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レーヴァティン

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第百八十九話 流れは次第にその六

「その咎で」
「罪に問いますね」
「あと脅迫もあるな、兎に角連中は罪に問わないとな」
「ならないですね」
「適用される法律がないなら裁けないさ」
 久志は言い切った。
「法にないことを政府がしたらな」
「もう法の意味はない」
「だからな」
 それを行えば無法国家になる、政府がそれをしては最早本末転倒もいいところであるというのである。
「しないさ」
「そして彼等は帝国の法にはですね」
「触れてるからな、けれどな」
「彼等は北の王国の者だったので」
「他国の人間を自国に入ったからってな」
「それまでのことで裁けるか」
「そこがな」
 どうにもというのだ。
「微妙だな」
「事後立法ですね」
「それになるか?」
 久志はこの危惧も口にした。
「若しかして」
「かなり怪しいですね」
「そうなる可能性高いよな」
「ニュルンベルグ裁判や極東軍事裁判の様な」
 どちらも法学的に問題視されたのは事後立法だったからだ、人道に関する罪も平和に関する罪も大戦後成立していてナチスの行為はそれ以前のものだった。極東軍事裁判に至っては通常の戦争犯罪をその罪で裁いたのであるから余計におかしいと言われている。
「そうしたものに」
「じゃあな」
「はい、そこはですね」
「審議してな、ただ戦が終わってもな」
「それでもですね」
「連中が罪に問えないならな」
 それならというのだ。
「それでいいけれどな」
「それでもですね」
「やっぱり北の大国の民は連中を許せないだろ」
 久志は今度は感情の話をした。
「例え法律的には罪人じゃなくてもな」
「帝国としては」
「その問題があるからな」
「どうにかしなければいけないことは事実です」
「そうなるとな」
 どうかとだ、久志は考える顔で言った。
「開拓民という形でな」
「全員辺境に送り」
「そこで開拓をしらもらうか」
「そうしてもらいますか」
「オプリーチニクは全員な」
「そうしてですね」
「ああ、もうな」
 それこそというのだ。
「ことを収めるか」
「そうしますか」
「それがいいか、ただその開拓地はな」
「過酷な場所でいいわね」  
 双葉は冷めた目で言った。
「そうした場所で」
「寒くて痩せた土地でな」
「モンスターも多い」
「そうしたとんでもないところに送り込んで」
 そうしてというのだ。
「後はな」
「どうなってもいい」
「そのやり方でいくか」
「何があってもや」
「自己責任か」
「荒れた土地でな」 
 まさにそこでというのだ。 
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