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可愛い犬を見て

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第二章

「最低な人達ね」
「ふわりちゃん捨てたわよね」
「ええ、赤ちゃん出来たらね」
「その前からお散歩行かなくなって」
「ワンちゃんにお散歩は絶対よ」
「毎日行かないとね」
「それでも行かなくなってね」
 子供が出来たらというのだ。
「赤ちゃん生まれそうになったら」
「ご主人が行けばよかったのに」
「お母さんもそう思うけれどね、そして赤ちゃんが生まれたらね」
「一日中ケージに入れてよね」
「見向きしなくなって挙句は鳴き声が五月蠅いって言ってよ」
「保健所に捨てたのよね」
「幸いお話を聞いた親戚の人が引き取ってくれたけれど」
 それでもというのだ。
「もういらないって言ってね」
「娘だとか言って可愛がっていたのに」
「性格が変わって朝から晩まで鳴くとかね」
「ワンちゃんは鳴くでしょ」
「けれどそう言ってだったのよ」
「性格変わったって赤ちゃん生まれたら無視したのよね」
「ずっとね」
 そうしたというのだ。
「一日中ケージに入れて」
「ワンちゃん何と思ってるのかしら」
「おもちゃと思っていたのかもね、実は」 
 口では娘と言いながらだ。
「それで捨ててね」
「どうでもいいなのね」
「いいわね、あの人達の相手したら駄目よ」
 喜久子は娘に強い声で言った。
「絶対に」
「わかってるわ、もう挨拶とかしてないから」
「ご近所でもそうした話になってるから」
「犬好きの人達の間でよね」
「猫ちゃんを好きな人達の間でもね」
「生きものを大事にしない人達だから」
「そうなってるのよ、あんな人達はもうどうなっても知らないわ」
 喜久子は怒った顔で言った、だがその怒った顔はすぐにだった。
 ハナを見ると収まってだ、そうして。
 ハナのご飯を用意するとハナは由利香にご飯よと言われた。
「ハナ、お母さんがご飯入れてくれたわよ」
「ワンワン」 
 ハナはその言葉に起き上がってだ、ご飯のところに行った。そうしてそのご飯それにミルクを心から楽しんだ。
 一家はハナと楽しい日常を過ごした、その中で。
 ふとだ、由利香はハナの散歩中に近所の女の子の宮城愛衣がトイプードル、色は白だがそれ以外はハナそっくりの娘を散歩しているのを見た。それで彼女に声をかけた。
「愛衣ちゃんもワンちゃん飼ったの」
「そうなの」
 小学四年生の彼女は笑顔で応えた、細い垂れ目で穏やかな感じの顔である。黒髪は長く奇麗でまるで日本人形の様な外見だ。
「お父さんとお母さんがハナちゃん見てね」
「この娘をなのね」
「うちもワンちゃん飼おうってお話になって」
 それでというのだ。
「貰ったの」
「買ったんじゃないの」
「うん、ご近所で赤ちゃんが生まれて」
 トイプードルのというのだ。
「そのうちの一匹を貰ったの」
「そうだったのね」
「それで今うちにいるの、私の妹だってね」
 愛衣は笑顔で話した。
「お父さんとお母さん言ってるよ」
「妹っていうと女の子ね」
「そうなの、ムックっていうの」
「ムックなの」
「何かドラマに出てるワンちゃんの名前らしいの」
 愛衣は由利香にこのことも話した。
「凄くいい娘なの」
「そうなのね、よかったわね」
「よかったって?」
「愛衣ちゃんに妹が出来て」
 そしてとだ、由利香は愛衣にまずはこう話した。 
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