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名前とは反対の犬

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第一章

               名前とは反対の犬
 黒川ちえみ、茶色で長めの髪の毛で細い眉を持ち大きなはっきりとした目で背は一六三位で整ったスタイルの彼女は夫の義男、黒髪を短くし小さくてしっかりした目を持ち背は一七七あり引き締まった身体を持つ彼スポーツ用品店の店長をしている彼が三十三歳になった時に言われた。この時ちえみは三十歳だった。
「犬飼いたいな」
「犬?」
「ああ、家族にしたいな」
 こう言われた。
「お前も俺も犬好きだろ」
「だからなのね」
「ああ、犬が家にいたらな」 
 それならとだ、夫は妻にさらに話した。
「それだけ賑やかになるし番犬にもなるしな」
「だからなのね」
「それに毎日散歩にも行ってな」
 このこともあってというのだ。
「運動にもなるだろ」
「そのこともあるから」
「そうしないか?」
「そうね、丁度お向かいの前田さんがもうお歳でワンちゃん飼えなくなったって言ってるから」
 ちえみは夫にこのことから話した。
「あの子引き取りましょう」
「ああ、秀吉か」
 夫は妻の言葉に応えた、その犬は彼も知っていた。飼い主のお婆さんが言うには七歳になる茶色と白の雄の柴犬だ。
「あの子をか」
「引き取ってね」
「家族に迎えるか」
「そうしない?」
「いいな、そうした子は引き取ってもらえないとな」
「どうなるかわからないし」
「俺達が犬飼いたいって思ったらな」
 いい機会だからだとだ、夫も頷いた。
「あの子を迎えるか、家族に」
「それがいいでしょ」
「ああ、それじゃあな」
 二人で話してだ、そのうえで。
 次の日二人は仕事ちえみも働いている夫が店長をしているスポーツ用品店に行く前にまずはだった。
 前田さんのところに行った、それでその犬秀吉を引き取りたいと言うと。
 もうすっかり年老いている老婆は笑って頷いてから言った。
「じゃあこれからお願いね」
「はい、大事にさせてもらいます」
「ずっと一緒にいます」
 二人は老婆の返事に明るい顔で応えた。
「秀吉は私達が責任を以て面倒を見ますので」
「安心して下さい」
「そうしてね、この子は不思議な子でね」
 老婆はその犬、秀吉今は家の中に入れている彼を優しく撫でながら話した。
「この子を夫婦で散歩に連れて行ったら子宝が授かるんだよ」
「そうなんですか」
「子供をですか」
「私の孫夫婦は皆そうしてね」
 その秀吉を二人で散歩に連れて行ってというのだ。
「子供を授かってるから」
「なら私達も」
 結婚七年目だがまだ子供は出来ていない、実はちえみも夫も子供が出来ないことが悩みの種になっているのだ。
「若しかして」
「そうなるかもね、そうでなくても賢くて穏やかな子だから」
「家族としてですか」
「凄くいい筈だよ」
「そうですか、じゃあ秀吉これから宜しくね」
「ワンッ」
 秀吉は明るい声で応えた、その後で譲渡書等を交えさせてだった。 
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