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歪んだ世界の中で

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第六話 明らかな変化その十四

「葉は何かな」
「アッサムのものです」
「あの場所の葉です」
「外から取り寄せたんだ」
 外国という意味での言葉だ。
「そうしたんだ」
「日本は日本のお茶だから」
 またここでだ。千春は希望に話してきた。彼女も希望と同じくロイヤルミルクティーを飲んでいる。
 それを飲みながらだ。千春は希望に話すのだった。
「紅茶はね」
「他の国から取り寄せたんだ」
「そうなの。実は前からね」
「前からって?」
「希望が来た時に備えてね」
 紅茶を用意したというのだ。その時に備えて。
「アッサムだけじゃないから」
「他の場所のお茶も」
「うん、葉を揃えてるよ」
 そうしているとだ。にこりと笑って話す千春だった。
「コーヒーのお豆もね」
「何か僕の為にそこまで」
「希望だからいいの」
 ここでもだった。こう答える千春だった。
「だから楽しんで。飲むのもね」
「有り難う。本当に」
「千春も希望に幸せにしてもらってるから」
「僕といて」
「そう。だから同じだから」
 それでだというのだ。
「千春も希望にね」
「幸せをくれるんだ」
「二人でお互いに幸せにし合おうね」
「そしてそれがなんだ」
「本当の幸せだから」
「幸せって本当に一人だけのものじゃないんだね」
 遠くを見てだ。それで言うことだった。
「二人で。そうなんだ」
「そうだよ。二人でね」
「段々わかってきたのかな」 
 希望自身がだ。そのことをだと。彼は言った。
「僕も」
「だからかな。今の希望ってね」
「僕は?」
「はじめて。会った時よりも」
 その時よりもだというのだ。
「明るい顔になってるよ」
「そうなんだ。最初の頃よりも」
「うん。だからもっとね」
「明るい顔になって」
「一緒にいようね」
「うん。じゃあ今はね」
 そのクレープを食べるのだった。クレープは確かに美味かった。小麦粉のそれとはまた違った独特の味と甘さがある。希望をそれを楽しみながら千春の家での時間を過ごすのだった。


第六話   完


                    2012・2・5 
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