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戦国異伝供書

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第百二十二話 大友家動くその四

「それはどうじゃ」
「そう言われますと」
「用意を整えるのも戦です」
「それ次第で戦は大きく変わります」
「そこまで考えるとですな」
「戦は戦の場でのみするものではないですな」
「そうじゃ」
 まさにというのだ。
「だからな」
「ここは、ですな」
「動かぬことですな」
「これも戦だからこそ」
「動いてはなりませぬな」
「左様、動かずじゃ」
 そしてというのだ。
「そのうえでな」
「あえてですな」
「待っていて」
「そしてですな」
「殿が出陣と言われれば」
「その時に動く、風の様にな」
 速くというのだ。
「耳川の方まで行ってな」
「そしてですな」
「林の様に静かにそこにいて」
「そして攻めるとなれば」
「火の様にですな」
「我等は武田家ではないが」
 それでもというのだ。
「しかしじゃ」
「この言葉は正しいですな」
「武田殿が旗に書かれたのは正しいですな」
「その通りに戦うべきですな」
「まさに」
「そうじゃ、もう我等は戦っておる」
 干戈は交えていないがというのだ。
「それならばじゃ、よいな」
「今は待ちます」
「そうします」
「そしてです」
「戦っていきまする」
「ではな、待つ間も武芸に励み」
 そうして身体を鍛えてというのだ。
「飯をたんと食うのじゃ」
「その様にします」
「今は」
「そして時を待ちます」
「そうするのじゃ」
 義久は家臣達に動くなと話した、そしてだった。
 その話が終わってから今度は弟達を集めて話した、その話は大友家だけでなく龍造寺家のこともだった。
 両家の話をしてだった、義久は言った。
「大友家に勝ってもな」
「龍造寺家とも戦うやも知れぬ」
「あの家の考え次第では」
「そうもなりますか」
「うむ、大友家は必ず破るが」
 それでもというのだ。
「しかしな」
「それでもですな」
「大友家が敗れると龍造寺家が出て来る」
「大友家という敵が弱まって」
「龍造寺家は野心が強い」
 この家はというのだ。
「だからな」
「目の上のたん瘤である大友家が弱まれば」
「それで楽になってですな」
「力を伸ばしてきますな」
「そうなることは間違いない、そしてな」
 大友家が力を大きくすればというのだ。
「その時はな」
「肥前に力を大きく伸ばし」
「筑後、肥後と来て」
「やがては」
「薩摩にも迫るやも知れぬ」
 島津家が治める三国の中でも本国と言っていいこの国にというのだ。 
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