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バレンタインドッグ

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第二章

「お話があるけれど」
「ワン?」
 ふわりはその声の方に行った、だが洋介も文太も今はふわりを見ていなくてバレンタインの話が済んで今度は好きなインスタントラーメンと酒の話をしていた。そしてバレンタイン当日。
 洋介は職場でバイトの娘達から義理チョコを貰い仕事が終わると彼女から本命のチョコを貰った。そうして本命をくれた彼女に笑顔で言った。
「今年も悪いな」
「いいのよ、ホワイトデーがああるし」
「お返しか」
「それがあるから」
 それでというのだ。
「楽しみにしておくし」
「悪くないか」
「ええ、じゃあホワイトデー宜しくね」
「このチョコの分はするからな」
「マシュマロ?」
「そこまでは言わないさ」
 彼女が菓子好きなのでそれで返そうとは思っていた、バイトの娘達には相手も義理なのでこちらも義理でスーパーでマシュマロやキャンディでも買ってと思っていた。
 それで彼女と帰宅するまでのデートを楽しんでから洋介は家に帰った。そして玄関を開けて家に入って只今と言ったところで。
「ワンワン」
「?」
 ふわりがいつも通り迎えに来た、だがそのふわりは。
 その口に何かを咥えて玄関のところでちょこんと座った、小さな尻尾が左右に振り振りと動いている。その咥えているものは。
 小さなビニール袋だった、そこに何か入っていた。洋介は思わずだった。
 そのビニールを見た、そしてふわりにそれは何だと聞くとふわりはそれを彼に向けて前に出してきた。受け取ってくれということだと察して受け取ってビニールの中を見ると。
「チョコだっただろ」
「ああ」
 洋介は夕食を食べながら今自分が座っているちゃぶ台のところでチョコを食ってワインを飲んでいる父に答えた。
「そうだったよ」
「俺もだ、家に帰ったらな」
「ふわりが出迎えに来てくれてか」
「そしてな」
 そのうえでとだ、父はチョコを食べつつ答えた、飲んでいるワインは赤ワインである。
「チョコくれたんだ」
「そうだったんだな」
「どうも母さんが買ってな」
 父はリビングでテレビを観ている彼女を見つつ息子に話した。
「ふわりに渡す様に言ったらしいな」
「俺達が帰ったらか」
「ふわりが頭がいいからな」
「それもかなりな」
「それでだよ」
「ふわりに俺達が帰ったらか」
「ビニールの中にチョコレートを入れてな」
 チョコレートは市販のものだった、包装されたままであった。
「それで俺達に渡す様にな」
「言ってたんだな」
「母さんが言うにはな」
「そうよ」 
 ソファーに座ってテレビを観ている母も言ってきた。
「ふわりも女の子でしょ、だからチョコをあげるべきだって思って」
「それでふわりに言って俺達に渡す様にしたんだな」
「そうよ、お母さんが買ったチョコをね」
 こう息子に話した。
「そうしたのよ」
「やっぱりそうか」
「ただ。犬にチョコレートは毒だから」
 カカオがである。
「包装したままでビニールに入れてね」
「ふわりが食わない様にしてか」
「ビニールの手に持つ場所を咥える様に言って」
 そうしたこともふわり自身に教えてというのだ。 
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