック、カージャックで事件を始め、そしてシージャックである武偵を仕留めた。そしてそれは直接対決だった」
「……どうして」
「そのシージャックだけお前が知らなかったからだ。電波を傍受してなかったんだろ」
「う、うん」
「『武偵殺し』は電波を出さなかった。いや、出す必要がなかったんだ。何故なら、奴自身が直接乗っていて、船を遠隔操作する必要がなかったからな」

 あの兄さんが逃げ遅れるなんて有り得ないしな。

「ところが、バイク・カー・シーと大きくなっていた乗り物がここで一旦小さくなる。そう、俺のチャリジャックだ。そしてその次がバスジャック」
「……! まさか……」
「ああ。その通りだ、アリア。コイツは初めからメッセージだったんだよ。お前は最初からあいつの手のひらの上で踊っていたに過ぎなかったんだ。ヤツはお前の母親・かなえさんに罪を被せ、お前に宣戦布告をした。そして、兄さ―いや、シージャックで殺られた武偵と同じ3件目でお前と直接対決しようとしている。そう、今のこの状況、ハイジャックでな」

 俺の推理を聞いたアリアはその悔しさにぎりぃっと歯を食縛る。
 そこで、ベルトの着用サインがワケのわからない音と共に点滅を始める。

「和文モールス…………」

 アリアが呟き、俺はその解読を試みる。

 オイデ オイデ イ・ウー ハ テンゴク ダヨ
 オイデ オイデ ワタシ ハ イッカイ ノ バー ニ イルヨ
 ワナ ナンカ ジャナイ ホント ダヨ
 ホント ノ ホント ダッテ バ
 ソコ デ チョクセツ ヤロ ウ ヨ
 モシ コナ カッタ ラ
 ドウ ナッテ モ シラ ナイ ヨ

「……必死に誘ってやがる」
「なんか罠臭いけど上等! 風穴あけてやるわ」

 えらく必死に呼びかけていたのが引っかかるが、俺達は1階のバーに行く事にした。

 俺達は慎重に1階に降りていき、バーのカウンターを見ると、そこには、フリルだらけの改造制服を着ていた。
 その制服は東京武偵高校のものであり、そして、さっき理子が着ていたやつだ。

「今回も、キレイに引っかかってくれやがりましたねぇ?」

 べりっ。そう言いながら、CAは顔の薄いマスク状の特殊メイクを自ら剥いだその中から出てきたのは…………

「──理子ぉ!?」
Bon soir(こんばんは)

 手に持っていった青いカクテルを飲み、ウィンクしてきたのは、《《やっぱり》》理子だった。

「アタマとカラダで人と戦う才能ってさ、けっこーな確率で遺伝するんだよね。武偵高にも、お前達みたいな遺伝系の天才がわんさかいる。でも、お前の一族は特別だよな。なぁ、《《オルメス》》?」
「……! アンタ、それを一体どこで……! そしてアンタは一体何者!?」
「理子・峰・リュパン・4世。……それが理子の真名……本当の名前」
「リュパン……あのフランスの大怪盗のか……!?」
「そ。でも、家の人間はこのお母様が名付けてくれた『理子』っていうギザ可愛い名前で呼んでくれなかった。皆、呼び方が可笑しいんだよ」
「可笑しい…………?」
「4世。4世。4世さまぁー。だって。全くどいつもこいつも、使用人共まで理子の事そう呼んでたよ。酷いったらありゃしない」
「それがどうしたってのよ。『4世』の何が悪いってのよ」
「『何が』って……。巫山戯んな! 悪いに決まってんだろぉが!! アタシは数字か!? アタシはタダのDNAかよ!? アタシは理子だ!! アタシは数字じゃない!! ……ったく、どいつもこいつもよぉ!」

 理子が誰に言ってるかは不明だが、怒りをぶちまけ、そして本命はオルメス4世であるアリアだと言った。

「100年前、曾お爺様同士の対決は引き分けだった。つまり、アタシがオルメス4世であるお前を斃せば、曾お爺様を超えたって証明ができる。キンジ、ちゃんとお前も今回こそは役割果たせよ?」
「『役割』……だと……!?」
「ああ。オルメスの一族にはパートナーが必要なんだ。初代オルメスにも優秀なパートナーがいた。だから、条件合わせる為に、お前をアリアとくっつけてやったんだよ」
「俺と、アリアを…………お前が…………?」
「そっ。まぁ、凪優の奴が乗ってくるとは予想してなかったけどね。キンジのチャリに爆弾を仕掛けてわっかりやすぅーい電波を出してあげたの」
「あたしが『武偵殺しの電波を追ってる』って気付いていたのね!?」
「そりゃあ、一発で気付くよぉ。あんだけ通信科(コネクト)に出入りしてればさぁ。でも、キンジの方があんまり乗り気じゃなかったからさぁ、バスジャックで協力させてあげたんだぁ」
「バスジャックも…………!?」
「キンジぃー。武偵たるもの、どんな理由があったって、人に腕時計預けちゃダメだぞ? 狂った時間見てたらバスにも遅刻しちゃうからさぁー」
「…………。何もかも、お前の計画どおりだったってわけかよ……!」
「んーん。そんな訳無いじゃん。主に凪優のせいなんだけど。予想外のオンパレードだよ。一体、誰が、あんな方法で、しかも最速の10分で、バスジャック解決するなんて予想すると思うか!? フツーはしないでしょ! もう、なんなの!? あの無双っぷり。せっせと事前から仕掛けてたのを一瞬で無にされたんだよ!? そして、何より、キンジ、お前が活躍するはずが一切何もしてないじゃんかよぉ! 終始、何もしてないじゃんか! てめーはモブじゃねぇの! 主役なんだよ! おk?」
「……んな、こと言われてもなぁ…………」

 確かにあの時は、凪優と結衣の奴が無双してて俺の出番一切なかったけども。そんなこと言われる覚えはない。

「それにキンジが理子がやったお兄さんの名前を出すまで動かなかったのも意外だった」
「……兄さんを、お前が、お前が…………!?」

 兄さんの名前を出された今の俺は頭に血が上ってきており、冷静ではいられなくなっている。

「くふ。ほら、アリアぁ。パートナーさんが激おこだよぉ? 激おこプンプン丸だよぉ? 一緒に闘ってあげなよぉ!」
「それにキンジ、イイコト教えてあげる。あのね、双子のユーくんは……今ね、理子の、恋人なの」
「あの難攻不落という文字が服着ている外道に遂に春が来たのは心底どうでも良いわ。勝手にくたばってろって感じだし」
「……キンジ、何その評価」

 理子の一言で急に冷静になった俺だった。何故ここで潤の名前を出すんだ。明らかにミスだろ、理子。

「あー……、うん。アリア、それについては理子も結構妥当な評価だと思うよ。この場面でこの発言は明らかにミスったね。コレ」
「待ちなさいよ、そのキンジの双子の遠山潤? とか言う奴はどんな奴なのよ!?」
「数多の恋愛フラグ全てをクッソ笑いながらバッキバキにへし折ってくれるアンチクショー」
「女心を笑顔で蹂躙していく事については神級の天才」
「どう聴いても、ロクデナシにしか思えないんだけど!? 何かあたしもそいつをフルボッコにしても良いかしら?」
「「どうぞ、ご自由に思うがままに存分に死ぬ半々々々々々々歩手前までフルボッコになさってください。寧ろ、超助かる」」

 アリアの言葉に敵であるハズの理子とまさかの意見が同調した瞬間だった。
 あぁ……ここにも遠山潤(あの野郎)の事について同じ思いの奴が居たのか。
 その時だ。「あっ、それとね……」と理子が思い出したように言葉を紡いだ。

「あなたのお兄さんとも今は恋人なの」
「兄さんの事についてはいい加減にしろぉっ!」

 再び、兄さんの名前を出された今の俺は頭に血が上ってきており、冷静ではいられなくなってくる。

「キンジ! 理子はあたし達を挑発してるわ! 落ち着きなさい!」
「これが、落ち着いていられるかよ!」
「……だよねぇ。でもさ、まずは落ち着いたら? じゃなきゃ、勝てる戦いも勝てないぞ?」
「「「え……!? だ、誰!?」」」

 突如現れたCA。確か、先程俺をアリアのいる個室まで案内してくれた綾瀬とかいう人。
 何故、こんなところに…………? 
 しかも、あの現れ方、まさか瞬間移動か……? 

「……てめぇ、一体何者だ!?」
「あらあら。私が誰って……気づいてなかったのかしら? 理子」

 そう言って、顔を手で撫でる動作をする綾瀬さん。すると、彼女を覆っていた光の粒子が霧散していく。
 その粒子を纏っていたのは、東京武偵高校の制服を身に纏った同級生・水無瀬凪優だった。
 容姿は、前のチャリジャックの時とは違う。どっちかといえば、結衣との模擬戦の時の姿の方に近い。

「な、凪優……? アンタいつからここに…………!?」
「ん? えっと、アリアが搭乗手続きしてこの飛行機に乗り込む前から……かな?」

 アリアの言葉に悪戯っぽく答える凪優。

「え、でも、凪優、アンタ確か……」
「あんなの、でっち上げに決まってるでしょ? さて…………」

 アリアの問いにアッサリと答え、凪優は理子の方に視線を向けた。

「改めまして、Buona giornata(ごきげんよう)。峰・理子・リュパン・4世サマ。イ・ウーNo.2 魔術師・水無瀬凪優でございます」
「なっ……凪優、テメェが『魔術師』だと…………!?」

 凪優の言葉に驚愕の理子だったが、何か知っているのか……? 
 それと、まさか凪優もイ・ウーのメンバーだとは思わなかった。

「そうよ。まぁ、もう一つ肩書きもあるけどね。さて……キンジ」
「な、なんだよ……?」

 突然話を振られた俺は戸惑いつつも答える。

「お前が今戦ったってハッキリ言って足でまといだ。だから、ちょいと頭冷やしてきな」
「な、何を言って…………」

 俺は凪優の言っている事が理解できなかった。

「まんまの意味だ。こっちは私が引き受ける。だからどこかで頭冷やして来い」
「凪優……」
「大丈夫だって。アリア。《《こんな若輩者に》》私負けないし。だから……ね?」
「……わかったわ。死ぬんじゃないわよ」
「わかってるって」
「ホラ、キンジ、行くわよ!」
「え、ちょ…………おい……!」

 俺はアリアに引き摺られ、バーを後にした。

Side_Out……



Side_Nayu

 キンジはアリアに引き摺られ、何処かに消える。おそらくはさっきの個室だろう。ちょうど真上だし。

「おい、凪優、てめー、このアタシを舐めてんのか?」

 そう考える間もなく理子の怒号が飛んでくる。

「あら、そんな事無いんだけど。でも負けないし」
「上等。泣きっ面かかせてやんよ」
「やれるもんならやってみな……!」

 その直後、私と理子は武器を携えぶつかりあった。


 続くんだよ。
 
 

 
後書き
葵 「さて、如何だったでしょうか」
理子「あおちー、言いたいことは終わったか……?」
葵 「えっと、何故に裏理子なってんのさ」
理子「なんでこんなにアリア達煽ってんのさ!?こんなキャラじゃないし!」
葵 「いや、黒幕感あっていいかな……と思った思いつき」
理子「それで許されるわけないじゃん!」
葵 「じゃあ……(ゝω・)テヘペロ?」
理子「急に中の人ネタ使わないでよ!」
葵 「じゃあ……『》にげる』??」
理子「逃げないでよ!」
葵 「また次回?」
理子「終わらさないで!! まだ続いてるし!!」
葵 「そらそうか。当初ならここで終わったのに」
理子「メメタァな事を……」
葵 「事実じゃん」
花梨「最後に私も出てたけどね」
理子「そういえばそうだったね。 花ちゃん」
葵 「あの当時は花梨の設定すらなかったけどね」
花梨「そういう葵も存在すらなかったじゃん」
理子「確かに最初は『蒼』表記の作者出演だったよね」
葵 「そうそう。だが後々このキャラに落ち着いちゃったんだよね」
花梨「リメイク前を知らぬ読者さんは疑問でしょうけどね」
葵 「まぁ、リメイク前なんて無かった事になればいい」
理子「なんてことを言ってんのさ、あおちー」
花梨「葵はほっといて謝辞行きましょ?」
理子「そだねー」
葵 「スルーなの!? 今回も私の扱い酷くない!?」
花梨「この話を読んでくれて、更に評価してくれている読者様にも感謝感激雨霰!御蔭で葵は執筆頑張れるから今回も、次回以降も読んでくれると嬉しいな!」
理子「あおちーのモチベーションと集中力次第で次回の投稿時期が未定なんだけど、次回もなるべく間隔が空かないように頑張るからよろしくなんだよ!」
葵 「と、言う訳で、これからもよろしくお願いします」
理子「それでは、また次回」
花梨「このあとがきの場所でお会いしましょう。それでは……」
3人 「「「ばいばいっ!!!」」」

リメイク前も流用しつつ現在のスタイルになったあとがき ⑯ 完 
ページ上へ戻る
ツイートする
 

感想を書く

この話の感想を書きましょう!




 
 
全て感想を見る:感想一覧