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生後一日

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第一章

               生後一日
 アメリカのボルチモアで看護士をしているエレン=ローズは勤務している病院から家に向かう帰り道の道の端で何かを見付けた、それは。
「猫?」
「ニャ~~~・・・・・・」
 まだ目は開いていない、身体の真ん中と足首が白いが基本は黒い猫だった。その猫は実に小さかった。
 エレン、黒髪でややふくよかな身体で青い目で長身の彼女はその猫を拾うとすぐに帰り道にある動物病院に連れて行った、すると獣医は彼女に言った。
「この子はまだ一日目ですね」
「一日目っていいますと」
「生まれてです」
「生まれてすぐですか」
「はい、この時の子はです」
 その時の猫はというのだ。
「もういつもミルクやトイレの世話をしないといけないです」
「まだ何も知らないし出来ないので、ですね」
「人間の子供と同じです」
 こうエレンに話した。
「ですから母猫が必要ですが」
「母猫は」
「いないですね、どうも野良猫なので」
 それでというのだ。
「身体が弱くて小さい様なので」
「母猫はすぐに死ぬとですか」
「判断してです」 
 そしてというのだ。
「見捨てられたのかも知れません」
「ではここで私が見捨てたら」
「この子は死ぬしかありません」
 獣医はこの現実をあえて口にした。
「もう」
「では」
 そう言われてだ、エレンは。
 考えなかった、獣医に即座に答えた。
「私がこの子の母親になります」
「そうしてくれますか」
「ご家族はおられますか」
「両親もいます、そして子猫がもうです」
「お家におられますか」
「はい、何とか育てていきます」
「そうですか。では」
「この子は引き取ります」 
 獣医に答えてだった。
 エレンはその猫を家に連れて帰り事情を話した、すると両親は深刻な顔になってそのうえでこう言った。
「そうか、生まれてすぐか」
「まだ一日目なのね」
「じゃあ何かと大変だな」
「本当に何も知らなくて何も出来ないから」
「私も働きながらね」
 そうしつつとだ、エレンは両親に話した。
「この子育てていくわ」
「そうするんだな」
「あんたがそう言うならね」 
 両親は娘の言葉を受けて言った、そのほんの小さな子猫を見ながら。
「私達もこの子を育てるわ」
「うちに来たからにはな」
「命を見捨てることは悪いことだから」
「神様だって許さないさ」
「そうよね、だからね」
 絶対にとだ、エレンも答えてだった。
 その猫を育てはじめた、その猫は雌でエスメと名付けられ。
 ミルクやトイレを細かい時間でやっていった、生後間もないので本当に何も出来なかった。だがそれでもだった。 
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