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孤独と不安からの解放

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第二章

「聞いてはいたけれど」
「ええ、かなりね」 
 妻も猫を見つつ夫に話した。
「警戒しているわね」
「部屋の隅から出ないな」
「隠れてね」
「しかもかなり警戒している目だしな」
「本当に過去かなりの目に遭ってきたのね」
「そうでないとな」 
 それこそとだ、夫は妻に話した。
「ここまで怯えないな」
「そうよね」
「全く。どんな生きものでも酷いことするなんてな」
「絶対にあってはいけないわ」
「人間じゃなくてな」
「その通りよ。それでね」 
 妻は夫にさらに話した。
「私考えてるけれど」
「この娘が心を開いてくれなくてもな」
「私達にね。そうしてくれたら嬉しいけれど」
 それでもというのだ。
「そうなってくれなくてもね」
「いいな」
「この娘がこの家で幸せだったら」
 それでというのだ。
「いいわ」
「そうだな。じゃあいつもご飯やお水をあげてな」
「ゆっくり寝かせてあげてね」
「そしてな」
「もうね」
 それこそというのだ。
「何があっても暴力なんて振るわれない」
「そういう生活を送らせてあげよう」
「フラットとフォルトみたいにね」
「ナア」
「ニャア」
 白猫と黒猫がそれぞれ鳴いた、二匹共雌である。妻は夫に彼女達も見てそのうえで話した。こうしてだった。
 シンフォニーを飼いはじめたがやはりシンフォニーは心を開かない。夫婦はそれでもいいと思っていたが。
 ある人から聞いた話をだ、妻は夫に話した。
「刑務所の更正カリキュラムでシンフォニーみたいな生きものと一緒に過ごしてもらうものがあるそうなの」
「刑務所の?」
「ええ、受刑者の人も生きものも一緒にいて癒されあってね」
 触れ合うことによってというのだ。
「それで受刑者の人達の犯罪に至った荒んだ心を癒して更正して」
「生きものも人に触れてか」
「心を開いていくそうなの」
「それじゃあ」
「シンフォニーを暫く預けて」
 その更正カリキュラムにというのだ。
「心を開いてもらおうかしら」
「そうだな、幸せならいいと思っていたけれど」 
 夫は妻に考える顔になって答えた。
「やっぱりな」
「心を開いた方がね」
「シンフォニーにもいいしな」
「私達も嬉しいから」
「ああ、それじゃあな」
「カリキュラムにね」
「シンフォニーを預けよう」
 こう話してだった。
 シンフォニーは暫くカリキュラムに預けられた、そして暫くしてだった。
 シンフォニーは帰って来た、その時には。
「ニャ~~~」
「ああ、本当にな」
「心を開いてくれたわね」
 二人は自分の方から近付いてきたシンフォニーを見て言った。
「歩み寄ってくれるなんて」
「前とは全く違うな」
「本当にね」
「そうだな、カリキュラムの中でな」
「シンフォニーは変わったのね」
「そうだな」 
 夫はそのことを実感して妻に話した。 
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