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歪んだ世界の中で

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第六話 明らかな変化その五

「夏のはじめにだけれど」
「希望この山に来てたよね」
「あれっ、知ってたんだ」
「お友達と一緒だったよね」
 希望の隣にいてだ。千春は笑顔で話すのだった。
「あの人が希望がいつも言ってる」
「うん、そうだよ」
 千春が何故その時のことを知っているのか。そのことはだ。
 希望にとってはあらたな謎だった。しかしだ。
 それでもだ。千春は希望に考える時間を与えない様にだ。さらに言ってきたのだった。
「その。友井って人?」
「そうだよ、友井真人君っていうんだ」
 彼のことはだ。何時でも素直に笑顔で話したのだった。
 そしてだ。彼は千春に彼のことをだ。さらに話したのだった。
「とてもいい人だよ」
「そうよね、あの人だったのね」
「そうだよ。僕にとって。何度もお話したけれど」
 それでもだとだ。希望は話していく。
「無二の親友なんだ」
「あの人なら。希望もね」
「僕も?」
「大切にしてくれるよね」
「そうだよ。いつも僕を支えてくれている人だから」
「そして希望もね」
 彼と共に進みながらだ。話す千春だった。
「あの人を支えてるのよね」
「そのこと。千春ちゃんよく言うよね」
「お話を聞いて思ったけれど」
 既にだ。そのことは感じ取っていたのだ。
 だがそのだ。夏のはじまりのことをだ。千春は彼女の中で思い出してだ。
 そのうえでだ。希望に話したのだった。
「あの人なのね。あの人もね」
「僕が支えてるんだ」
「あの人も。多分だけれど」
 彼女が見た真人のことをだ。千春は話していくのだった。
「希望のことをとても大切に思ってくれて。希望が支えてるのよ」
「僕達はお互いに」
「千春、その人に凄く感謝するよ」
「友井君に?」
「うん。希望を大切にしてくれて支えてくれてるから」
 だからだというのだ。これが千春の今の言葉だった。
「とても感謝するよ」
「友井君もそう言ってもらえると嬉しいよ」
 そしてだ。希望もだった。
「僕も。友井君のことをそう言ってもらえて嬉しいしね」
「御友達がよく言われたらね」
「そう。それでね」
「それでなの」
「本当に有り難う」
 自然とだ。微笑んで言う希望だった。
「それじゃあ今からね」
「山の頂上までね」
「一旦登ってそうして」
「千春の家に来て」
 丁度木々が切れた。それでだ。
 千春は真上から日差しを浴びた。その日差しの輝きを受けて。
 その長い黒髪も白い服もきらきらと輝く。その満面の笑みも。
 そしてその輝く笑みでだ。千春は言ったのだった。
「それで一杯美味しいもの食べよう」
「うん。そうしていいんだね」
「そうしてくれたら千春も嬉しいから」
 彼女もだ。そうだというのだ。
「だから二人でね」
「うん。それじゃあ」
 希望も笑顔で頷く。そしてだ。
 二人は途中だ。ある場所に来た。そこはだ。
 木々のある場所だった。そこに来てだ。
 希望はそこにある一本の木を見てだ。こんなことを言ったのだった。
「あれっ、この木は」
「どうしたの?」
「何処かで見たかな」
 こうだ。その木を見ながら言ったのである。 
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