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毛の色は違っても

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第二章

「どう見てもスミレよね」
「そうだよな」
「あの娘はね」
「スミレが生まれ変わって」
 その猫を見たまま話した。
「うちに来てくれたのかしら」
「若しそうだったら飼うか」
 父は即断した。
「そうするか」
「そうね、またうちに来てくれたのならね」
 母も父と同じ考えだった。
「それじゃあね」
「そうしよう」
「ええ、スミレなの?」
 裕子は立ち上がり窓を開けて猫に尋ねた。
「ひょっとして」
「ニャア」
 そうだと聞こえた、それでだった。
 一家でその猫を家に入れてスミレと名付けて飼いはじめた、スミレは雌で性別の前の猫と同じだった。
 一家はスミレが生まれ変わったと確信して一緒に暮らした、すると。
 裕子は自然と家でリラックスしてだった、癒されもした。スミレと一緒にいるだけでそうなったのだ。
 すると仕事でもだ。
 前より楽になったと感じた、それで会社で上司にも言われた。
「神谷さん慣れてきたかな」
「そうでしょうか」
 裕子の返事は自覚のないものだった。
「そうだといいですが、ただ」
「ただ?」
「うちに猫が来まして」
 前の猫の生まれ変わりと確信していることはまさかと言われるのではと思ってそれで言いはしなかった。
「それで、です」
「ああ、癒されてだね」
「はい」
「それは大きいよ」
「大きいですか」
「うん、やっぱり家に帰ってほっとして」
 そしてというのだ。
「卑しくてくれる相手がいたらね、家に帰っても楽しいね」
「はい、そうなります」
「だからね」
「家に猫がいるだけで」
「本当に違うから」
 だからだというのだ。
「神谷さんのところに猫がいるなら」
「それならですか」
「その分ね」
「私にとっていいですか」
「そう思うよ、神谷さん真面目にしてくれて仕事も出来てるし」
「出来てますか?」
「確かに新人だけれど」
 それでもというのだ。
「凄く頑張ってくれてね」
「それで、ですか」
「出来てることは事実だしこのまま頑張ってね」
「わかりました」 
 上司ににこりと笑って答えた、その言葉にも助けられて。
 裕子は仕事を頑張った、そうしているうちに慣れてきて楽になった。それで家に帰って母にも笑顔で話せた。 
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