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英雄伝説~灰の騎士の成り上がり~

作者:sorano
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第120話

2月12日―――――



連合によるルーレ占領から翌日、パティルナとの戦闘後意識を失ったシャロンはそのままカレイジャスに回収されて治療された事で翌日には目が覚め、再び紅き翼の協力者として復帰した。



~カレイジャス・ブリッジ~



「――――――皆様、今まで本当にご迷惑をおかけしました。アリサ・ラインフォルト様専属使用人、シャロン―――――今更ですが同行させていただきます。」

頭を深く下げたシャロンは頭を上げて紅き翼の面々を見回して宣言した。

「あはは……お帰りなさい、シャロンさん!」

「改めてよろしくお願いします。」

「ふふ、やっぱり貴女はその恰好が似合っているわね。」

シャロンの宣言を聞いたエリオットとエマは嬉しそうな表情で、アリサは口元に笑みを浮かべてシャロンに声をかけた。

「ええ、わたくしもそう思います。この服にまた袖を通す日が来るなんて思いもしませんでしたが………」

アリサの言葉に頷いたシャロンは苦笑した。



「怪我の方は大丈夫なんだろうか?」

「ふふ、エリオット様の回復アーツもそうですがエマ様達の治癒術のお陰で完治していますのでご心配なく。………ベアトリース様との戦闘によってしばらく戦線から離脱する事になった守護騎士(ドミニオン)であられるトマス様の代わりを務められる程でないのは申し訳ございませんが……」

ガイウスの心配に対して答えたシャロンは若干残念そうな表情を浮かべた。

「もう……誰も貴女を誰かの代わりとしてなんて見ていないのにそんなことを言わないでよ。」

「……しかし、トマス教官達の件は心配だね……」

「うん……二人とも傷は完治したらしいけど、トマス教官はロジーヌちゃんと違って意識はまだ戻っていないし……」

シャロンの言葉に対してアリサが指摘した後重々しい様子を纏って呟いたアンゼリカの言葉に頷いたトワは辛そうな表情を浮かべた。



「確かあんた達は以前もトマス教官とは別の守護騎士と行動していて、そいつがトマス教官みたいな状況になったみたいな話をしていたよな?その時はそいつはどのくらいで目覚めたんだ?」

「う、う~ん……あの時――――――”影の国”でケビンさんが倒れた時は時間の概念なんてない世界だったから、正確な日数や時間はわからないんだよね~。」

「ただ、それでも目覚めるまではかなりの期間を要した事は否めないな。」

「ああ……”第四星層”の最後に封印されていたエステルとアドルが解放された時のタイミングから、”第七星層”を攻略し終えて始祖さんを解放した直後だったからな……」

「まあ、安静にしていればその内目覚めるだろうから、そんなに心配する必要はないと思うわよ。」

クロウに訊ねられたアネラスは困った表情で答え、ミュラーとアガットは真剣な表情で当時の状況を思い返し、シェラザードは静かな表情で指摘した。



「そ、それにしても……ケビンさんと同じ守護騎士のトマスさんと従騎士のロジーヌさん相手に一人で戦って勝ったベアトリースさんという人はやっぱりあのファーミシルスさんと同じ種族の人だけあって、凄い強いみたいですね……」

「”凄い”ってレベルじゃないわよ。何せ”聖痕(スティグマ)”の力を解放し続けている守護騎士――――――それも、星杯騎士団のNo.Ⅱを従騎士付きで圧倒したのだから、空を自由自在に飛行できるというアドバンテージがあったとはいえ、それでも”化物”レベルよ。」

「そしてリィンはそのような凄まじい相手と戦って勝利し、その勝利によってベアトリースに”力”を認められて”家臣”に降らせたとの事だからな……黒の工房での件からわかってはいたが……今のリィンの実力は私達が知るリィンの実力を遥かに上回っているのだろうな。」

「ん。しかもベアトリースの他にも”新顔”の異種族達の協力まで取り付けているから、リィン達は更に戦力アップしているね。」

「ハッ……天使の癖に”研究者”を名乗ったイミフな天使と、天使の部隊を率いていた冷酷外道天使か。」

「も~!ただでさえリィン達側の戦力は豊富なのに、更に戦力アップするとか、リィン達ばっかりずるいよね~!特務支援課の人達にも異世界の異種族の人達がいるのに、ボク達にだけ異世界の異種族の人達が力を貸してくれないなんて不公平だよ~!」

不安そうな表情で呟いたティータの言葉に対してセリーヌは目を細めて指摘し、ラウラとフィーは真剣な表情で呟き、アッシュは厳しい表情を浮かべてレジーニアとルシエルを思い浮かべ、ミリアムは不満げな様子で声を上げた。

「ないものを強請るな。見苦しい。」

「エレボニアは戦争勃発前から”百日戦役”の件もあってか、メンフィル帝国との関係は旧カルバード共和国程ではないにしても、微妙な関係だった為国家間の関係がそんな状況だから異世界(ディル=リフィーナ)の異種族達がエレボニアを訪れると言った出来事すら去年の夏至祭を除けばなかったからね………」

「はい………それに僕達皇族もアリシア女王陛下やクローディア王太女殿下のように積極的にメンフィル帝国の皇族の方々との交流を深めていれば、今回の戦争の件を抜きにしても有事の際に異種族の方達もそうですがメンフィル帝国に所属している方々の協力を得られたかもしれませんね……」

不満を言うミリアムにユーシスが呆れた表情で指摘している中、疲れた表情で溜息を吐いたオリヴァルト皇子の言葉に頷いたセドリックは複雑そうな表情を浮かべた。



「ベアトリースさんは今まで判明しているリィンさんと”契約”している異種族の方達と比べると一際異彩を放っていますが、それもベアトリースさんの種族―――――”飛天魔”という種族独特の考え方によるものなのでしょうか……?」

「……言われてみればそうだな。メサイア達のリィンに対する接し方は様々だが、ベアトリースに関してはそのどれでもなく、リィンの事を仕えるべき”主”として敬い、自身は”リィンの家臣”として振舞っていたな。」

エマの疑問を聞いたラウラはベアトリースとのやり取りを思い返して同意した様子で呟いた。

「昨日の彼女との出会いの時にオリビエと少佐も説明したように”飛天魔”という種族は魔族の中でも相当な高位に当たる種族で、誇り高い種族であり『強き者に仕えることを信条としている種族』よ。単独戦闘は当然として、集団戦闘も得意とするまさに”戦闘のエキスパートの種族”と言っても過言ではないわ。」

「集団戦闘も得意としているってことは、まさか”指揮官”としても優れているって事なのかしら?」

シェラザードの説明を聞いてある部分が気になったサラは確認し

「まあな。とはいっても俺達が知っている”飛天魔”って言ったら大将軍さんだけだから、比較のしようがねぇがな。」

「ちなみにエヴリーヌちゃんが当時メンフィルの敵だった頃はファーミシルス大将軍閣下の指揮によって、その場にリウイ陛下達がかけつけてくるまで”時間稼ぎ”がした事があるような話も聞いた事があるよ。」

「ええっ!?」

「闇夜の眷属の中でも”最強”を誇るという”魔神”を相手にしても兵を指揮して”時間稼ぎ”ができるのだから、相当な使い手かつ指揮官だな……」

「その話はあくまで”空の覇者”自身の話でベアトリースの話ではないが………今までの話を整理すると”空の覇者”程ではないにしても、個人の武だけでなく指揮官としての能力にも優れ、更に忠誠心も篤い”家臣”をリィンは手に入れたということは確実だろうな。」

「ん……それとルシエルとかいう天使も、ユリーシャ達みたいにリィンに仕えている訳じゃないけどリィンに部下共々助けられた事でリィンに強い恩義を感じているようだから、部下の天使達共々リィンに対する信頼や敬意も高そうだったよね。」

「というか”魔弓将”が”メンフィルの敵”だった話や、その敵だった”魔弓将”が何でメンフィルの味方になったかの話も気になるよね~。」

「あのな……今気にすべき所は”そこ”じゃないだろう?」

アガットとアネラスの話を聞いたエリオットとガイウスは驚き、真剣な表情で呟いたユーシスとフィーの言葉に続くように呟いたミリアムの言葉を聞いたマキアスは呆れた表情を浮かべた。



「………正直こんな事は言いたくないけど、今回の件で判明したリィンに協力するようになった新たな連中――――――ベアトリース達の存在によって以前ヴァイスハイト皇帝が言った事―――――リィンが”時代が望んだ英雄”―――――つまり、”今のゼムリア大陸が望んだ英雄という名の怪物(かいぶつ)”である事が現実味を帯びてきたわね。」

「それってどういう事、セリーヌ……?」

複雑そうな表情で呟いたセリーヌの言葉を聞いたエマは不安そうな表情で訊ねた。

「アルスター襲撃の真相を探る件でクロスベルを訪れた時にヴァイスハイト皇帝は言っていたでしょう?『その時代が望む英雄となる人物には人を惹きつける力もある事』を。今回の件で判明したリィンの新たな協力者の連中のメンツの役割を考えてみなさいよ。」

「えっと……それってベアトリースとレジーニア、それにルシエル達の事よね?その人達は一体何の役割に当てはまるのかしら?」

セリーヌの指摘を聞いたアリサが不思議そうな表情で訊ねたその時察しがついたミュラーが答えた。

「……一人で守護騎士と従騎士を破り、あのリウイ陛下の右腕を務められるファーミシルス大将軍閣下と同じ種族―――――”飛天魔”であるベアトリースは”戦場”で”武”を振るう事で味方には畏怖を、敵には恐怖を与えて主に勝利を捧げ、また主が戦場を任せる事ができる”勇将”。ルシエルはその”智”を振るう事で自軍の”頭脳”を担当し、軍を指揮する主や”将”達の戦略指揮を助け、時には暗躍を行う事で敵を陥れて味方を更に有利な状況へと導く”智将”。そしてレジーニアは飽くなき探求心で様々な”発見”や”研究”をすることで技術方面で主を支える”研究者”と言った所か。」

「私達の知っている人物で例えるならば”勇将”は”光の剣匠”と呼ばれている子爵閣下や”黄金の羅刹”と呼ばれているオーレリア将軍と言ったまさに”化物”レベルの使い手かつ軍人を含めた”戦場”で”武”を振るう者達から尊敬されている人達の事で、”智将”は”百日戦役”の際その”智”を振るう事で普通に考えれば絶望的な戦力差だったエレボニアの侵略をその智をもって撃退したカシウスさん、そして”研究者”はシュミット博士やラッセル博士が当てはまるだろうね。」

「それらの件を考えると今のリィン様にはリィン様個人に協力する”智勇”の”将”が揃い、そこに加えて技術方面を専門分野とする方がいらっしゃるという事ですわね……」

「まさにかつての”獅子心帝”――――――僅かな数のノルドの戦士達とロランと共にノルドを旅立ち、旅の間”槍の聖女”やロゼさんと出会ってロゼさん達の協力を取り付けたドライケルス大帝のようだな、今のリィンは………」

ミュラーとオリヴァルト皇子の話を聞いたシャロンは複雑そうな表情で、ガイウスは重々しい様子を纏って呟いた。



「チッ…………まるで”灰色の騎士”サマを中心に世界が回っているようにみえて、気に入らねぇぜ。」

「まあ、今のリィンがそうなった原因も並行世界の零の御子が一番の原因だと思うけどね。」

「そうだよね~。何で並行世界の零の御子はリィンばっかり贔屓にしているんだよ~!」

「全くだぜ……しかも元々リア充野郎だった癖にそれが更に強化された上、ハーレムメンバーと既にうらやまけしからん関係になっているとかリィンだけズルすぎだろ!?」

「いや、”本来の歴史”の事を考えるとミリアムとクロウだけは並行世界の零の御子に文句を言う筋合いはないだろ。」

「”本来の歴史”だと、ミリアムとクロウもリィン同様最後はかなりの高確率で犠牲になるって話だもんね……」

舌打ちをして不愉快そうな表情を浮かべたアッシュの言葉に同意したフィーはジト目になり、不満げな表情で呟いたミリアムと悔しそうな表情で呟いたクロウの言葉に対してマキアスは呆れた表情で指摘し、エリオットは複雑そうな表情で呟いた。



「それはともかく……ベアトリースもそうだけど、あのルシエルとかいう天使はベアトリース以上に相当に厄介な相手ね……」

「”策”を練る事もそうだが用兵術も兄上に引けを取らない上、奴自身の戦闘能力も高いからな。」

「うん…………それにルシエルさんに従っている天使族の人達の連携力も相当なものだったよね……」

真剣な表情で呟いたサラの言葉に頷いたユーシスは話を続け、トワは不安そうな表情で呟いた。

「戦闘能力が秀でている相手よりも、ああ言った手合いの方がやりにくいから、敵に回せば厄介過ぎる相手なのよね……」

「ああ。気づけば俺達が奴等の掌の上で踊っていた……なんて事になりかねないからな。3年前のクソガキによる”お茶会”の時のようにな。」

「あ、あはは………そ、それよりもわたしはレジーニアさんっていう天使さんが気になっています。その天使さんは”研究者”を名乗ったとの事ですから、どんな”研究”をしているのとか技術者の一人として話をしてみたいですし。」

「ふふ、ティータちゃんらしいね。」

疲れた表情で呟いたシェラザードの言葉に続くように目を細めて呟いたアガットの言葉にティータは苦笑し、ティータが気になっている人物やその理由を知ったアネラスは微笑ましそうにティータを見つめた。



「つーか、あのシスコンリア充剣士の事だから、ルシエルとかいう天使もそうだがそのルシエルの部下の天使達は”契約”はしていないようだが、最終的に全員落として”契約”するんじゃねぇか?」

「”契約方法”は今までの事を考えると当然”性魔術”とやらだろうね。くっ……!リアル天使の仔猫ちゃん達とのハーレムを築いた挙句酒池肉林を現実にする可能性があるなんて、羨ましすぎるじゃないか……!」

「クロウ君とアンちゃんも今気にすべき所はそこじゃないよ………」

「クスクス、ですがリィン様なら実際にありえるかもしれませんから、冗談になっていませんわね♪―――――お嬢様もエリゼ様達のようにもっと積極的になりませんと、エリゼ様達どころか後に現れるかもしれないリィン様を慕う新たな女性の方々にまで遅れを取りますわよ♪」

「余計なお世話よ!!…………………」

ジト目になった後悔しそうな表情を浮かべたクロウと羨ましそうな表情を浮かべたアンゼリカの発言にその場にいる全員が冷や汗をかいて表情を引き攣らせている中トワは呆れ、シャロンにからかわれたアリサは顔を真っ赤にして声を上げた後すぐに複雑そうな表情を浮かべて黙り込んだ。



「え、えっと……どうしたんですか、アリサさん?急に黙り込んじゃって……」

「あ……うん……エリゼさんで思い出したんだけど、私達がパティルナ将軍の相手をしている間に他のみんながログナー侯爵邸でエリゼ達と対峙した時に知ったエリゼの気持ち―――――エリゼさんが私達の事を内心よく思っていなくて、2度とリィン達と関わらせたくないような話を思い出しちゃって……」

「あ…………」

「…………オレ達や殿下達に対してよく思っていない様子のエリゼは本当にヒューゴのように”呪い”の影響は受けていなかったのか?」

ティータの疑問に対して悲しそうな表情で答えたアリサの話を聞いたエリオットは辛そうな表情を浮かべ、ガイウスは複雑そうな表情でエマ達に訊ねた。

「ああ………ラクウェルで会ったヒューゴとかいう野郎もそうだが、ブラッドやミゲル――――――”呪い”の影響を受けている連中は必ず足元から黒い瘴気みたいなものが現れた事に対して、シュバルツァーのメイドの方の妹は終始そんなものは現れなかったからな。」

「そもそも”七大罪”の魔王の一柱、神々の中でも上位にあたる”オリンポス”の星女神の一柱、おまけに中位の”能天使”二人分の加護があるリィンと”性魔術”をしている事でリィン程ではないにしても、それらの”加護”がエリゼにも付与されているでしょうから、そんな状況で”呪い”の影響を受ける方が不思議なくらいよ。」

「そっか…………ヴァリマールを徴収した時すらもⅦ組(僕達)自身に対しては敵愾心は見せていなかったけど、本当は心の中では僕達の事を嫌っていたなんてショックだよね……」

アッシュとセリーヌの話を聞いたエリオットは辛そうな表情で呟いた。



「……お前達が気に病む必要はねぇよ。エリゼがそうなるようになった一番の原因は元をただせば俺がギリアスを殺る為に引いた引金によって起こった内戦や内戦勃発前の帝国解放戦線による暗躍なんだから、エリゼ関連は全部俺のせいにしとけ。」

「クロウ君………」

「そうそう。後はエリゼ君も言っていたようにリィン君とセレーネ君の担当教官だったのに、二人の未来の為にも内戦勃発前に二人に一旦帰国した方がいいような助言をしなかったサラ教官の責任にでもしておけばいいさ♪」

「ぐっ……そこでこれ見よがしに躊躇いなくあたしまで槍玉に挙げるなんて、それが教え子のする事なの!?」

静かな表情を浮かべた後苦笑しながら答えたクロウの言葉を聞いたトワが心配そうな表情でクロウを見つめている中クロウに続くように軽い調子で答えたアンゼリカの発言にその場にいる全員が冷や汗をかいて表情を引き攣らせている中サラは唸り声を上げた後ジト目でアンゼリカを睨んだ。

「……なんにしても、エリゼの我らに対して抱いている悪印象もそうだが殿下達や帝国貴族に対する悪印象を変えなければならないな。――――――エリゼの兄であるリィンの仲間として。」

「ああ……それが今までリィンに負担や迷惑をかけてしまった俺達の役割でもあるからな。」

静かな表情で呟いたラウラの意見に頷いたユーシスは真剣な表情を浮かべた。



「……アンタ達には悪いけどエリゼの件に関してはアタシは放置した方がいいと思うわよ。」

するとその時セリーヌがアリサ達にとって驚愕の意見を口にした――――――

 
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